第18話
翌朝、学園に登校すると、掲示板の前に多くの新入生が群がり、ざわめきが広がっていた。
どうやら入学試験の成績とクラス分けの発表が掲示されたようだ。
それぞれが自分の順位を確認し、喜ぶ者、落胆する者、安堵する者など、さまざまな反応を見せている。
(さて、俺の順位は……)
試験の手応えは悪くなかった。原作では10位だったが、今回はもっと上を狙えているはずだ。
期待を胸に、新入生たちをかき分けて掲示板の前へ進む。
そして、目に飛び込んできたのは——
「……なんだと。」
思わず、唾を飲み込んだ。
結果は1位と2位が原作通り、主人公のレオンとヒロイン。
そして俺の順位は——10位。
(……変わっていない?)
俺が原作と違う行動をしているにもかかわらず、試験結果は原作通り。
ただし、1つだけ違う点がある。
3位に帝国の皇女、アリシア・ローゼンベルクが食い込んでいることだ。
(……もしかして、皇女が上位に入った分、俺の順位が1つ下がっただけか?)
原作とは異なる変化が生じている以上、このままゲームの流れが続くとは限らない。
(これから先の行動次第で、未来は変わるはずだ。)
そんなことを考えていると、学園の先生が大きな声で新入生たちに呼びかけた。
「皆、自分のクラスを確認したら、それぞれの教室へ向かうように!」
それを聞いた生徒たちは、各々の教室へと移動していく。
俺も一度深呼吸をし、心を落ち着かせながら自分のクラスへと向かった。
ーーー
俺が教室にたどり着くと、すでに半数ほどの生徒が集まっていた。
中には早くもグループを作り談笑している者もいる。
そして——俺の姿を見た途端、何やらヒソヒソと話し始めた。
「クトーマ家って、あの悪徳貴族の……?」
「ああ、最近、領民から重税を取ってるって聞いたぞ。」
「国を裏切るつもりらしいって噂もあるしな……。」
(……やれやれ、相変わらず根拠のない噂ばかりだな。)
そう考えていると、教室の一角から金髪をなびかせた少年がこちらに歩み寄ってくる。
「君の領地では、重税を課して領民を苦しめていると聞いたが——それは本当のことかい?」
鋭い蒼眼を向けてきたのは、王子レオン・セイクリッド。
正義感が強く、清廉潔白な王子。
悪を許さず、信じた道を貫く生粋の "主人公" だ。
ここで俺は、あることを思い出していた。
——物語に登場する「悪役だけど本当はいいやつだったキャラ」には共通点がある。
それは"説明不足"であること。
ある者は人質を取られ、外部に情報を漏らすことができず。
またある者は「話しても理解されない」と悟り、何も言わずに行動する。
つまり、"悪役らしさ" を演じる上で大切なのは、「余計なことを語らない」ことだ。
何が言いたいかというと今この瞬間、ゲームの主人公兼王子であるレオンに詰められている状況であまり多くを語らず、俺が悪徳貴族であるという印象をもたせることが重要であるということだ。
「私たちの政策が、領民にとって苦痛かどうかなど……俺の知ったことではありませんよ、王子様。」
俺は薄く笑いながら、からかうように答えた。
「領民は貴族の宝であり、王国の宝でもある!」
「僕は、君たちの悪い行いを見逃すことはできない!」
レオンは真っ直ぐな目で俺を睨みつけ、力強く言い放つ。
「私たちは、王の名のもとに領土を治めるよう託されています。」
「王子であるあなたの命令に従う理由はありません。」
俺は冷静に、だが語気を強めながら返した。
教室の空気が一気に張り詰める。
生徒たちは息を呑み、このやりとりを固唾を飲んで見守っていた。
その時——
「そこまでだ! 喧嘩していないで、皆、席に着け!」
入学試験の時に見た体育会系の先生が、いつの間にか教壇に立ち、厳しい声で一喝した。
どうやら、この口論の間に生徒全員が揃ったようだ。
「コア、僕は君のような者を見過ごすつもりはない。」
レオンはそう忠告すると、自分の席へと戻っていった。
俺も "悪役ムーブ" をうまく演じきったことに安堵しながら、静かに席に着いた。
ーーー
「これから、このクラスの担任を務めるドレイク・バーニングだ。」
先生が名乗った瞬間——教室内が騒然となる。
「ドレイクって……あのSランク冒険者の!?」
「本物なのか!?」
生徒たちの間に、驚きと興奮が広がる。
「このクラスには、試験で上位30人が集まっているわけだが——安心するなよ。」
ドレイク先生は鋭い視線を向ける。
「成績次第では、容赦なく下のクラスに落とす。逆に、実力がある者は上のクラスへ引き上げる。」
その言葉に、クラスの空気が一気に引き締まる。
「今日は、これから学園生活を送るうえで必要となる知識を教える。しっかり聞いておけ!」
ーーー
授業が終わり、生徒たちはぞろぞろと帰宅し始める。
俺も席を立ち、帰ろうとしたその時——
「……ちょっと、お時間よろしいかしら?」
鈴の音のように澄んだ声が聞こえた。
振り返ると、そこには黒髪黒目の美少女が立っていた。
気品に満ちた佇まい、まるで吸い込まれるような瞳。
——その人物は、帝国の第三皇女 アリシア・ローゼンベルクだった。
「ぜひ、コア様とお話がしたくて。」
微笑みを浮かべた彼女が、優雅に手を差し出す。
「この後、お茶でもいかが?」
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