ニャン太郎(背後霊)との再会

「久しぶりだな、カイト…… ずいぶんと若返ったじゃないか」


「ニャ、ニャン太郎…… お前、どうして……」


 色々言いたい事がある!

 まずニャン太郎は俺の家で飼っていた、頭のてっぺんだけ帽子を被ったように見える黒毛で、それ以外の毛は真っ白でモフモフっとした、青い瞳のただの可愛らしい猫。

 それなのに目の前にいるニャン太郎は、モフモフのくせに自らの肉体の美しさを表現するかのような変わったポーズを取りながら後ろ足だけで器用に、そして奇妙に堂々と立っていて、しかも人間の言葉まで喋っている…… 


 でもサラがさっき言っていた『タイムリープ』とやらが本当なら、この時代のニャン太郎は実家で生きているはず! なのにと言っているが…… どういう事だ?


「ははっ、実は俺はカイトが言っているこの時代の『俺』とは違う、親父さんとお袋さんが死んでからお前達に引き取られた方の俺だ」


「そ、それってまさか……」


 ニャン太郎は俺とサラが同棲してからも実家でずっと暮らしていたが、両親が死んで実家に誰もいなくなってしまったから、俺達が同棲していた家へと連れて帰って来たんだが、その一年後の俺が二十五歳で、ニャン太郎が十四歳の時にニャン太郎は死んでしまったんだ……


 朝起きたらどこにもいなくて必死に探していたら、タンスの陰で横たわり冷たくなっていて…… 最後の、唯一の家族を…… 俺は……


「本当はゆっくりと眠るつもりだったんだがなぁ…… お前がこのお嬢ちゃんに酷いことをしていたという話をネコ耳に挟んで…… カイトを再教育するため、神様にお願いしてお嬢ちゃんの背後霊として甦らせてもらったんだ」


 それを言うなら『小耳に挟んで』だろ?  いや、猫だから合っているのか。


 それよりも俺が酷い事をしたから再教育? おいおい、俺はサラに刺されて死んだ…… はずなんだぞ? 俺の方が酷いことをされているんだ! 再教育するならサラにしてくれ!


「いいや、していたよ、それこそ再教育してやりたいと思うくらいにな…… それと死んだらタイムリープは出来ないらしいから、死ぬ直前にお前達は神様に救われているんだ、だから実際には死んでないから未遂になる」


 未遂だろうと刺されたのは事実! そんなサラをニャン太郎が手助けするなんておかしいだろ!


「ふふふっ、ニャン太郎ちゃん、いいのよ、カイトくんは自分が置かれている状況が分かってないんだから、とりあえず…… ゆっくり一つずつ教えてあげましょ?」


「やれやれ…… そうだな、じゃあお嬢ちゃん、物分かりの悪い俺の弟の教育、頼んだぞ」


 おい、ニャン太郎! さっきから気になっていたんだけど、何で俺が『弟』なんだよ! ニャン太郎の方が年齢ならだいぶ年下だろ!?


「知らないのか? 猫で十四歳といえばかなりのジジイだ」


 うっ! 確かにそんな話を聞いたことはあるが、だけどそれでも…… 子猫の頃から可愛がって、お世話をしていたのは…… 俺だぁー!


「どっちでもいいが俺はお嬢ちゃんの味方になった、だから俺に助けを求めても無駄だからな…… とにかく、神様にタイムリープさせてもらって人生をやり直せるんだ、しっかりお嬢ちゃんと自分に向き合って…… 後悔しないように生きるんだぞ?」


 そう言って、ニャン太郎はサラの背中側に回り、スーッと消えていった。


「さて…… じゃあ話の続きだけど、こうしてカイトくんが私の前に急に現れたって事は…… カイトくん、私以外の女とエッチな事をしようとしたんだね」


「……ああ、そうだ」


 それで、いざ自慢の息子(当社比)を使おうとポロンしたら…… ティンしてボンッ! だったんだ……


「ふふっ…… だから『めっ!』って言ったんだよ、カイトくんはこれから私以外の女の前でティンをポロンしたら…… ティンが爆発しちゃうようになったからね」


 …………はっ?


「私、もう我慢しないって言ったよね? 今まで散々私以外の女に使ってきたんだからもういいでしょ? その分…… 我慢出来なかったら私が全部受け止めてあげるから安心してね」


「いや、ちょっと待て! 言っている意味が分からない! えっ…… それじゃあさっき爆発したのは…… サラのせいか?」


「そうだよ、正確にはニャン太郎ちゃんの能力だけどね」


 ニャン太郎? ニャン太郎の能力って…… またファンタジーな事を言い出した! 時間を止めるとか、ティンがボンするとか…… サラ、頭がおかしくなったのか?


「ニャン太郎ちゃんには能力を使用する事を意識しながら肉球で触れた物に爆弾をセットする能力があるの、ニャン太郎ちゃんは既にカイトくんのティンに触れているからね、だからカイトくんのティンには今、爆弾がセットされているわ!」


 えっ…… 俺のティンに爆弾が? 


 まさか! 今朝ティン辺りに痛みが走った、あの時にニャン太郎が触っていたのか!?


「そして私の能力、時間を操る力も合わせて使用して…… カイトくんが別の女とエッチな事をしようとポロンした瞬間、センサーみたいなものが発動して爆発、そして時を巻き戻して私の前に現れるようになる爆弾をセットしたのよ!」


 そんな危なっかしい物を自慢の息子(当社比)に付けやがって! ……ない! ないぞ!?  どこに付いているんだぁぁぁ!!


「ふふふっ、そんな慌ててズボンを下ろしてじっくり見ても無駄無駄だよ? 爆弾は特殊な能力だから見えないし、ニャン太郎ちゃんじゃないと無効に出来ないの、だから一生そのまま…… だけど私に使う分には作動しないから心配しなくても大丈夫だよ! 私が触れても爆発しないでしょ? ほら…… ふふふっ」


 はぅっ! どさくさに紛れてティンをタッチするな! ビクッとしちゃったじゃないか!


「もう! 相変わらず敏感なんだから…… 可愛い」


 相変わらずって何だよ…… 

 確かに敏感だが継続率は良いんだぞ!


「ちょっと何言ってるか分からないけど…… ふふっ、カイトくんはおサルさんだからね、特に高校生の時なんて毎日のように…… ふふふっ」


 誰がサルだ! ……って、いつまでタッチしてるんだよ!


「えーっ? 使いたかったのに使えなくて残念だったんでしょ? せっかくだし私が…… あっ! この時代の私はまだ新品未開封だったんだ! 大事に扱ってね?」


 誰がサラなんかと! ここは……


「あっ! カイトくん、どこ行くのー!?」


 どこって、そりゃあ……


 逃げるんだよぉぉぉぉー!!



 あの大人しいサラの豹変っぷりやニャン太郎が喋ったり、そしてティンが爆発したりと、色んな事に驚き過ぎた俺は混乱してその場から走って逃げ出した。

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