第2話

 幸い、俺の場合は普通の人より少しだけ魂力が強いくらいなようで、怪我で血を流したり、風邪で鼻水が流れたりと……魂力の『におい』を極端に出さなければ、さほど差し支えはないようだ。



 霊力の無い人間が、悪魔の姿を見る事が出来るというのはまれなようだ。見えている方が回避出来るので、かえって良かったかもしれないと言われて少しほっとした。


 今まで俺しか見えて無かった異形の生物の正体が分かったっていうのもあるが、一番ほっとした事は、俺だけが『おかしい』訳では無いと分かったことだ。



 ある程度の説明の終わった後、やってきた宮司の息子だという楠木龍也くすのきりゅうやさんという人が、俺に向かってニコリと笑った。



「鈴原……秋人あきと君だったかな?」


「うん」


「私にもね、君と同い年の息子が居てね。名前は紫龍しりゅうというんだ。君みたいな子を守ってくれるような力を持っているから、仲良くなってくれると嬉しいな」



 守るという言葉を当時知らなかった俺だけど、友達が出来るっていうのは嬉しかったのは覚えている。



 いつも怪我ばかりして、皆に見えないものが見えると言い続けてきた俺は、例に漏れずに皆からは一歩引いて見られていた。



 紹介されて後ろからヒョッコリと現れた紫龍は、俺の事を穴が空くほど見つめた後、くしゃくしゃになるくらいに頬をほころばせて笑った。



 この時見た屈託くったくのない笑顔は、恐らく一生忘れることが出来ないだろう。



「しりゅうっていうんだ。よろしくなー!!」



「よ……よろしく」



 戸惑いながらも握手を交わした俺たちは、その後もずっと仲の良い一番の親友になった。



 その数ヶ月後に母の妊娠が判明し、二人とも不安を抱えながらも出産を決意し……翌年に生まれてきた俺の弟の夏目なつめは、それはもう女の子と見粉みまごうくらいに可愛いかった。



 龍蔵さんは、魂力の強い子供が生まれる確率は稀だけれど、その子供を生んだ事のある両親からは、同じ体質の子供が生まれる可能性も高いので、もし再び子供を授かったあかつきには、必ず一度神社へ連れて来るようにと言われていた。

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