過去からの刺客

 ◇



「先生、進路の事で話ってなんですか?」


「あー、吉ヶ江か、あの進路調査票の事なんだかな…… あれは何だ?」


「何だって言われても…… 進路調査ですよね?」


 進路調査だから私の進路希望を書いただけなんだけど…… まさかそんな事のためにわざわざ私を呼び出したの? 


 せっかくカイトくんが私を避けるのをやめて一緒にいてくれる時間が増えてきたのに、下校時間だってカイトくんと過ごす大切な時間なんだよ? 


 先生が私とカイトくんの邪魔をするつもりなら私にだって考えが……


「そう、進路調査だ、なのに吉ヶ江…… 第一志望から第三志望まで全部『お嫁さん』って何だよ!」


 えっ…… せっかくカイトくんとやり直すためにタイムリープしたんだよ? 今度こそ私はカイトくんのお嫁さんになりたいの! 志望とかじゃなくて絶対になってみせるんだから!


「お前なぁ…… 学校は就職か進学か聞きたいだけなんだよ、吉ヶ江のプライベートな志望を聞きたいわけじゃないの!」


 えっ…… カイトくんに永久就職希望なんですけど! 終身雇用して欲しいんですけど!


「はぁ…… たまにいるんだよ、こんな頭がお花畑のやつ」


 お花畑!? まあ、女神様の所でこの世のものとは思えないくらい綺麗なお花畑は見てきたけどね。


 まあ進路調査票はおふざけで書いたけど、おふざけ無しなら進学する気はないから就職かな?

 その前にカイトくんとの夢のような明るい未来に向かうためには、女神様との約束を果たさないといけないから…… 


「すいません、じゃあ普通に就職って事にしておいて下さい」


「あ、ああ…… 吉ヶ江、何か雰囲気が変わったな? 良い意味でだが大人っぽくなったというか……」


 そうかな? でも中身は三十歳過ぎているからね…… 今の先生よりも中身は年上だよ?


 ところで先生…… 人の心配をしてないで自分の心配をしたら? 早く結婚を決めないと、今から数年後にプロポーズの返事をおあずけにされて待ちきれなくなった彼氏さんに振られちゃうから気を付けてね?


 私があれこれ言うと世界に影響が出ちゃうし、私はカイトくんと平穏に暮らせるなら周りがどうなろうと関係ないから……


「ふふふっ、では失礼しまーす」

 

 先生、仕事が楽しいのかもしれないけど、今のうちからしっかり話し合ってお互いの気持ちを確かめ合わないと…… 最悪私達みたいな事になっちゃうよ?

 

「あっ、彼氏さんと末長くお幸せにー」


「よ、吉ヶ江!? な、何故私に彼氏がいる事を知っている!」


 あらっ? あぁ…… そうだった。

 今から六年後くらいに開かれた同窓会に先生が来て、そこで『彼氏にフラれた』ってやけ酒をしていた時に初めて聞いたんだったっけ? ……てへっ!


 ほんの少し意識するだけでも未来が変わっちゃうかも…… でも、これくらいなら大丈夫だよね?


 さて…… テストも終わったしカイトくんのお家に遊びに行こうかな? お義母様ともおしゃべりしたいし…… ふふふっ!


「お嬢ちゃん、ちょっといいか?」


「わっ! ニャン太郎ちゃん? ビックリしたぁ……」


「いきなり声をかけてすまない、ただカイトの事でちょっと気になる事がある…… カイトが佐世と接触した」


 えっ…… あのちょっと容姿を褒められただけでホテルに行くような尻軽女と接触?

 でもカイトくんが私の前に現れないということはポロリンとはしてないみたいだけど…… 凄く気になるね。


「カイトくんがどこに行ったか分かる?」


「ああ、学校近くの公園に向かったみたいだ」


「ふふふっ、じゃあ私達も行ってみよっか」


「ああ、何だか嫌な予感がするぜ」


 カイトくん、何度も言うけど他の女にポロリンちょしたらボンしちゃうんだからダメだよ? 


