サラと的当て

 あっ…… 何だか凄く暖かくて、しかも落ち着く匂いがする……

 この嗅ぎ慣れた、甘ったるいような、それでいてムラっとしてしまう匂い……


「うっ……」


「すぅ…… すぅ……」


 ……んっ? んんっ? 


 確か佐世にいきなり○されそうになって逃げようとした瞬間、サラとニャン太郎が現れて…… あぁっ!! そ、そうだ!


 急に倒れた佐世を起こそうとした時に、偶然パイタッチしてしまったら…… ティンがボンしたんだった!!

 で、目が覚めたら目の前には…… サラの寝顔がある!!


 いつの間にかサラの部屋のベッドでサラと一緒に寝ているし…… もしかしてボンしたから時間が巻き戻ったのか?


 しかもちょっと視線を下の方に向けると…… サラのブラウスの胸元が開いていて、立派なたわわの谷間が目の前に!!

 そして身体を動かそうとしても俺の足にサラの足が絡んでいて身動きが取れないから…… 目を逸らすことが出来ない!!


 うぅっ、甘ったるい匂いの発生源はだったのか…… 道理で嗅ぎ慣れていると感じたわけだ。


 顔を埋めて深呼吸したりもした。

 逆に押し潰されて窒息しかけたりもした。

 十年以上前からの数え切れないくらい付き合いだ…… 匂いで分かるよ。


「うぅん……」


 う、動くな! しかもこの変形具合はじゃないか!? もう少し動いたら…… がおはようございますしちゃうよ! 


 実際、何度も見ているから見えたところでどうしたの? って話だが…… この密着した状態で、高校生の身体の俺がそれを見たら…… 絶対元気が出ちゃう自信がある!!


「ふふっ、カイトくん、そんなモゾモゾと動かれたらくすぐったいよぉ」


「あっ、えっ…… す、すまん……」


 いつの間に目を覚ましていたんだ!? 


「そんなに間近で凝視されたら恥ずかしくなっちゃうけど…… はい、どうぞ……」


 おぱぱぁーー!! おはようございます! こんにちわ、こんばんわぁぁーー!! 


 ふむふむ、ピンクではないし先も輪も大きめだが相変わらず綺麗な形をしているな。

 そして右の輪の近くにはホクロがあって特別な感じがするが、これを発見した俺もまた特別な存在というわけで……


「急にキャラメルソムリエみたいな事を言って…… どう? あの『C』より良いでしょ?」


 『E』? じゃなくて『良い』か…… この頃のサラは確か『F』だもんな。


「そ、そんな事より起きたなら離れてくれ!」


 さもないと爆弾が爆発するぞ!? もしくは暴発する!! 退避! 退避ぃぃー!!


「今更そんな事を言うの? 私を射的の的みたいにして、あちこちに乱射してたのに」


 が…… じゃなくて乱射だなんて、そんな事…… うん、したわ、そりゃあもう、まるでマーキングするかのような勢いで乱射してたわ。


「ふふふっ、懐かしいね…… あっ、そうだ…… そんなに暴発しそうならせっかくだし的当てする?」


 サラ!? な、何を言ってるんだ!? って、おい! 起き上がって布団を捲るな! そしてティンの状態を目視するな!


「どうせ的当てするなら、カイトくんが毎日見ちゃうくらい好きな『真印まいん』のコスプレをしてあげよっか?」


 ま、毎日なんて見て…… 何ぃ!? 真印に的当てだと!? そんな精神年齢三十歳の男がそんな事するわけ…… 真印コスプレをしたサラと的当て…… 真印とお祭り…… わっしょい、わっしょい……


「ふふっ、準備するから待っててねー」


 お、おい! 俺は何も言ってないぞ!? ……拒否もしてないけど。


 そしてサラは俺の目の前で制服から真印の布面積少なめのコスプレ法被に着替えて……


「はい、私はベッドの上でポーズを取るから、カイトくんはセルフサービスで好きな時に好きな的に当ててね?」


 セルフサービスなの!? でも、今の俺がサラに手を出すのは…… やっぱり……


 でもこれじゃあセルフメンテナンスを見せつける形になっちゃうんじゃないか? とも思ったが…… 俺の意識とは別に、息子は『早く的当てしたーい!』とはち切れんばかりに張り切っている。


 こんな事…… こんな事ぉ……


「ふふふっ『日本の祭りはぁ…… 世界一ぃぃ……』」


 うぅぅっ!! 的当てぇぇ…… 


 …………

 …………


「あん! すっごぉぉい…… 大当りぃぃ……」


 …………

 …………



「ふぅ…… 顔とか胸がベトベトだったけどさっぱりしたぁ…… って、カイトくん、どうしたの?」


「いや……」


 あまりにも的が良すぎて、我慢出来なくて的当てしちゃった…… 

 やっぱりサラは俺のツボを知り尽くしているんだ……  まさかセルフサービスにセルフサービスで対抗してくるなんて……


 そしてセルフサービスとはいえ、かなり暴発気味になってしまい、的当て終了後は何だか賢い者になった気分だった。


「ふふふっ、疲れたでしょ? 飲み物でも飲みながらゆっくり休んでてね」


 でも、距離のある特殊な的当てになってしまったが…… タイムリープ直後よりはお互いに心の距離が近くなったようにも感じた的当てだったな。


 そして賢い者になって正常な思考に戻ったのか、さっきまで起こっていた不思議な恐怖体験の事をようやく思い出してきた。


「なぁ、ところで佐世はどうなったんだ?」


「んー、別に佐世さんは何ともないんじゃないかな?」


「じゃあ、あの黒いモヤモヤは?」


「……消えたよ」


「違う…… あの黒いモヤモヤは一体何なのかを知りたいんだ」


 すると風呂上がりで薄着のサラはそのまま俺に近付いてきて、座っていた俺の横に座り、俺の手を取って握りしめてきた。


「カイトくん、私はね…… カイトくんと平穏に暮らせるならそれだけで幸せなの…… だけど今は平和を脅かすような事が私達の周りで起きやすくなっているの、でもその理由をカイトくんは詳しく知らない方が良いと思う…… だけど心配しないで? 私とニャン太郎ちゃんでカイトくんを守るし、絶対解決してみせるから」


 サラ…… 何年一緒に暮らしていたと思う? サラが俺を庇っているような言い方をしているが、それはつまり…… 俺にも関係ある話って事だよな?

 でも関係があったとしても俺には何も出来る事はない…… と言いたいんだろう。


 そういえば黒いモヤモヤから現れた方の佐世が『神様』に力を貰ったとか言っていたよな…… サラも『神様』から力を貰っている…… 確かにあんな力、只の人間である俺じゃあ敵わないし、きっと手も足も出ない。


「だからカイトくんは自分や家族の方の優先して、後悔しないように生活してね?」


 サラ…… 


 タイムリープして少し違う未来になり始め、心の傷は少しずつ癒えて余裕が出てきたからようやく気付いて言える事だけど……


 たくさん傷付けて、たくさん悲しませてしまったけど、俺にとってサラだって…… 家族と同じくらい大切な存在なんだよ。

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