第25話 美少女が苦しむ姿を見たくない

 美羽子さんは壇上で全てを話してくれた。

 好きな女の子がいること。

 その好きな人も女の子を好きかもしれないと気づいたこと。

 別の女の子に取られたくないと思ってしまったから校則を一つ追加してしまったこと。

 その自分で作った校則に自分自身が苦しんでしまっていること。


「私の言っていることめちゃくちゃだってこと、自分でも分かっています。そして自分がどんなに傲慢な女であるかも分かっているつもりです」


 それでも打ち明けた。

 打ち明けている最中、美羽子さんはずっと私の顔を見続けていた。

 羞恥で顔を赤く染めながら、彼女は一生懸命想いを打ち明けてくれた。


「(伝わったよ……美羽……たん)」


 彼女の想いは十分すぎるくらい伝わった。

 伝わったというのに、彼女は更に強く伝える手段を取ってきた。


「私の好きな人は……花野井千聖さん……です!」


「「「「「えっ!!??」」」」」


 会場のざわめきが更に大きくなる。

 驚きの声を上げてしまったのは私も一緒だった。


「花野井千聖さんと付き合いたいです」


 美羽子さんは止まらない。

 暴走ではない。これは情熱だ。

 私はこれほど情熱的な告白を受けたのは初めてだった。


「その為には私自身が作った校則が邪魔です。だから——」


「二見キラリさんに投票を入れてください! 自分勝手なことは知っています。身勝手に皆様を振り回してしまっていることも分かっています! でも! 好きなの!! 私が花ちゃんと付き合う為にキラリちゃんに投票を入れてください! お願いします! お願いします!!」


 それは本当に自分勝手な願いだった。

 自分が好きな人と結ばれたいから信任してくれなど虫が良いにもほどがある。

 現に、周囲から美羽子さんを否定する声が私の耳に入ってきていた。



 『いや、さすがに、ねぇ?』

 『自分で同性恋愛禁止の校則を作っておいて、自分が同性と付き合いたくなったから投票しろってことでしょ?』

 『俺らがそんなことしてやる義理ねーだろ』

 『大体、女が女を好きになるって、ちょっと気持ち悪くね?』

 『不信任かなー。さすがに推薦人が不誠実過ぎる』



 言葉の暴力が美羽子さんを責める。

 だけど美羽子さんは顔色を悪くさせながらも毅然とその場に立ち続けている。

 全ての批判を受け入れようと、足を震わせながら喧騒に耳を傾けている。




 ——いやだ。



 ——美羽子さんが批判される姿をこれ以上見たくない。



 ——彼女に辛そうな顔をさせたくない。



 ——彼女はもう十分苦しんだ。



 ——だから



 ——私が美羽たんを報われさせる




「私の美羽たんを……これ以上いじめるなああああああああああああああ!!」

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