第18話 作戦会議

 「田邉、お前よくやったな。お前の作った装置のおかげでかなり効果が上がってる。」

 田邉は褒められているのにもかかわらず不満げな様子だ。

 「代表、あんなもの理論もへったくれもないですよ。なんでああなってんのか全然わからないんですから。ただ現象だけがある。」

 「まあ、そこらへんはどうでもいいよ。飛行機だってなんで飛んでんのかわかんないんだろ?とにかく実用的でありさえすればいいんだ。本当に実用的なものは美しい。」

 加藤はとにかく上機嫌である。

 田邉は助手とともに何度も実験を繰り返し、電磁波の補足に成功した。ゲルマニウム容器で遮蔽すると電磁波は外に漏れない。容器の内側で反射し続ける。事故死や突然の病死になる仕組みはわからないが、電磁波に触れるとそうなる。つまみの位置によってごくごく微量の波長の変化があるが、人為的に波長を変化させることはできないので、対象年齢の設定は小林頼みだ。また、密閉してから解放すると、影響範囲が限られてくることも分かった。大体半径百メートルほどである。

 「とにかく、あの装置のおかげで対象をほぼほぼ殺せるようになった。近くに同じ年齢の人がいると巻き添えにしちゃうけど。」

 「ジョン・タイターの煽りもかなり効いてますよ。名簿流してから各地に飛んだ細胞が装置作動させて殺してるのに、名簿を見たとたん発狂する人が後を絶たない。犯罪も増えてますし、社会不安が広がってます。パンデミックですよ。」

 中田が加藤の話に相槌を打つ。

 「いいね。社会不安が広がれば広がるほど我々の目標に近づく。それはそうと、小林さん、感づいたりしてないかな。」

 「アルファヒルズから一歩も出してないですし、ネットやニュースの類も遮断してます。精力的に生き方ネットで働いてますよ。ボタン押すときだけ、神妙な顔して押してます。」

 「よし、そろそろ次の段階に移ろうか。みんな、準備態勢に入ってくれ。」

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