料理①
スーティ人は基本料理しません。
しないというのかできないというのか。
お湯の沸かし方すら知らない人だってざらです。
出稼ぎに来た南国グリマルデ人の主婦が、ただの卵焼きを作って近所中から大絶賛となり、「料理人が死んだらスーティ人は飢死してしまうわ」と呆れてしまった逸話が残っています。
このような料理オンチっぷりにはいくつか理由があります。
まず、鉱山都市の住宅には、台所が存在しません。
狭小住宅だらけで台所を作るほどのスペースがないのです。
さらに火事の問題があります。
縦に伸びた、人口過密のバラック街。火事が起きたら悲惨ですよね。
ですので、火の取り扱いは、領主に許可を得た場所で業者が行います。
それにしても料理ができないなんて、スーティ人は困らないんでしょうか?
実際のところ、少しも困りません。
鉱山都市には安価で食べられる食堂や、広場に来るキッチンカーなどが所狭しと並んでいるからです!
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二人がいるのは東区14階グリーン郡、通称『クジラの胃袋』と呼ばれる大衆食堂街だった。
人口過密の鉱山都市では、火事は厳禁である。火を使える場所は特別な認可を得た市場や大衆食堂、大広場などだった。狭小住宅のほとんどには台所が存在しないのはそのためである。
台所がなくとも、鉱山都市の住民はさして困ることはなかった。
外には安くておいしい屋台や大衆食堂があるからである。
『クジラの胃袋』の客層は、近くの製糸工場に勤める工夫が主である。大勢のつなぎ姿がひしめき合っている。本日はこの店外客席に二人が紛れ込んでいたのだった。
第三章(2/10) 『クジラの胃袋』で新聞を読む より抜粋
(https://kakuyomu.jp/works/16818093090449348304/episodes/16818093090811556743)
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スーティ人にとってご飯は、買って食べるのが当たり前なのです。
では、登場人物たちはどうでしょうか。
・ゾーイ……全然できません。お茶を淹れたり、
酒のつまみを並べるくらいなら可能。
人に尽くすのが好きなので、興味はありそうです。
・セオドア……表向き外食を好んでいますが、
彼の素性からこのメンツの中では一番できます。
といってもめちゃくちゃ男料理です。肉ダン!野菜ダン!炒める!
・イッツェル……全然できません。良いところのお嬢さんですから。
流行りの店が好きです。
・ロビン……全然できません。『芋を蒸す』だけ祖父に習いました。
(いざという時に食いっぱぐれないようにという
・ダグラス……全然できません。
彼の仕事はもっぱら酒のコルク栓を抜くことです。
以上、全然料理できないスーティ人たちでした。
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