第22話 ハブにする
○○○
風呂から上がったガラガラを、夢宙は興味津々で囲った。
不動のガラガラの周りを、夢宙は太陽の周りを回る地球のようにグルグルと回っている。
「ガラガラの髪の毛ふわふわだ〜! 三つ編みじゃないと印象変わるなぁ〜!」
「ほう」
「そう言えば、ガラガラの髪の毛って音鳴るよね? ガラガラ蛇の尻尾みたいな感じで。今は鳴るの?」
「鳴らない」
「……ガラガラの髪は集合したときに限り、ガラガラ蛇の尾と同様の効果を得る。一本一本が独立した状態では、威嚇の音は鳴らせない」
サザナミの説明に、夢宙は「そうなんだ!」と素直に驚きを伝える。
そしてガラガラに屈むように言うと、ガラガラの髪の毛に手を伸ばした。
「人間と変わんない感触だー」
「三つ編み状態にすれば硬化する。そのときにも触れてみるといい」
「な、何ぃ⁉︎ そうとなれば、早めに髪の毛乾かしてよガラガラ!」
「わかった」
逆らうことなく夢宙の言葉通り実行しようとすると、さりげなくサザナミが制し、夢宙に「雨浦も早く風呂に入ってこい」と入浴を促した。
「えー! ガラガラの髪の毛触ったら入る!」
「入浴後に触ればいいだろう。入れ」
有無を言わさぬサザナミの圧に、夢宙は負けてしまった。
敗者の夢宙は「私は可哀想な子です」という顔をしながら、のそのそと浴室へ向かって行った。
(まぁ待つことなく触れるし、有りか……)
脱衣所のドアを閉めて鍵をかけると、夢宙はリビングのある方をジッと見つめてから、浴室のドアを開けてシャワーの栓をひねった。
お湯が出るのを待っている間に、なんとなく洗面所に置いてあるコップや歯磨き粉などにしばらく目を通す。
(ふーん……)
ガラガラは、まだドライヤーを動かしていないようだ。
違和感を抱いた夢宙は、一度浴室に足を踏み入れてから脱衣所に戻り、浴室のドアを閉めた。
足音を立てないように、リビングに近付く。
しかし——何も聞こえない。
夢宙は脱衣所のドアを開け放ち、勢いよくリビングに駆け込んだ。
「おーい! おい! 何しようとしてんだよッ! 二人してさぁ‼︎」
やいやい!と夢宙が乗り込むと、ガラガラとサザナミは夢宙が最後に見た二人の状態のままだった。
「はぁ……やはり無駄か」
諦めたように呟くサザナミに、夢宙は人差し指をビシィッ!っと向けた。
「あぁそうだよ! 二人だけで内緒話しようとしても無駄だぜ! ハブるなよ! 蛇だけに!」
「別に外そうとはしていない。お前が聞く必要はない話をしようとしていた」
「それを判断するのは、わ・た・し! さぁ言ってもらおうか! どんな話をしようとしていたのかぁ‼︎」
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