第17話 婚約期間と同棲
シャーッ
カーテンを開ける。
朝の光が眩しい!
昨晩は、ほんとに色々・・・色々ありすぎたけど・・・。
なんて良い日だったのだろう!!
たった一晩の出来事・・・でも、私にとって大きすぎる出来事だった。
団長が私のことを『好き!!』って言ってくれた!
記念すべき日だった。
なんだか、一晩で世界が変わった気がする。
いつもと同じ寮の私の部屋・・・職場に向かう道。
どれもがくっきりと彩られ輝いて見える。
私に彼氏が出来た!!
好きな人に『好き』を返してもらえる『幸せ』
幸せすぎる〜〜〜!!
それも、その彼氏が団長!!
あのかっこいい団長!
鍛え抜かれた見事な筋肉!
ちょっと強面な男らしい顔!
それでいて、気遣いのできる優しい男性!
エッチで意地悪なところがちょっとあるかも?・・・しれないけど・・・
(胸を揉まれても・・嫌じゃなかったし・・・)
団長の女性に慣れた感じが少し悔しかったけど・・・
恋愛初心者の私をリードしてくれるって思えば・・・
益々好きになってしまっている。
幸せ〜〜〜。
死んでも悔いなし!!・・・いや、死にたくない!
レオとともに生きる!!
この世界に来れてよかった〜〜!!
こんなに幸せなのに・・・・不安なことがある・・・
でも、今はこの幸せを満喫したい。
本能的に心の奥に芽生えた不安に蓋をした・・・・
「おはようございまーす!」
ウキウキ気分でいつもよりも元気に挨拶して部屋に入る。
「ああ、おはよう」
微笑みながら紡がれる落ち着いた低音での挨拶。
く〜っ、最高!!
団長っ、今日は一段とカッコいい!!
そして、爽やか〜。
挨拶をくれた彼氏レオを見て荷物を置いて、
部屋の隅にある簡易キッチンで隠れてニヤニヤする私。(怪しいというなかれ・・・ここは職場なのだ・・・でも、ニヤニヤするくらいは許してほしい)
ああ〜いい〜〜、心の中で、先ほどの団長を思い出しながら、
早速朝のお茶を淹れる準備を始める。
まだ、この部屋に姿のないルーカス副団長の分も含めてカップに手をかける。
沸かしたお湯を少し冷ましていると、後ろに人の気配がする。
振り向けば、想像通りの団長がニコニコと満面の笑みを浮かべ立っている。
「ミサキ、昨日はあれからちゃんと眠れたか?」
「はい。寮まで送っていただきありがとうございました」
昨日のあれこれを思い出しそうな脳内を何とか平常に保ちつつ、団長に感謝の気持ちを伝える。もちろん、大好きの気持ちを乗せて!
あ・・・でも・・何か照れくさいっていうか恥ずかしい。
団長の顔をしっかりみることが出来ない・・・。
団長の顔を正面から見ることの出来ない私の視線は、
自然に団長の騎士服に覆われた雄っぱい・・・もとい胸に向かう。
やっぱ、いい!ものすごい存在感のある大胸筋!!
ああ、でもせっかくなので顔を見たい。
「ちょ・・・、団長、近いです。ここ・・・・職場ですし、ルーカス副団長もそろそろ見えると思いますし・・・・」
「ミサキ、少しつれなくないか。名前も呼ばず、顔もしっかり見せてくれない・・・なあ、そう思わないか?」
「そのっ、ここは職場ですから・・・・」
「ああ、そうだな。でも、今は・・・俺とミサキの二人だけだ」
キッチンのシンクと団長の分厚い身体に挟まれる。
どうしよう、ものすごく近い!!
目の前にムッキムキの大胸筋!
