捕らわれているんだよね?カイトとサラ

 何もない部屋、あるのは数え切れないくらい大量にあるパズルのピース……


「もしかしてニャン太郎ちゃんもあの二人に捕まっちゃったのかも…… 心配だよぉ……」


「それよりどうする? このジグソーパズルを完成させないと部屋から出られないみたいだぞ?」


「完成って…… 普通ジグソーパズルって『完成したらこんな感じだよ』みたいな絵や写真があって、それと見比べながらパズルのピースを並べて遊ぶんだよね? そのヒントがないと何が何だか分からないよ……」


 そう、あるのはパズルのピースだけ、ヒントになるものが一切ないんだ。

 こんな状態でどうしろっていうんだよ…… 


 しかし…… 宇藤と井戸田さんが繋がっていたとは…… 宇藤とは高校卒業以来、街で偶然一度会ったきりで、あまり関わりがなかったはずなのに…… 恨まれるような事をした記憶はない。


 そして井戸田さんのお腹の子供は俺との子供じゃなかったなんて…… じゃあ俺は一体何のために……


「うーん…… 他に出口がないかな……」


「お、おい、サラ! あまりあちこち触らない方がいいんじゃないか? この空間に何か他にも仕掛けがある可能性だって……」


「そうだけど…… 黙っていたらいつまでも出られないよ? ニャン太郎ちゃんだって心配だし…… んっ? この感触は何だろう……」


 えっ!? ちょ、ちょっとサラ、何をして…… うわわわわぁぁぁぁーーー!!




 ◇




 さて、城ノ内達を別次元の空間に閉じ込めて一時間くらいか…… まあ、あっちでは約一ヶ月くらい経っているんだがな。


 俺達の能力で作り出した別次元の空間は時の流れが違い、こちらよりも時間が進むのが遅い。

 そしてこの能力で何もない部屋に二人きりで閉じ込めておけば…… ふはははっ!


 しかも部屋から出るためにはあのパズルを完成させなければならない。

 普通の人間がやれば完成まで千年はかかるというあのジグソーパズル、最初は協力して完成させようとするだろう、だが終わりのない作業を何もない空間で二人きり、食事などは最低限のものしか出てこない仕掛けになっているし、ストレスで次第に心の余裕もなくなり、最後には仲違いして…… ふはははっ! 計画通りだ!


 タイムリープしてでもお前達は愛を信じてやり直そうとした、その空間の中でどれだけ愛し続ける事が出来るのかこの目で最後まで見届けさせてもらおう!


「禎子、二人の様子はどうだ?」


「あっ、遊紀くん…… これ…… どうしよう……」


 んっ? どうしようとは…… どれどれ、監視カメラの映像を見てみるか…… はっ? な、な、何だこれは!!



『ふふふっ、カイトくん、ご飯だよー』


『おっ、今日はカレーか』


『おかわりもあるからいっぱい食べてね』


『いただきまーす…… んっ! 美味い! やっぱりサラのカレーが一番だな!』


『ふふふっ、ありがと』


 何故だ! 何もない空間だったはずなのに、何故普通のアパートの一室みたいになっているんだ!?


 リビングにはカーペットが敷かれてテーブルが設置されているし、キッチンに冷蔵庫、奥には洗濯機や大きめなベッドが一つと、生活用品が一通り揃っているじゃないか!!


「禎子! これはどういう事だ!」


「分かんない…… あの女が壁を触ったら、いきなりこんな部屋に変化した……」


「お前! ずっと監視していたんだよな!? 何で報告しなかった!」


「えっ…… だって遊紀くんが二時間は何も手を出さずに見ていろって……」


 確かに言った! だけどこういう場合は報告してくれよ! ああ、もう!! 禎子はのんびりとした性格だからこういう所が困る!!


『カイトくん、お風呂入っちゃおう?』


『あ、あぁ…… なぁ、やっぱり今回も…… 一緒に入るのか?』


『当たり前でしょ! いつ、どこから攻撃されるか分からないんだよ? 危ないから常に一緒にいないと……』


 な、何ぃぃっ! この部屋、風呂もあるのか!? しかもその口ぶり…… 貴様達、一緒に風呂に入っているな!?


「遊紀くん、お風呂には監視カメラはないよ? それはプライバシーの侵害……」


 の、覗かないし! 羨ましいとかも思ってないし! ……ああ、もう!! 思てたんと違う!!


「と、ところでジグソーパズルの完成度はどうなってる?」


 ふははっ、そ、そうだ、二人は現実逃避しているだけだ、そもそもジグソーパズルを完成させないと二度と外には出られないんだぞ?


「ジグソーパズルは…… あれ」


 んっ? 禎子が画面を指を差したその場所にあったのは…… 大量のゴミ袋? 


