第5話 逆質問

「建物だって丈夫だし、人はその中にいればいいのではないですか? 」

 教師はわざとらしく大きくうなずいた。


「その中にいれば生きられますね…」


 そして、ニコっと笑ってから生徒を見つめた。

「ところで君は今朝、何を食べたかな? 」

「パンです」


「そうか…そのパンはスーパーかパン屋さんで買ってきたよね…」


 うなずく生徒。

「スーパーはパンを工場から運んでくるし、パン屋さんは原料の粉を粉屋さんから持ってくる…」

 立ったままの生徒。


「今のように地上に風速三十メートルの風が吹いていたら普通のトラックや電車じゃ運べない…小麦のない国だったら車や船で粉を運んでこなければいけないけれど、そんな風だったら無理だ…」

 うなずく生徒。


「生きられるのと生き続けられるのとは違うんだ…その時地上では餓死者もでたんだよ」

 生徒みんな沈んだ顔をした。


「政府、世界はやっと動きだした…」

 軍隊のトラックが食糧を運ぶ写真、空母が戦闘機の代わりに真水のタンクを甲板に満載して走る写真。

「その力のほとんどが救助に向けられた…食糧の備蓄とか…」


 倉庫に山積みされた毛布、食糧、医療品の写真があった。

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