ありえない提案
いつものように学校でイタミの個別授業を受けていると、珍しくイタミが授業以外の話題を口にした。
「川崎君、明日の放課後の予定は開いていますか?」
「放課後ですか?」
学は思わず聞き返した。教育とスポーツ以外でメナ星人が一般人に干渉してくることはほとんど無い。今回のような質問をされること自体かなり珍しいことだった。
「予定というわけではないんですが、弟の夕飯を作らないといけなくて」学は少し警戒しながら返事をする。
「ああ、光くんですね。」高校までの全学生はイタミの教え子だ、兄弟の状況などは太陽の位置よりも把握しているだろう。
「よろしければ、明日は私が光くんの面倒を見ましょう。食事も用意しますよ」
痛みは驚いてイタミを見る。これまで、イタミが授業外で関わってくるという話は一度も聞いたことが無かった。
「ああ、安心してください。日本だとあまり無いんですが、アフリカなんかだと、教育の一環で私が食事を用意することもあります。そうでもしないと授業に支障が出るのでね。ちゃんと栄養バランスを整えた物を作りますよ」
学の怪訝な表情が伝わったのかイタミは言葉を続けた。別に食事内容の心配では無かったが、どうやら本気でイタミが光の食事を用意するつもりのようだ。しかし、なぜイタミがそこまでするのかがわからない。
「それはありがたいんですが、先生がそんなことまでしてくれるなんて、その、珍しいですよね」
学が言うと、イタミの表情を表す液晶が笑顔になった。
「そうですね、実は学君にやって欲しいことがあるのです」
「やってほしいこと?」
「ああ、そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。もちろんイヤなら断ってもらっても大丈夫です。地球人を含め保護惑星の生命は人格権が認められています。嫌がることをする必要はありません」
保護惑星という言い方が、メナ星人と地球人の圧倒的な立場の差を示しているようで、学は苦笑いをする。
「明日、あるメナ星人に会って欲しいのです。詳しいことは、そのメナ星人がまた話してくれるでしょう」
学は訳がわからなかったが、メナ星人のお願いを断れるはずがない。「わかりました」学はそう答えるしかなかった。イタミは大きく頷く。
「さて、それでは私は光君の食事のメニューを考えないといけないですね」
イタミはそう言うと、液晶に悩んでいるようなアイコンが表示された。
「アフリカ以外の地域では食材の調達もほとんどしたことが無いんですが、タロイモは近くのスーパーで買えますか?」
イタミの言葉に学はかなり不安になった。
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