生やしたい、でも生やせない

真坂 ゆうき 

生やしたい、でも生やせない

 羽ね、今正直に生えて欲しいと思ってる。そうしたらきっと私は自由になる。


 誰も見ていないのだったら、私は迷わずあなたの元に飛んでいくのに。


 もう、あれから何年経った? ひとりぼっちで誰にも見ても褒めても貰えない。


 そんな状況でも私は飛んでいくこともできない。


 いや、違うかな。半分は羽を生やすのが怖いんだ。


 昔あなたに縋りついて泣き腫らしたように、私は心のどこかで飛んでいくのを恐れているんだ。


 飛んでいきたいのに飛べない。飛ばない。なんて自分勝手な生き物だろうね私は。


 だから、今の私の目にはあなたの羽が見えないのかも知れない。


 本当に私が幼かった時、あなたは言ったね。何もない空間を指さして誰かいると言ってたと。何べん見直してもそこには誰もいないのに、手を振ってるって。


 その時の私には見えていたんだ。きっと。


 今の私に羽が見えないのは、もう必要ないから? それとも私が必要ないから?


 そうかも知れない。何も為さず、何を目指すでもなく無為に過ごしたこの何年間。


 いまさら悔やんだって悔やみきれない。どうしてあの時こうしなかったのかと。


 でも、羽が生えてもあの時には帰れないんだよね。


 じゃあ、どうすればいい? 私はあなたに、今から何をしてあげられる?


 あなたには何もできることなんかない。何故なら、今の私には羽がないから。


 だったら、今度会えた時に、こんなことがあったよと、頑張って来たんだよと褒めてもらうためにこっちで一生懸命頑張るしかないよね。私にいつ、羽が生えてくるかは分からないけど。


 向こうで見ていて。手を振って。あなたが見えるように頑張るから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

生やしたい、でも生やせない 真坂 ゆうき  @yki_lily

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