『必殺断罪屋稼業』はじめ、多くの痛快エンタメ小説を執筆している作者の最新作。古典的な題材と奇抜な設定を組み合わせ、面白い作品を次々に作り出してきた作者が今回用意したのは、三人の少女。しかし、ただの女の子たちではありません。なんと合体してひとつの身体を共有しているのです。多重人格ではなく、人格ごとに身体が変化するというから面白い。
そんな彼女たち、魔法のような力を使って何をするかというと……恐喝。それも、唸るほどカネをもっている極めつけの悪党を狙ってカネを脅し取るのです。だからといって義賊ではない。奪ったカネは好き勝手に使いまくり(主に食費)、あろうことか悪事に積極的に関わったりもします。うーん、すっげえワル!
でも、個人的には大好きです。こういう清々しいくらいの悪党。わたしは大藪春彦作品──『野獣死すべし』や『蘇える金狼』など──が大好きですが、本作の主人公はまさに大藪作品を代表する悪のヒーローたち、たとえば伊達邦彦をはじめとするとびきりの悪党たちと同じ匂いを放っています。
彼女たちは極めつけの悪党です。そう、しみったれた悪党ではない。恥知らずのやくざ者、死を恐れ権力にしがみつく老人、俗悪下劣なアッパークラス連中とは違う。突き抜けた悪、いわば俗世間の道徳を超越したところに至らんとする超人なのですね。合体変身し、超常的な力を行使するのですからまさに超人(アメコミ的な意味で)なんですけども、精神においても超人(ニーチェ的な意味で)ということですね。
この、ニーチェ的な意味での超人、というのは、大藪作品で追求されたテーマであって、そのバイブズを感じさせてくれる悪の三人娘に、わたしはいたく感じ入りました。これぞまさに大藪ヒーローの再来! と思ったのです。世俗道徳に縛られず、欲望のおもむくまま悪をなし、しかしその向こうに突き抜けるような強烈な強さ、これが大藪ヒーローでなくて何なのか。このようなかたちで大藪ヒーローの魂を引き継ぐ者が現れようとは。わたしは本当に嬉しい。
まさに痛快ピカレスク・ロマン。殺人すらものともせず、悪の高みへとひたすら邁進する三人娘の活躍から、今後も目が離せません。おすすめ。