呼売り人

鉱山都市スーティ。

鉄骨のバラックが何層にも重なる無数の建築群。

全長は地下20階から地上71階まであるとされていますが、狭い法外地区に行き当たりばったりに建築を重ねて作られた複雑怪奇ふくざつかいきな都市の全貌ぜんぼうは、住民ですらわかっていません。


そこにウヨウヨ存在するのが、道端でヘイラッシャイする呼売り人です。



Q. 呼売り人って?

A. 要は行商人のことです!ワゴンや樽、身に背負った機械などで道を練り歩きます。



『はじまりのユートピア』で

鉱山都市スーティの季節は春なのですが、

例えば朝にはこんな行商人が歩き回ります。


◉朝


牛乳

水・白湯さゆ・シロップ水などの飲料水

茶葉

ジンジャーブレッドワゴン(学生やお茶会をする婦人を狙う)

キャベツ・ジャガイモ・ルバーブなどの生野菜

チェリー・ラズベリー・プルーン・イチゴ・スグリなどの季節の果物

ナッツ類


◉昼

蒸留酒(昼から酔っ払いたい人は鉱山都市に大勢います!)

水・白湯さゆ・シロップ水などの飲料水

朝の売れ残りの果物を潰して作られたジャム

鶏肉・コケモモ・魚などの缶詰

羽ペン・ノート・便箋・インク壺などの文房具

茶器・服・杖などの日常用品


◉夜

蒸留酒

ランタン

氷(氷室や簡易式冷蔵庫用)

石炭

工具貸し


食べ物だけではなく、実にさまざまなものを売っていることがわかりますね!

中でも白湯さゆ売りはなかなか珍しいかもしれません。


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ゾーイは白湯さゆ売りに声をかけた。見上げるほど大きな鉄釜を担いだ白湯売りは客寄せに鳴らしていた鈴をおさめて近付いてきた。鉄釜には小さな炉が付いており、赤々と炭が燃えている。白湯売りは腰に下げたミトンをはめ、なみなみと茶けたお湯を汲んだ。「俺が沸かした白湯はドクダミを煮出してあってね。若い女の美容と健康にはバツグンさ」と売り文句を言っている。ゾーイは小さな銅貨を白湯売りの分厚い手のひらに置いた。鉄鍋から湯気たつ柄杓を突っ込み、ゾーイの手持ちのコップに注がれる。


 あたたかな白湯に息を吹きかけた。


『はじまりのユートピア』 第三章 『クジラの胃袋』で新聞を読む より引用

https://kakuyomu.jp/works/16818093090449348304/episodes/16818093090811556743

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いろんな国に呼売り人はいても、このように炉のついた鉄釜を背負う人は少し珍しいです。夏になると、自動果汁抽出機ブレンダーという機械を背負うジュース売りも登場します。重い機械を背負って歩き回るので、重労働ですね!


彼らは鉄の天板の上で、喉も張り裂けんばかりに商品名を連呼しながら、人が集まりやすい広場や駅にたむろします。

ちょっとしたお祭りのような光景は、観光客にとっては珍しいかもしれませんが、

実は呼売り人、目下警察の目の上のです。


なぜかというと、この呼売り商人たち、ほとんど全員、賭け事に熱中しているから!!





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 葡萄蔦の塔の周りにはぐるっと円形交差点がある。地上階でしか見られない馬車が野菜の積荷を引いている。朝食時の今は、卵の呼び売り人が大きな籠を頭にのせている。葡萄の蔦が絡まるように垂れ下がり、その奥の場所で賭け事をしている集団がいる。石畳の上にハンカチを敷き、その上にコインが重ねられている。蔦のカーテンの裏には見張り役の少年がこちらを警戒して見つめていた。


『はじまりのユートピア』第二章 葡萄蔦の塔 より引用

https://kakuyomu.jp/works/16818093090449348304/episodes/16818093090654999065


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賭け事と呼売り人は切っても切れない関係。

彼らは休憩がてら、橋の下や廃墟、広場の隅など目立たないところに集まり、

日々の生活で手にしたぜにをすべて板の上にのせてしまうのです。


身を滅ぼしかねない遊びをやめさせようと警察は奮闘しているわけですが、帰って度胸試しにされてる始末。

警察が近づくたびに見張りが「!」と反対言葉や「星の下!」など合言葉を囁き、有り金を持って散ってしまうのです。(「星の下」という合言葉はかなり古くから使われていますが、由来はわかっていません)


時折何も知らない観光客が賭け事にフラリと参加してしまうのですが、その場合は輪の中の呼売り人が漏れなく結託してサクラになってしまうので、ぼったくられたくなければ近づかないのが無難でしょう。


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それから、呼売り商人の商品を買うときには見極めが肝心!

イイ物を売っている時もあれば、を売っている時もあります。

売れ残ってシワがよった古いリンゴの上に、新しいリンゴを積んだり、

古いリンゴを布きれで磨いて、新鮮なリンゴに見せかけたりしています。

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