一条月華その2⑤
昼休み。
これ以上、アキちゃんのメンタルを破壊しないためにも、俺は
そのまま、二人で屋上へと向かうことになった。
財閥の美人な令嬢と二人きりでご飯と聞くと、ときめくかもしれないだろう?
でも、こいつブリーフはいてるんだぜ? やべぇよ、マジで。
「
ベンチで隣同士に座り、頬を朱色に染めてモジモジするブリーフ。違った、
なお、ここに来るまでの間にアキちゃんからは、『絶対に、
果たして守りたいのは、
兎にも角にも、俺は今、ブリーフを巡る戦々恐々の昼休みへと突入した。
もちろん、スマートフォンをアキちゃんと繋いでいるので、会話はアキちゃんにもしっかりと聞こえている。っていうか、屋上の入り口にいる。
チラッとドアを開けて、ものすごく涙目でこっちを見てる。ちょっと可愛い。
「ま、まぁ、それはお互い様かな。俺も
「
「いや、さすがに呼びづらいよ。ほら、
「そんな……。私なんて、大したことありませんわ。どこにでもいる平凡な女で……」
そうか。ブリーフをはいたどこにでもいる平凡な女か。平凡か?
「俺と比べたら、充分すごいよ」
主に、ブリーフをはいてるところが。
「ふふ……。
そういえば、一周目でも
高飛車ではあるのだけど、俺のことはいつも持ち上げてくれて……。
「ありがとな。じゃあ、少しだけそう思うことにする」
「ええ。是非」
はにかむ
どう頑張っても、脳裏にブリーフがよぎってときめきが打ち消される。
「それにしても、風が気持ちいいですわね……。とても気持ちのいい風で……」
食事を終えて一息ついた後、
相変わらず、スタイルがいいな。
なんかスカートがやけに短く……
『
「あら、いけませんわ! 風が私のスカートを……」
「そぉい!」
あっぶねぇぇぇ!! 咄嗟に立ち上がり、体を使って
この女、風を利用して意図的にスカートをめくりあげて、下着を見せようとしやがった! アキちゃんのブリーフを、俺の眼前に広げようとしたのだ!
『早く! 早く座らせて! やだ!
ワイヤレスイヤホンから、アキちゃんの必死の願いが響く。
そんな可愛い声で言われなくても、もちろん分かっているさ。
俺だって、ブリーフ着用のお嬢様なんて見たくない。そんな特殊な性癖はない。
「風が強いし、座っていたほうがいい。その、めくれちゃうかもだし……」
「そうですわね。では、そうさせて……いけませんわ。足がもつれてぇ~」
『あとぉぉぉぉぉぉぉ!!』
「そそぉい!」
「きゃぁ!」
咄嗟に俺は
「
「こ、転ぶと怪我をしちゃうからね……」
この女、やばすぎる……。
けど、いい匂いがするなぁ。それに、髪の毛もサラサラで……
『おい、
はい、分かっています。分かってますから、そんな不機嫌な声を出さないで。
ひとまず、
そのまま、
「ふふふ……。
「大したことない。別に鍛えてるわけでもないし」
『
俺だって離れたいけど、この子くっついてくるんですよ。
「まるで、お父様みたいですわ……」
「お父様?」
「ええ。お父様はとてもお優しい方ですの。いつも私に優しくしてくれて、怒られた経験も、叩かれた経験もないのですわ」
「そう、なんだ」
「きっと
とんでもねぇゴリ押しできたな、おい!
「い、いやぁ~! さすがに、それは緊張するって! また別の機会にでも……」
「ふふふ。捕まえて拷問するわけでもありませんし、そんなに緊張しなくても大丈夫ですわ」
将来的にはするけどな。
助け出されたと思ったら、ただ捕まり直しただけでほんと地獄だったよ。
しかし、どうする? このままでは、確実に
何とかこの場から逃げ出さなくては……む? チャイムが鳴った!
「そろそろ昼休みも終わるみたいだな! じゃあ、
「あっ!
チャイムが鳴って、よかったぁぁぁぁぁ!!
咄嗟に立ち上がり屋上の入口へと逃げ込んで、そのまま階段を下る。
すると、屋上の入り口近辺に隠れていたアキちゃんが、続いて降りてきた。
いつの間にか、追い抜いていたらしい。
「ありがとう、
感謝を告げるアキちゃんだが、何だかやけに下半身をモジモジさせている。
そういえば
男が、女物のパンツをはくとどうなるんだろう? ちょっと興味がある。
「アキちゃん、良ければズボンを脱がしてもいいか?」
「変態よ、今すぐ教室に戻れ」
ものすごく冷たい声で拒絶された。さみしいぜ、
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