【16】力試し
「……さて、どこまで通用するかしら?」
朧はダンジョンの入口に立ち、軽く肩を回す。狐耳が風に揺れ、尻尾がしなやかにたなびいた。新生によって生まれ変わった肉体。その能力を確認するため、朧は再びダンジョンへと足を踏み入れた。
《現在レベル:1》
《アクティブスキル:龍の息、魔力操作》
《パッシブスキル:吸血、貪食者》
《種族スキル:寄生》
レベルはリセットされてしまったが、『貪食者』の効果でパラサイトワームから個体値引き継ぎは100%。全ステータスが最大限に引き継がれた完璧な状態だ。
(この体であれば、レベル1でも問題なく進めるわ。)
ダンジョンの内部は鬱蒼とした密林だった。湿った空気と植物の生い茂る匂い。葉の裏からは絶え間なく昆虫の羽音が響いている。
「相変わらず不快な場所ね……でも、試しにはちょうどいいわ。」
──そのとき、前方の茂みからざわりと葉が揺れる音がした。
《スティングビートル》──確か推奨レベル3。硬い外殻と鋭利な角を持つ昆虫型魔物。
「ふふっ、来たわね。」
朧は足を止めると、敵を観察した。硬質な外殻は物理攻撃を弾くが、関節部は比較的脆い。
(狙うは関節……それに、このスキルの回復効果も試しておきたいわね。)
朧は静かに構えた。体内を魔力が巡り、拳に淡い光が宿る。
「来なさい。」
スティングビートルが角を突き出して突進してくる。朧は紙一重でその攻撃を避け、カウンター気味に拳を突き出した。
ゴキッ!
拳が関節部分に命中すると、確かな手応えとともに敵の体がよろめく。直後、朧の体内に温かい感覚が走った。
(これが【吸血】……。)
攻撃によって与えたダメージ分のエネルギーが、体力として全身に循環していく。
「回復速度も問題ない……ならば。」
敵が体勢を立て直す前に、朧はもう一撃を加える。肘打ち、膝蹴り、回し蹴り。連続する攻撃がスティングビートルの装甲を粉砕し、ついにはその巨体を地に伏せさせた。
《レベルアップしました:レベル2》
「取り敢えずは問題は無さそうだし…順調ね。」
深く進むごとに、昆虫型の魔物たちが集団で現れるようになった。
《スウォームスパイダー》──推奨レベル5。糸を使って獲物を絡め取り、集団で仕留める戦法を得意とする。
樹上から複数の蜘蛛型魔物が糸を吐き出し、朧の動きを封じようとする。
「ふふっ、絡め取るつもり?」
だが、朧は微笑んだまま魔力を拳に集中させた。
「“魔力操作”。」
拳を覆う魔力の形を扇状に変え、一撃で蜘蛛たちの吐いた糸を吹き飛ばす。
バシュンッ!
魔力をまとった拳が蜘蛛の群れを一掃し、取り逃した攻撃も即座に【吸血】によって全回復した。
《レベルアップしました:レベル3》
《レベルアップしました:レベル4》
「これでレベル4……悪くないわ。」
10階層──格闘家への覚醒
ついに10階層へと到達した。密林の中でも特に視界の悪い場所で、朧を待ち構えていたのは大型の昆虫型魔物だった。
《ジャイアントホーネット》──推奨レベル10。強力な毒針と飛行能力を持つ密林の支配者。
敵の飛行速度は高く、一撃を受ければ毒の効果で命取りとなる。しかし、朧は一切の迷いを見せなかった。
「“龍の息”──発動。」
大きな狐の尻尾が変形してグポリと先端からさせけて口のように大きく開くと…
ゴオオオオオッ!!
吹き荒れる炎の奔流がジャイアントホーネットを直撃し、その動きを一瞬止めた。
「今──!」
魔力を纏った拳を放ち、敵の胸部を貫いた。
ドンッ!!
その瞬間、敵は爆音と共に地面へと叩きつけられ、動かなくなった。
《レベルアップしました:レベル10》
《クラス取得条件を満たしました:初級クラス【格闘家】を取得しますか?》
「やっと来たわね。」
画面に浮かぶ選択肢を迷わず選択。
《クラス取得完了:初級クラス【格闘家】》
《パッシブ職業スキル『格闘』を習得しました。》
《アクティブ種族スキル『吸収』を取得しました。》
全身に新たな力が満ちていく感覚があった。
「ふふ……これで、また一歩強くなったわけね。と言ってもやっと前提が揃ったからここからが本番なのだけど。」
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