第二章 カガヤキ キズアト

 健一は古いノートパソコンのキーボードに、そっと指を這わせた。画面には学生時代に書いたコードが映っている。

「懐かしい...こんなコードを書いてたんだ」

 かつて夢中になって作ったゲームエンジン。バグと格闘しながら、徹夜で没頭した日々が蘇ってくる。


 class GameWorld:

 def __init__(self):

 self.dreams = []

 self.possibilities = float('inf')


「無限の可能性か...」

 その言葉に喉が締め付けられ、会社での記憶が突如として甦ってきた。

「君のコードは基本的な設計思想が間違っている。これじゃ保守もできない」

 会議室に響く上司の声と画面に映し出された自分のコード。企画会議だ、と呼び出されたが、実際はただの公開処刑だった。皆の前で徹底的に否定された日のことを、今でも鮮明に覚えている。

「向いてないなら、さっさと辞めろ」

 最後に投げつけられたあの言葉。あの日からコードを書く手が震えるようになった。

 健一は深いため息をつき、モニターに映る自分の姿を見つめた。

「でも、本当に向いてないのか?」

 学生時代のコードを見ながら、少しずつ思い出す。プログラミングの楽しさと何かを創り出す喜び。

「誰かに認められたくて必死だった。でも、本当は...」

 キーボードに手を置く。指先がかすかに震えている。

「本当は、ただ作りたかっただけなんだ。誰かの評価のためじゃない」

 新しいファイルを開き、健一は一行のコードを打ち込んだ。


 def my_new_beginning():

 return "This time, for myself"


「這いつくばってでも、前に進もう。今度は、自分の道を」

 暗い部屋に、カタカタとキーを打つ音が響き始めた。

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