触ってしまってもいいものだろうか・・・・さりげなく、頬をあてるくらいなら・・・・
欲望と戦う私。
欲望に負けて団長の胸に頬を近づけようとした時、
「チッ、時間ぎれか!」
不機嫌そうに舌打ちし、私から離れた瞬間、執務室の扉が開き、ルーカス副団長が入ってきた。
「あれっ・・・団長、お邪魔でしたか」
茶化すように団長に話しかける。
「わかっているなら少しは融通してくれ!」
「いや〜、団長がそんなことをいいだすとわなー」
呆れた様子のルーカス副団長が、私に視線を移す。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。ミサキ」
ニッコリと笑みを浮かべて挨拶する・・・・が、いつもと同じ挨拶でありながら・・・
何となく、違和感が残る。
「ミサキ、変わったことは?」
何だかよくわからない質問がルーカス副団長から飛んできた。
当然、意味のわからない私は????首を傾げる。
そんな私を見て、ルーカス副団長は団長を訝しむようにジトーっと見ながら、
「団長、ミサキに伝え・・たであってますか?」
「ああ、無事叶った。問題ない」
「おめでとうございます。では、今日は引越しで忙しいのでは?」
「ああ、午前中に急ぎの業務のみ終わらせる。
ミサキと俺は、午後から明日一日休む」
ん??何の話か・・・分からない。
午後から明日は休み??
団長と副団長が私を挟むようにして、
交わしている会話に理解が追いつかず困惑している私
を見て・・・・二人とも私が話の内容が全くわかっていないことを察したようで、
「「は〜〜っ」」複雑な表情と長いため気が重なった。
そして・・・二人が私を見る。
えっ・・・私〜〜〜〜???
「ミサキ、団長から何かきいていますか?」
「えっと・・・何かって何をでしょう?」
疑問を疑問で返してしまった・・・。
「準備が出来次第、ミサキが団長と一緒に暮らすことについてです」
私が団長と一緒に暮らす????えっ???
はあ〜〜〜〜〜(脳内は絶叫しながら????をあげている)
「私と団長が・・・どうしてですか??」
私の困惑した態度でルーカス副団長は「きちんと説明しなかったのか」団長に問うようにアイコンタクトを送っている。
そんな副団長の視線などお構いなしの団長は、「ミサキ、元の世界では、『思いが繋がったら一緒に生活する婚約期間に入る』決まりごとはあったか?」
「えっ〜〜〜と」
同棲・・・になるのかな・・・・でも、強制的な決まりことではなかった・・・と思うけど・・・・(恋愛から縁遠く、一般的が・・・分からない・・・・情けない)
「一緒に住む人たちもいましたが・・・・決まりごとではなかったと・・・」
「そうか。ここでは、『思いが繋がれば、すぐに男性の家でともに過ごすこと』になる。
この期間は『婚約期間』と呼ばれ、最短で6ヶ月、最長で3年続ける。その結果、上手くいけば結婚し夫婦となり、ダメであった場合は婚約解消となる。ここでは、一度結婚すれば離れることが許されない。ここまで、理解できたか?」
私をしっかりと見据え、ゆっくり丁寧に説明してくれる団長。
「はい。では・・・その・・・・」
言葉が続かない。
一緒に生活(同棲)したとして、子供が出来た時は・・・・それが、知りたかった
のだが・・・・。
そんな私の気持ちを察したのか、副団長が補足の説明をしてくれた。
それによれば、性格の不一致の有無の確認と性行為の相性を確認する目的で婚約期間は設けられおり、婚約期間中は避妊用のシロップが国から提供されるため、子供は出来ないのだとか・・・。
そっか〜、納得できたような・・・そうでないような。
・・・・ん?ちょっと待って。
団長と私が一緒に住む・・・・それ以前に、なんで???
なんで副団長が、私と団長のこと知ってるの??
えっ・・・・いつから・・・
ルーカス副団長をジッっと凝視してしまった。
「ミサキ、君と団長はとにかくわかりやすい」
これって・・・最初っから知ってたってこと〜〜〜〜!?
むちゃくちゃ恥ずかしいい〜〜〜〜!!
なのに団長は平然とした顔で、
「・・・っていうわけで、ミサキの引越しの手配は済ませてある。
ミサキは身の回りのものを持って、俺の家に来てくれ」
「えっっっっっ?!今日からですか??」
その・・嫌ではなく・・・むしろ嬉しい気持ちが強い。
ただ・・・、心配事というか・・・他の世界(日本)からここ(異世界)に来たからの不安が・・・・どうしたものか・・・と私を躊躇させる。
でも、ここで『否』の返事は出来ない。
私は団長がこれ以上ないくらい好きだから。
首を縦に振った私を嬉しそうに見つめ、大きく頷いた団長。
そして、私は急遽、団長とともに暮らすことになった。
今晩必ず・・・団長に確認してもらおう・・・恥ずかしいけど・・
でも、大切なことだと思うから・・・・
私はやると決めた。
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