過去に戻って来た? そしてサラとの再会

 俺はサラに◯された…… はず……


「うふふっ、はい、あーん」


「えへへっ、今日の朝ごはんも美味しいよ、ママ」


 なのにどういうわけか俺は生きている。

 しかも何故か高校生時代のような姿に若返っているし……


 

 実家で朝っぱらからリビングでイチャイチャしている、死んだはずの両親。

 周りをよく見ると、壁にかかっているカレンダーは『20◯✕年』書いていて、テレビでも終了しているはずの懐かしい番組が放送されていた。


 本当に今が20◯✕年なら十三年前って事だし…… 俺の年齢は十七歳か?


 しかも俺の部屋には高校時代に俺が使用していた、当時は最新機種だったはずの古いスマホと同じものが置いてある。

 懐かしいな…… ロックの解除方法も一緒だから俺のスマホで間違いなさそうだ。


 うん、やっぱりおかしい…… 一体何がどうなっているんだ?


「廻斗、ボーッとテレビを観てないで早く学校に行く準備をしなさい!」


「そうだぞ廻斗! 遅刻は駄目だぞ!」


 父さんの膝の上に座った母さんがそんな事を言って、母さんを膝の上に乗せた父さんが便乗して何か言っている…… 本当にアンタ達は何なんだよ。


 でもこれが我が家では普通の事だったから、どこの家庭の親もこんな風に仲良くしているんだとずっと思っていたが、よその家庭では両親がこんな仲良くしている方がおかしいと知った時は衝撃的だったな……


 とにかく俺の両親の仲が気持ち悪いほど良いのは置いといて、このおかしな状況を知るためには高校に行ってみるのも良いのかもしれないな。


「はいはい……」


「廻斗、『はい』は一回だぞ」


「そうよ、ハイハイとバブバブはパパの得意技なんだから」


 止めて! 両親のそういう話は聞きたくない!


「えへへー、ママ、それほどでもないよー」


 どうして父さんは照れてるんだよ! 別に褒められるような事じゃないからな! 逆に恥ずかしい事だぞ?


 両親の元気な姿をもう少し見ていたかったが、息子の前でも構わずイチャイチャしている姿を見るのは息子である俺にはキツくて、逃げるように自分の部屋へと戻り、学校へ行く準備を始めた。


 この状況、夢かもしれないし幻覚かもしれない。

 だけどなかなか覚めないし腕をつねってみると痛みがあってリアルだ。

 とにかく今の状況が何もかも分からないし、家を出るついでに高校へも行ってみよう。

 そして懐かしいと思いながら高校の制服に着替えて家を出た。



 『城ノじょうのうち』と表札がある実家の玄関。

 外観も住んでいた頃と同じで、庭には父さんがどこで買ってきたのか、二羽のニワトリの置物がポツンと置いてあった。


 今ではマンション建設のために取り壊してしまったご近所さんの古い家や小さな商店、当時はあまり整備されていなかった公園など、やっぱり外もではなく、高校生の頃に見ていた景色が広がっていた。


 どれもこれも懐かしさのある通学路の風景を眺めながら一応高校へと向かう。

 俺が通っていたのは『風前かざまえ高校』という高校で、ランクは中の下くらいのごく普通の高校だった。


 俺は家から近いからとこの高校を選んだんだけど…… そういえばサラとは同じ高校だったから、この時代のサラも存在するって事だよな? 


 今が20◯✕年の五月…… ということは、この時の俺はまだサラと出会っていないはず。

 スマホの連絡先にサラの名前もなかったし、それは間違いないと思う。


 もしこれが夢だとして、ここまで忠実に再現するか? と疑問ではあるが、サラに出会ってないのならチャンスだ…… 図書室には絶対に近寄らないでおこう!


