第7話

 アゲハちゃんへの痴漢を初めて二週間が経った。

 その間毎日のように、俺は彼女に話しかけ、体に触れ、少しずつ開発を進めていたのだが……今日はついに、『先』へと進むことにした。


 なぜなら、今朝見たら、完全痴漢マニュアルアプリの画面上に次のようなテキストが表示されていたからである。


『性感帯の開発を進めてみよう!

 ターゲットの好感度上昇が頭打ちになっていませんか? もしそういう時は、性感帯の開発を進めてみるのもいいかもしれません!

 性感帯の開発を進め、ターゲットが性的快感を感じられるようになると、オキシトシンが分泌されます。別名で愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌されれば、自ずとターゲットの好感度も上がることでしょう。

 そのためには、日常的な性感帯の開発が重要です! まずは胸やお尻、太腿へのタッチや、キスなどで、開発を進めて行くと良いでしょう!』


 ……ついに来た、と俺は思った。

 決意も新たに駅へと向かう。


  ***


 いつも通り、駅のホームでアゲハちゃんの姿を探す。

 ……手慣れた作業だ。アゲハちゃんの姿はすぐに見つかった。


 彼女はいつも通り、電車が来るまでの時間をスマホを見て潰している。朝の駅は他にも人がたくさんいるから、こちらに気づく様子はなかった。


「あ、動画更新されてる~」


 そんなこと言いながらニコニコしている様子は、今日も今日とて純真無垢な天使そのものの姿であった。

 ……まあ、そんな天使も、毎日少しずつ俺の手で開発されているんだが。


 そんなちょっとした優越感を抱きつつ、彼女を観察している間に電車がやってくる。


「あ、来た来た~」


 そう言いながら、電車に乗り込んでいくアゲハちゃん。

 俺もまた、彼女のあとについて乗り込むと、アゲハちゃんのすぐ近くにまで進んでいく。


 ……しかし、今日も相変わらず可愛い。

 俺の胸ぐらいまでしか身長のない小柄な体でありながら、胸元はしっかりと主張しているぐらいに育ったスケベボディ。

 なのにそのボディのスケベさが不釣り合いなぐらいに、あどけない顔つき。

 性知識なんて皆無です、ってぐらいに表情や振る舞いは無垢なのに、制服の上からでも分かる尻と胸の大きさに、正直ち〇ち〇はイライラさせられてしょうがない。


 こうして痴漢開発を始める前は、アゲハちゃんをそういう風に見ちゃいけないと思っていたけど……。


(はぁ~、こうして見るとめちゃくちゃブチ犯してぇ体つきしてやがるじゃねぇか……)


 開発を進めたその『先』への期待と想像だけで、股間がパンパンに張り詰める。

 先走りそうになる感情を抑えつつ、俺はいつも通りまずはアゲハちゃんへと話しかけることにした。


「おはよう、アゲハちゃん」

「あ……」


 こちらに気づいたアゲハちゃんは、一瞬びっくりしたような顔でこちらを見上げると、すぐににっこりと笑ってくれた。


「おはようございますっ」


 清純な笑顔だ。でも、その清純な笑顔を見ても、以前ならただ癒されるだけだったのに、今の俺はもう『乱れさせてやりてぇ』という風に思うようになってしまっていた。


「毎日のことだけど、今日も混んでるね」

「そうですね。朝ですし……」

「こんなに混んでると、ほんと、ぎゅうぎゅうって感じだよね」


 そんなことを言いながら、俺はアゲハちゃんの頭へと手を伸ばす。


「あ……」

「混んでるからね。いやあ、これじゃ身動きするのもなかなか大変だよね」

「あー、分かります。でも満員電車じゃ仕方ないですよねぇ……」


 そう言いながら、アゲハちゃんはたははと笑った。

 こちらの言葉を完全に信じ切っている感じで、将来が心配になる。悪い大人に騙されやしないかって……。


 まあ俺は、悪い大人だから積極的にアゲハちゃんを騙していくのだが。


「そう、満員電車じゃ仕方ないんだよ」


 そんなことを言いながら、俺は撫でている場所を頭から耳へと変えていく。


「ん……ぁ、そこ、ちょっと……」

「ちょっと、なに?」

「へ? い、いや、なんでもないです……」


 ……ごまかそうとするアゲハちゃんだが、頬が赤くなっていることで分かる。

 耳も頭も、開発度が進んでいるからな。少しずつそこで気持ちよくなっていってしまっているのだろう。


「そっかそっか。なんでもないなら、良かったよ」


 しかし表面上は、素知らぬ態度で俺は話を合わせた。

 何でもないと彼女が主張するのであるならば、つまりはそういうことなんだろう。


「ところでアゲハちゃん。最近、変わったこととかあった?」

「へ? なんでですか?」

「いやぁ、なんかちょっと、アゲハちゃんの顔が『赤くなってる』気がしてねぇ。いや、俺の勘違いなら別にいいんだけど、赤くなるようなことでもあったのかなって」


 会話を続けながら、撫でる場所をさらに変えていく。

 耳から肩へ……その最中に、首筋をちょっと指先でなぞるようにしながら、彼女へのボディタッチを続けていく。


「んっ……へ? あ、赤くなってましたか、わたし? や、やだ、恥ずかしい……」


 撫でる場所を変えた際の刺激で、彼女が僅かに声を上げる。

 それから恥ずかしそうな表情で、俺からそっと視線を背けた。


 いったんアプリを確認すると、羞恥度が90%を超えそうになっている。


 ……おっといけない。ちょっと調整をしないとな。


 アゲハちゃんの身体からパッと手を離した。


「あ……」


 するとアゲハちゃんはちょっとホッとしたような顔つきになり、顔の赤らみも徐々に引き始めていった。


 ……こんな風にして、一度上がった羞恥度も、ちょっと手を離せばすぐに下がっていく辺り。本当に、とても都合の良い子である。


「いやぁ、ごめんごめん。満員電車だと、どうしても体が当たっちゃうよね。不愉快な気持ちにさせてないかな? 大丈夫?」

「あ、大丈夫です。全然嫌じゃないですよっ。仕方のないことですし」


 そんなことを言いながら、アゲハちゃんはにぱぁっと笑う。

 なるほどなるほど……『仕方ない』から『全然嫌』ではないと……。


 ……だったら、こんな風に体が当たっても『仕方ない』よね?


「っ!? んんっ!?」


 アゲハちゃんの羞恥度がじゅうぶんに下がった頃を見計らい、電車の揺れに合わせて俺は彼女の唇へとキスをした。

 おそらくは、アゲハちゃんの初キッス……。それを『仕方ない』という言い訳で、強引に奪い取ってやったのである。

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