「部屋が散らかって見えるからって…… あの女が掃除してた」


 おぃぃぃーーー!! それ完成させないと出られないって言ったじゃん! っていうかもう出る気ないじゃん!!


『カイトくん、背中洗ってー』


『お、おう……』


『ふふふっ、何か当たってるよ?』


『し、仕方ないだろ? 狭いんだから……』


『もう、仕方ないなぁ……』


 んっ? 音だけしか聞こえないが…… 何をしてるんだ? 身体を洗うにしては擦る音が小刻みというか……


『うっ! あ、ありがとう…… サラ』


『ふふふっ、どういたしまして……』


 しかもやたらと風呂に入っている時間が長いな! どんだけ身体を洗っているんだよ!

 

 やっと風呂から出てきたか…… って、吉ヶ江さん、なんてラフ過ぎる格好をしているんだ! ダボダボのTシャツだけを着て…… あっ、ホットパンツみたいなのを履いていた…… 紛らわしい格好だな! 


『ふぅ…… お風呂上がりにアイス食べたくなっちゃった…… カイトくんも食べる?』


『う、うん……』


『ちょっと待ってね…… うーん、うーん…… これかな? あっ、あった! はい、どうぞ!』


 お、おい! 吉ヶ江さん!? いきなりホットパンツの中に手を突っ込んだと思ったら…… そんな所からどうしてアイスが出てくるんだよ!? それにしても…… チラッと見えた下着がド派手だったな。


「あのパンツとかブラからマジックみたいに色々な物が出てくるんだよ…… スーパーイリュージョンだよ……」


 どう考えてもそんな下着おかしいだろ! 不思議なパンツで何でも叶えてくれるだなんて、まるで……


『ありがとう…… サラ○もん』


『もう! カイトくんったらぁ、からかわないでよー、うーふーふぅー』


『しかも昔の方かよ……』 


 しかも昔の…… チッ! 城ノ内に先を越された!! 

 しかしどうしてこんなに充実した暮らしをしているか分かった…… さすが吉ヶ江さんだ…… ザーマ様が警戒するだけの能力を持っている。


 しかし! その部屋にいる限り、お前達の命は俺達が握っているんだ!


『カイトくん、おやすみ……』


『おやすみ、サラ……』


 くっ! あんなに密着しながら一緒に眠りやがって…… どうしてなんだ…… どうして…… 城ノ内なんかが……


『ふふっ…… カイトくんは元気だねぇ』


『こ、これはその…… すまない……』


『若返っちゃったもんね、仕方ないよ…… でもベッドを汚したら大変だから…… よいしょっと……』


『サラ? おい、布団に潜って何を…… はぅっ!』


 ……んぁっ? おっと、何も動きがなくてウトウトしていたら怪しい動きをし始めたぞ…… あれ? 吉ヶ江さんの姿が見えない、しかも暗くてよく分からないが何だ? この…… うどんでも啜っているような音は。


『サ、サラっ!!』


 うわっ、城ノ内のやつ、いきなり大きな声を出しやがって…… ビックリしただろ!


『んふふっ…… これでグッスリ眠れそう?』


 布団がモゾモゾと動いて吉ヶ江さんが出てきた…… お、お前ら! こんな危険な状況なのにナニをしてるんだ!!


『んー、カイトくん、飲み物とティッシュ取ってー』


『あ、あぁ…… はい』


『ありがと、ふふふっ』


 ぐぅぅっ…… 俺は…… 俺は一体何を見せられているんだ!?

 城ノ内と吉ヶ江さんが醜く争う姿が見たかったのに…… これじゃあまるで二人の仲を取り持っているみたいじゃないか!!


『ねぇ、カイトくん…… ついでにもうパズルを完成させちゃおうよぉ?』


 えっ? パズルはゴミ袋に入っていたよな?


『こっちのパズルはカイトくんが持ってる一つのピースをハメるだけで完成しちゃうよ? きっとピッタリハマるはずだから…… グラン○ライン目指して大航海…… しよ?』


 な、何をしようとしてるんだ! まさか大海原に大量の海賊を放とうとしているんじゃ…… そんな事をしたらお宝争奪戦が始まって、最初にお宝に辿り着いた勇敢な海賊が…… ウィーアーしちゃうじゃないか!!


 ダメだ、そんな事…… 


 吉ヶ江さんは…… 吉ヶ江さんは……


「お、おい、禎子! 能力を解除しろ!」


「えっ? う、うん……」


 止めてくれ! 吉ヶ江さ……











「やれやれ…… ようやく罠にかかったな……」


「ふふふっ、ニャン太郎ちゃん、やっちゃうよ」


「ああ、お嬢ちゃん…… おい、チビ猫ども、覚悟は出来ているか?」

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