 サラとの出会いは暇潰しのために行った図書室だったもんな……

 一人でポツンと本を読んでいたのが気になって、話しかけたのが最初で……


 三つ編みメガネといわゆる『ガリ勉』のテンプレのような姿をしていて、でも近くでよく見ると…… 俺好みの可愛らしい顔をしていたから、人生で初めて必死に口説いたんだっけ……


 お互いにゲームやアニメが好きという共通点があって一気に仲良くなった俺達は、図書室以外でも話すようになり…… そして俺から告白をして付き合うようになった。


 そして付き合ってからは…… 初めての彼女だったし、俺も当時は元気が有り余っている男子高校生だったんだぞ? そりゃあもう…… すぐにやることはやったよ。


 俺が求めたらサラは恥ずかしがりながらも受け入れてくれて、しかも地味なのに脱げば男の子なら誰もが喜びそうなナイスバディを隠し持っていたので…… 高校時代の俺はそれこそ毎日のようにサラと盛っていた。


 サラもサラで一生懸命尽くしてくれて、しかも勉強熱心だから覚えも早くて、お互いに切磋琢磨しながら楽しんでいたなぁ……  おっと、サラの事はもう忘れなきゃな、もう関わるつもりはないし。


 だって俺を刺すようなヤバい女だからな、もう話しかけたいと思わない。


 だけど…… 今の俺は高校生だもんなぁ…… サラとのアレコレを思い出しただけでになりかけている。

 俺は欲望が強めだから尚更だが…… はぁっ、こうなればサラ以外の女を適当に見つけるか。


 そんな事を考えているうちに校門の前まで辿り着いた…… のだが……


 うわっ! な、何で…… 校門の前にサラが立っているんだ!?


 あの頃と同じ三つ編みメガネの地味女みたいな姿だったからすぐに分かった。

 周りをキョロキョロしながら立っているけど…… まさか俺を探しているとかではないよな?


 いや、この頃俺達はまだ出会ってない。

 俺の顔すら知らない可能性だってある…… よし、見ないようにしながら通り過ぎよう!


「あはっ、見つけたぁ! ……カイトくん、ふふふっ」


 ひぃっ! み、見つかったぁぁー!! 


 ……………………んっ?


 


「な、な、な…… 何で……」


「ふふっ、この頃はまだ出会ってないはずなのに『何で?』って思うよね? でも…… ふふふっ、私達はお互いを知っている…… しかも記憶はまでちゃんと残っているもんね?」


 そ、そうだ! 俺はサラに包丁で刺されて…… 気付いたら何故か実家のベッドで寝ていて、しかも若返っていたんだ!


「どうしてこうなったか知りたい? ……じゃあ立ち話もなんだし、学校サボってどこかで二人きりで話そ?」


 知りたい…… 本当は知りたいが…… それ以上にもうサラとは関わりたくないんだよ!


 俺の事を知っているサラに話しかけられた事に驚き過ぎて、一瞬怯んで立ちすくんでしまったが、俺はくるりと学校とは反対を向き……


「うわぁぁぁーーー!!」


 ヤバいヤバいヤバい!!


 刺される前に見た、目の光が失われ涙を流しながら笑っていたサラの顔と、校門で待ち伏せていた若くて地味だが、少し大人びたようなサラの笑顔が重なり、俺は慌ててその場から走って逃げ出した……


 はぁっ、はぁっ、はぁっ…… ここまで逃げれば大丈夫……


「ふぅっ…… 『やれやれ』ってやつかな? ふふっ!」


 えぇっ!? きゅ、急にサラが俺の目の前に現れた!? どういう事だ!?


「それはね…… カイトくんが私の前から逃げ出した瞬間から十秒…… 私は時間を止めて追い付いただけだよ」


 はぁっ? じ、時間を止めた? 何をバカな事を言ってるんだ? サラ…… ヤンデレに覚醒して頭でもおかしくなったのか? 


「もうカイトくんは私から一生逃げることは出来ない! 私から離れようだなんて…… 無理無理ぃぃぃっ!!」


 うわぁぁっ!! お、俺に近寄るなぁぁー!!


 そして…… ◯されたと思って目覚めた後、俺と同じように高校生くらいまで若返り、知り合った頃のように地味メガネ女に戻っていたサラに…… 


 再会してすぐ、『ドキューンズキューン』という胸を打つような効果音が聞こえてきそうな、長くて熱いキッス(ベロ入り)をお見舞いされた。

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