道半ば 一人読み朗読用
明るく、前を向きこの一本道をひた走る。そんな人生に憧れる。ただ、私は知っている。私の前を歩く人たちの背中には無数の傷があり、それを隠していると。
最初は私の周りにも多くの友人が一緒に走っていた。一人、また一人と、楽で成功が約束された脇道に抜けていった。気づけば一緒に走っている仲間も数える程度だ。走っているのにもはや歩いている速さと大差ない。それでも足を前に前にと動かす。道中先を走っていた人を抜かした。その人はもう立ち止まっていた。動けないようだ。私は声をかけるか悩んだ末に「がんばれ」とだけ言い残し先に進む。
私は後どれくらい走ればいいのだろうか?そんな疑問に先人は一瞬振り返り、苦々しく「一生」と短く答え、また走り始める。道の脇から常に誘惑がささやかれる。「こっちは楽だぞ」「そんな無意味なこと続けて何になる」時には石も投げ込まれる。私はそれら全てを無視して振りきる。そしてある時気が付いた。道の脇に居たのは、最初に居た友人だったことを。
走っているのか、歩いているのか、怪しいくらいの速度で進み続ける。周りにはもう誰もいない。それでも道は続いている。「もう、いいかな・・・」私も楽そうな平坦な脇道に逸れようと横を向く。その時かつて私が追い越した人が後ろに見えた。その人はあの時の私と同じように「頑張れ」とだけ言い残し過ぎ去っていった。
ここまで来てわかったことがある。前を歩いていた人たちは、誰かのために背中の傷を隠していたわけではないと。自分自身のために傷を隠し、ただただ、前を向いていたんだと。まだまだ先は長そうだが、私はまだ足掻き続けようと思う。
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