妹みたいなギャルに「はじめての相手はお兄ちゃんがいい」と誘われた

丘野雅治

第1話 それってセックスするってことだよね

 俺が大学から帰り自分の部屋に入ると、JK制服姿のギャルがベッドの上でマンガを読んでた。


「おかえりなさーい」


 うつ伏せになり膝から先をブラブラさせて、短いスカートから下着がチラチラ見える。俺にとって妹みたいな存在の愛衣だ。俺より3つ下の高2で、女子高に通ってる。


「ただいま。そのマンガのキャラデザ好みだろ」


「うん、夏のアニメ化楽しみだね」


 6月の外の気温は暑くて25度を超えてた。汗だくのTシャツが、エアコンの入ったこの部屋では冷たく感じる。俺は愛衣を気にせずTシャツを着替える。上半身裸で着替えていても、愛衣は気にせずマンガを読み続けてる。


 俺は椅子に座る。本当はズボンも履き替えたいけど、流石さすがに愛衣の前で下着姿になるのはやめた。


正兄まさにぃ、大学から帰るの遅くない? もう5時半だよ」


「4限の授業終わってからすぐ帰ってきてるよ。大学の授業って遅いんだよ。5限なんて7時までやってるんだから」


 愛衣がベッドの上でゴロンと寝転がえる。これまでは形のいいお尻が強調されてたけど、今度は仰向けになってブラウス越しで胸と谷間が強調される。


 愛衣が不満げな表情で不平を漏らす。


「去年はほんと授業多かったよね。せっかく学校の帰りに寄っても正兄の帰り遅すぎ。毎日帰る時間違うし、毎学期授業違うし、大学生ってもっと暇かと思ってた」


「ごめんな」


 俺のせいではないと思いつつも、つい謝る。愛衣の表情も緩む。


 愛衣がスマホで確認しながら聞いてくる。


「前期の覇権アニメの映画化って土曜からなんだよね。正兄のスケジュールどう?」


「あれ楽しみだよな。もちろん一緒に見にいくつもりで土曜あけてあるよ」


「じゃあ予約入れちゃうね。いつものショッピングモールのシネコンでいいよね?」


 愛衣がスマホを操作する。


「……昼すぎの2回目でいい? 少し前の方の席になるけど」


「まかせる」


「うん……予約できた。映画の後どうする?」


「俺は1日あいてるよ。とりあえずショッピングモールで昼御飯たべるかな。その後どうしよう?」


 愛衣が体勢を変えてベッドへ腰かける姿勢になる。表情を見ると緊張? してるみたいだ。愛衣にしては珍しい。


「どこか行きたいとこ、あるのかよ?」


 愛衣は答えずに学校のセーターを着る。ブラウスの開いた胸元が程よく隠れる。今まで読んでたマンガと、ベッドの上にある続きの数冊を手に持つ。


「これ借りてっていい?」


「うん」


 俺が返事すると愛衣はそれを鞄の中に入れる。


「今度、来る時に返すね」


「急がなくていいよ。来季の覇権候補だからゆっくり楽しめ」


 俺は愛衣の頬がほんのり赤いのに気づく。6月の日の入りはもっと遅いから、窓からの日差しのせいではない。


「正兄と行ってみたいところあるんだけどね……」


「うん」


 愛衣が、しばし黙り込む。


 俺は奇妙なを待つ。アニメの聖地にでも行きたいのかな。


「……ラブホ……」


 愛衣の声が緊張でかすれてる。


 今度は俺が絶句する。あまりにも意外だ。ちょ、ちょっと待て。ラブホって、あの、ラブホ、だよな。


 愛衣が沈黙を破る。


「嫌ならいいから。気にしないで。忘れて」


 愛衣はそう言うと、鞄を持って部屋から出ていった。

 

