第6話  母さんがプロポーズされた!?

 家に帰ると母さんが帰って来ていた。

 大学2年生で俺を身籠り、親父の卒業を待って結婚。その1年後には、未亡人になった母さんは、実家の家業の定食屋を手伝っていた。

 俺も10歳になるまでは、じいちゃんやばあちゃんと暮らしていたんだ。


 母さんが、調理師免許を取得したのをきっかけに、大きな会社の社員食堂に就職することになったんだ。


 それからは、母さんと2人で、会社近くの最寄り駅付近のアパートに住んでいる母さん……新庄 うらら←母親からして名前が変!! 

 36歳!! もうおばさんだけど……会社の人からはたまにデートに誘われてるらしいな……


「ピカチュウ、遅かったのね。今日は、昨日、録画した【怪物の幻夢】の最新話を見るのに早く帰って来るかと思ってたのに?」


「ちょっとね、ネコを拾っちゃって……ナハハ……」


 俺は笑って誤魔化したけど、母さんは許してくれなかった。


「何を言ってるの!!? ここはペット不可のアパートなのよ」


「10日だけ置いても良いって、おばあちゃんの許可はもらってるよ。他の住人さんにも説明したよ」


「何故、私が一番最後なのかしら……?」


「それは……ごめん」


 俺は、素直の謝った。


「10日だけなのね?」


 母さんが、仕方ないという感じで、微笑みながら頷く。こういう場合はOKのサインだ。


「やった~~!! 虎太郎!! 俺の部屋に行こうぜ!!」


「ピカチュウ、話があるの。子ネコを部屋に置いてきたら、リビングに来てね」


 何時にない母さんの真剣な声に、俺は先ほどまでの浮かれ気分が吹っ飛んだ。


「どうしたんだよ。母さん」


「あのね、この地方にARグループの支社があるのは知ってるでしょう?」


「母さんの勤めてる大きなビルでしょう?」


 ARグループは、日本有数の企業だ。確か関東の方の大地主で、3代にわたる経営陣が優秀で、伸びてきた会社だ。

 近頃は、テーマパークの経営にも手を出しているっていう噂だ。


「1カ月前に本社の社長さんが、視察にみえたの。その時に、普段の会社の雰囲気が見たいって言われた社長の意向で、社長の視察は極秘にされたの。……で、恰幅の良いおじさんが社食に来て、豚カツ食べたいなんて言うから、怒って説教してやったの……後で聞いたら、本社の社長さんだったの」


「何やってるんだよ、母さん」


「うん、それでね、ピカチュウ。今度あなたにも会いたいそうなのよ」 

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