無貌ノ鬼
嵬動新九
序開
戦乱絶えぬ日ノ本の世は、数多の悲嘆と
そして、大阪城が炎に包まれし大戦を幕引きに、歴史にまた一つ…。侍達は戦の終局を見出した。
その新たな時代の始まりを元和偃武と
――しかし、その泰平の世の
月は
向かい合う
何とも哀れな空の宝殿は、崩れる
正面にある
しかし、宝殿と祓殿の間に向かい立つ二人は、立ち昇る炎も火の粉も、崩れ落ちた社殿すら眼中にはない。灼熱の炎が全てを呑み込もうと、機を窺うかのように踊り見下ろす中で、互いの姿をただ一心に正視している。
祓殿を背にする者は、美しい黒髪を
「
そう呟いた青年の瞳の先には、古来より神に舞いを捧げる高舞台があり。その壇上には踊り狂う炎と、
炎を背にし、鬼は
膝にかかる程の、血色の長髪を炎の熱で踊らせ、頭部にある六本の黒角に禍々しい気配を宿す鬼は、炎に身を焼かれる事も
やがて青年は音も無く刀を抜き、額の上までその切っ先を上げた。
「貴様だけは
憐れみを断ち切った決意を宿す青年の言葉に、鬼は唇が失せ牙が剥き出した口元を歪めた。
そして風に煽られた炎は、戦いを待ち
「――イイ……ツラダナァ…!」
青年の容姿を指差し、
鬼の
青年は地を蹴り、無貌の鬼へと刀を振り下ろした。
一章に継ぐ――
©️2025 嵬動新九
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※コピーペースト・スクリーンショット禁止
※この作品はフィクションです
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