 俺は呆気あっけにとられて、身動き一つとれず、何も言えずにいた。



     ※



「それってセックスするってことだよな……」


 ベッドの上に寝転んで独り言をつぶやいた。

 愛衣の体温とフレグランスの匂いがベッドには残ってたが、嫌じゃない。


 愛衣とは小学生の頃から10年ほど仲良くしてるけど、今まで恋愛の関係になったことはない。


 俺と愛衣って何なのかなって、頭の中にあれこれ浮かんでくる。


     *


 俺の母親と愛衣の母親は、同じ学校の同級生だった。私立の中高一貫の女子校だ。大学も学部違いで一緒。


 俺が小5の時に、愛衣の家族がウチの近くに引っ越してきた。小さな川を挟んだ隣町で、学区は違うけれど歩いて15分くらいの距離だ。


 俺も愛衣も一人っ子だ。ウチの親が共働きで忙しくて、小学生の頃は俺が愛衣の家によく預けられた。

 その頃の3歳差は大きくて、小5の俺に対する小2の愛衣は、妹のような存在だ。

 一緒に遊ぶ関係というより、遊んであげる感覚だった。


     *


 俺が中学になると、愛衣の家に預けられる回数が減り、家に1人でいることが増えた。

 俺は運動や友達付き合いが得意なタイプじゃない。だからゲームやアニメ、そして特にラノベにハマり1人の時間を楽しんだ。


 愛衣も小学校の高学年になって、中学受験で母親の母校を目指した。塾へも通いはじめて勉強で忙しくなった。

 母親たちの母校は、偏差値が上がり難関校になってた。愛衣はもともと成績が良かったけど猛勉強させられてた。


     *


 俺は偏差値それなりの高校に合格できて高校生になる。

 愛衣も無事に目標の女子校へ合格できて中学生になる。


 そして今度は愛衣が、ウチに預けられることが多くなった。

 原因は愛衣の父親の浮気だった。母親が受験に入れ込みすぎたのが、浮気の理由みたいだ。


 中1で愛衣の父親の浮気が母親にバレた。中2で母親が働き始めた。そして、中3になる春休みに離婚した。


 はじめのうちは、夫婦で話し合うために、愛衣はウチに預けられてた。

 中2以降は、家に帰っても独りなので、学校帰りや土日にウチに来るようになった。


 中学生の愛衣は真面目な子だった。

 入学後も勉強に熱心で好成績を維持してた。

 見た目も今みたいにギャル風じゃなかった。


 愛衣はウチに来ても、まず勉強をしてた。

 宿題ができてから、一緒にアニメを見たりテレビゲームしたりする。


 俺はラノベ好きがこうじて、高校では文芸部に入部してた。

 愛衣にもラノベを勧めたりラノベ原作のアニメを一緒に見たりした。


 一緒に遊びながら、学校や友達の話なんかもした。

 愛衣から聞いてると、学校での友達との関係は居心地が悪そうだった。

 ウチへ来る頻度からいっても、そんな気はしてた。


 同じ学年の子の親に母親の同級生がいて、親経由で父親の浮気や離婚の話が伝わってしまった。

 私立の中学なので、裕福で保守的な考え方の家が多い。浮気や離婚が非常にネガティブに扱われるのが、きつかったらしい。


     *


 そして去年になり俺は大学生になる。ラノベ好きの影響でコンテンツ業界へ就職が希望なので、そういう勉強ができる学部を選んだ。

 愛衣も附属の高校へ進学した。


 俺が大学生になって、愛衣とすれ違いが多くなってしまった。

 高校と違って夕方まで授業があったり、家に帰る時間も毎日変わったりする。テストの時期も高校と違う。


 入学してすぐは、友達に誘われてサークルへ参加してみたりもした。

 そんなわけで愛衣がウチに来れば、いつも俺がいるわけにいかなかった。


     *


 愛衣の方も高校になり変化があった。

 高校から入学してきた帰国子女の子たちと友達になった。


 愛衣の女子校は、高校からの入学者に帰国子女枠があって10数名が入学してくる。


 高校にとって帰国の子たちは、英語の学力の向上や大学への進学実績に貢献してる。

 私立大には英語に比率を高めた入試の方式があって、実質的に帰国子女向けの入学枠になってる。

 だから確実に有名な大学へ合格できる。


 ただ英語以外の教科では他の学生に比べて成績が低い。

 女子校の偏差値が高いから、国内で受験勉強してきた子の学力は高い。外国で勉強していて、それついていくのは無理だ。


 帰国の子たちは、後から入学してきて学力にも違いがあるから、自分たちだけで仲良くなる傾向があるらしい。


     *


 愛衣は、先生に頼まれて帰国の子に勉強を教えるようになった。

 成績が優秀で部活にも参加せずの愛衣には適役だ。

 それが仲良くなったきっかけだ。


 帰国の子たちは、愛衣にとって居心地が良い友達になった。

 海外育ちの子たちは、離婚が珍しくなかったり、浮気されるのが恥とか我慢すべきなんて考え方がなかった。


 その仲良くなった帰国の子たちが、制服の着方やメイクなどがギャル風だった。

 海外育ちのファッションセンスのせいもあるみたいだ。

 その影響で愛衣の雰囲気も、この1年でギャル風になった。


 愛衣にとって付き合いやすい友達ができて良かったと、俺は思ってる。


     *


 俺も大学2年になり大学の生活に慣れてきた。

 去年はサークルの友達と遊んだりも多かったけど、近頃はまた家にいることが増えた。

 愛衣も、帰国の友達はできたけれど、アニメやゲームの話題は俺が相手の方がいいみたいだ。


 俺は今まで彼女ができたことがない。

 大学でも飲みサーの中のオタクグループと友達になっただけで、彼女ができる雰囲気じゃなかった。


 愛衣も高校2年生。

 彼氏が欲しくなった、ということなのかなぁ……。


 俺にとって愛衣って、妹みたいな存在だと思ってたんだけど、なんなんだろ。

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