追放騎士はあきらめない 〜不要の烙印を押された俺は、ゼロからやり直して這い上がる〜
黒鋼
第一章 剣を執りて証とせよ
第1話 敗戦の後で
「ロック、君は
銀髪の
「……なんだって?」
理解が追いつかず、思考が塗りつぶされる。
俺が絞り出せたのは、その一言だけ。
「聞こえなかったのか? 今日限りでパーティから抜けてもらう」
魔導士──アイスは淡々とそう告げる。
捨てるものを選別するような、
「……冗談だろ?」
わかっていながらも、聞き返さないではいられない。
しかし、アイスの表情は一切ゆるがなかった──
「仕方ないだろう? これでもう三連敗だ」
アイスは静かに首を振った。
彼は学院所属の魔導術式と戦術のエキスパート。
学院──
「俺たちは強くなるために組んだはずだ」
今日は
階級戦とは、
そう、今日も俺たちは敗北した。
死と隣り合わせの
その未知の先に挑む者――
ただの
だが、深層へ挑むためには実力の証明──
「リーダー、約束しただろう? 守ってもらうぞ」
アイスの
その視線は、俺ではなく――隣に立つブレイズへと向けられた。
(……約束? 何の話だ?)
「アイス……考え直してはくれないのか?」
ブレイズの声には迷いがあった。
彼はチームの創設者にして、リーダー。
俺と共に最前線を駆け抜けた
アイスたちは学院から出向してるように、俺たちは騎士団からの出向組。
クラン結成時から一緒に戦ってきた。
「我々がこれ以上、上位の階級を目指すなら、このままでは限界がある。
今回の戦いで、それは明白になったはずだ、ブレイズ」
普段から遠慮のない言動をする彼だが、これほど強い口調で語るのは珍しかった。
「……ロックは十分にチームを守る役割を果たしているよ。ロックがいるからここまでこれた」
投げかけられた言葉に、眉間にしわを寄せるブレイズ。
「わからないのか。状況は既に変化している。先に進まなければ、俺たちは勝てない」
アイスのその一言に、喉の奥が焼けるような感覚がした。
「…………俺の戦い方が、もう通じないのか?」
最前線に立ち続け、仲間を守る盾となる。
――それが、もういらないというのだろうか?
「事実だ。努力で補える限界は、とうに越えている」
短く、鋭い一言。
蒼氷色の瞳は、一片の情もない。
ただ最適解のみを見極め、それを求める目。
これまでの努力を、全てを切り捨てられた気がした。
ふざけるな、と言ってやりたかった。
誰かが前に出ないと、誰かが死ぬ。
それが嫌で――だから、俺が前に立ったんだ。
みんなを守るって、それだけのために――
その末にたどり着いたのが、今に戦法だった。
「これまで乗り越えてきたなら、これからだって」
「それでなんとかなるなら、わざわざこんなことは進言しないさ」
俺が口を挟むとアイスはため息をついた。
「新型が出た今、我々に必要なのは機動力と攻撃力だ。強化された魔導障壁を貫けなければ勝機はない。それができないチームは、例外なく敗退している」
アイスはさらに追い打ちをかけるように続けた。
魔導術式を使うのは、戦術魔導宝珠、コアとシェルが必要だ。
新型──
こっちはまだ手に入れられてない。
けど、これまでの戦績を見れば誰でもわかる。
「それに改善点、お前に思いつくのか? この三連敗を、お前の"工夫"でどうにかできるとでも?」
その口調には、かすかな嘲りすら混じっていた。
「ぐっ」
アイスに痛いところをつかれて、俺は思わず
従来の戦い方は、もう通じないのだろうか。
その不安は俺にもある。
もともと俺の魔導術式の素質はそこまで高くない。
特に事象改変能力――魔導術式が効果を及ぼす範囲は最低値だ。
けど、剣技と身体強化には自信がある。
そして、唯一鍛え上げた防御術式で相手の攻撃を受け止める。
まさに盾役という役割が俺のたどり着いた答えなんだが……。
「聞け、ブレイズ、ロック」
アイスの声には、いつもの冷たさに加えて、何か切迫したものが混じっていた。
「我々が望みをかなえるなら、力を示すしかない」
遺跡の探索許可が出るのは、
「我々は
アイスがチームメンバーを見回す。
ブレイズは下を向き、拳を握りしめている。x
俺たちは騎士団、アイスたちは学院。
混成チームはただの
結果を出せなきゃ、さっさと解散させられる。
わかりきってる話だ。
「今のままでは、近いうちに上位のクラスから転落する。そうなれば、私はクランの移籍も考えている」
「アイス!」
焦ったように大声を上げるブレイズ。
やばいな……。これはマジで詰んでるかもしれない。
もしアイスが抜ければ、チームの未来はない。
うちみたいな小規模クランは、学院から条件付きで装備を融通してもらってるに過ぎない。
学院からの支援が途絶えたら、新型なんか夢のまた夢だ。
いや、今持っている装備すらまともに維持できなくなる。
そうなれば旧型のまま深層に行くどころじゃない。
今の
それだけは、絶対に避けなきゃならないのに――
「おまえたちは古い付き合いだ。情があるのは理解するが、それで勝てるわけじゃない」
アイスは見透かすような目で俺を見てくる。
「だからロック、違うというなら今ここでお前の力を証明して見せろ」
「俺に何を証明しろって言うんだ?」
アイスは無言のまま、自らの
カチリ。金具が噛む。
蒼白の脈動が
「これが新型の
その指が机の上を軽く叩く。俺を試すかのように、ゆっくりと。
「これを使った自分に攻撃を当ててみろ。もちろん、全力でだ」
「……本気か?」
「でなければ納得できまい。それでも、まだ戦えるというなら――証明してみせろ」
アイスは深く息を吐き、迷いのない目で見てくる。
「私は無意味な押し問答に時間を費やすほど暇ではない」
俺はアイスの冷たい瞳を睨みつける。
ここで引けば本当にすべてを失う。
……引けるはずがない。
ここで諦めたら、俺が積み上げてきたものが無駄になってしまう。
「……いいさ。確かめてやる」
アイスの挑発に、俺は乗ることにした。
そこまで言うならやってやろうじゃないか
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