 でも、もしもあの尻軽女がポロリンとは別の事でカイトくんに接触してきたのなら…… ニャン太郎ちゃんの嫌な予感が的中しちゃうかも。




 ◇




「早速だけど…… 城ノ内、死んでくれないかな? あははっ!!」


 さ、佐世っ!? いきなり何を言い出すんだよ…… 


「城ノ内のせいで…… 私の人生滅茶苦茶になったんだから!」


「はっ? 俺のせいで? 佐世とは只のクラスメイトで、そこまで接点はなかったはず……」


 んんっ? よーく佐世の姿を見てみると…… 佐世の後ろにどす黒いモヤモヤっとした『オーラ』みたいなものが見えるような気が……


「そうね…… まだ、特に何もなかったわ…… でも! あのが開かれた日から私の人生は……」


 ちょ、ちょっと待て! ? それってどういう事だ? 


 俺達は高校生で、佐世とは小、中学は別。

 それで同窓会って…… 俺と佐世が参加したとなれば、心当たりがあるのはで開かれる予定の同窓会しかないはずだぞ!?


「そう…… 私達が参加した、この時代からしたらで開かれた同窓会の話よ! あの時、同窓会を抜け出して城ノ内とホテルに行ったせいで私は……」


 さ…… 佐世? まさかお前もタイムリープを?


「私は…… 浮気がバレて、あの時いた同じ会社の彼氏に振られて、会社で噂されるようになって会社に居づらくなって仕事を辞めたの! そして仕事が見つからなくて仕方なく夜の仕事を始めて…… それから私の人生は滅茶苦茶よ!! それも全て城ノ内のせい! だから…… 死んでちょうだい!!」


 うわぁぁっ!! 佐世の背後から出ていたどす黒いモヤモヤが更に大きくなって…… 佐世の身体を包み込んだぞ!?


「あははっ…… 死ぬ直前にに貰ったこの力で……」


 ひぃぃ…… バ、バケモノ…… みたいにケバいメイク! これ、高校生の佐世じゃなくて…… 年齢が五十代くらいの佐世か!?


「失礼ね! これでもナチュラルなメイクで、三十五歳よ!!」


 えっ…… 同窓会で佐世と会ったのって…… 二十六か七歳の時だよな? 

 あの時は年相応の顔だったけど、七、八年でだいぶ老けたな……


「むきぃぃぃーー! 仕方ないじゃない! 夜型の生活になって、毎日ホストクラブとかでお酒をガバガバ飲んでいたら…… って、城ノ内には関係じゃない! いいから死になさい! 必殺…… 『テクノビート』!!」


 色々ちょっと待て!!


 俺のせいとか言っていたけど…… ホストクラブ? ガバガバ酒を飲む? それって本当に俺のせい!?

 しかも必殺技っぼく叫んでいたけど、只のグーパンチじゃん! 危なっ!


「かわすんじゃないわよ!! ははっ、仕方ないわね、説明してあげる…… 神様から貰った私の力を!」


 あ、ああ…… 何も言ってないのに説明してくれるんだ…… でも、漫画とかでよくあるけど、何で倒そうとしている敵にわざわざ自分の技を説明したりするんだろうね? 


「『テクノビート』…… それは拳で触れた相手をテクノのビートで身体の内側から何度も刺激して破壊…… 『ブレイク』させる、恐ろしい技よ!」


 ふざけた名前だと呆れていたら、思ってたより恐ろしい技だったぁぁぁーーー!! ひぃぃー、テクノでブレイクしちゃうぅぅー!!


「次は外さないわ…… 今度こそ……」


 だ、誰かぁぁぁ、助け……







「やれやれ、どうやら間に合ったみたいだな」


「ふふふっ、おまたせ、カイトくん」


 そ、その声は…… ニャン太郎と…… サラ!?



 ってサラ…… 何だよその、片手でブラウスの胸元をガバッと開けて立つ奇妙はポーズは…… たわわの谷間が丸見えになって眼福になっちゃうからやめて!!


 あと、ニャン太郎までサラの真似をしてポーズを取らなくてもいいんじゃない? 胸元といってもモフモフな毛しかないぞ?

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