第12話 街にいるようだったよ…
風が復活してから一か月後…。
僕らはエネルギー省発電局の見学に行った。
説明の後、カッコいい長身の技術者に質問した。
その人は男から見ればちょっと嫌味な人に見えるのに、周りの女子の小さい声が、奥さんがいるかどうか聞いて…と聞こえた。
勿論僕はそれをあえて無視した。
「異常気象の時に上に出たのですか…?」
「ああ、出たよ。整備があるからね…」
「どうでしたか?」
「どうって? 仕事はいつも通りさ…」
そんなことじゃない。
「仕事は大変だと思います」
大人の扱いは難しい。
「その…風のない地上はどんなっていう質問なんです…」
大人は水を一口のみ、ちょっと考えた。
「うん…そうだね…」
難しい顔をした。
「やることはいっしょだからな…命綱を付けて、工具もワイヤーで付けて」
困った顔をしている。いい言葉が思いつかないようだ…。
「う~ん、しいて言うなら…」
ニコっと笑った。なにかぼくら“子供”にもわかるような言い方を見つけたようだ。
「そう…なんと言うかな…」
今度はカッコよく笑った。周りの女子の顔が一斉に輝く気配を感じた。
「まるで…街にいるようだったよ…」。
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