バトル 怨霊vs安綱 ②

「違うやつか」

 早紀が構える。

「ミコの友達だよ」

 早紀が両断したはずの水死体が水泡音を発しながらくっつき、早紀の目の前で再生していた。

「その人はミコのママになってくれなかったけど、でも今はずっとそばにいてくれるの。ミコと同じにしたから」

 冥は口を引きつらせる。

「ミコとやら、お前、何人殺してきたんだ」

 


 屋上の水たまりから大小様々なサイズの緑色の死体が這い上がり、早紀を中心に渦を巻いていた。

「ママになってくれないからみんなミコと一緒にしたの」

 ミコが何でもないことのように言う。

 だが、その声から悪意は感じない。ミコの声に混じるのは幼少期の児童特有の悪意のない無邪気さだけ。


 冥は傍にいる親子に問いかける。

「あのミコはその娘の中にいたんだな」

「はい。」恵美はおびえながら返答する。

 冥はミコと呼ばれた水死体をにらんだ。

 気に入った親子を連れ去るという報告は間違っていた。

 気に入った親子ではない。ミコは自身の母親になってくれるかもしれない、幼い少女を連れた女を探しているのだ。

 ミコはこの団地で生活する娘に憑依し、母親と生活を共にする。しかし、ミコは団地から出ることはできない。

 親子が団地を離れる時、その偽りの親子関係は破綻し、ミコは狂乱する。そして憑依した娘ごと、母親を異界へ連れ去るのだ。

 そして癇癪を起して親子を殺してしまう。


 悪意を感じなかったのは当然だ。幼い少女の霊が「母親が欲しい」という要求に突き動かされ行動しているだけなのだから。

 霊気や居場所を探知できなかったのも当然だ。生きた人間の中に潜んでいたのだから。冥達は、ミコが別の場所から親子を狙っているものとばかり考えていたのだ。

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