ヒルンド【父2】

「親父、話がある。時間良いか」

 ここ数年、工作室に引き籠もっていた末っ子のヒルンドが、真剣な顔をして話し掛けてきた。

「お前も知っての通り、時間だけは売るほどある。誰も買わんがな」

誰も笑わないグベルナトル族定番のジョークで返し、座るように椅子を示した。


 ヒルンドはどかっと椅子に座ると、こう切り出した。

「親父は、人生を変えたいと思ったことはあるか?」

 えっ、こいつ何言い出しやがる。さっきから、息子の背後に浮いている浮遊荷台が、急に気になりだした。白い布が被せてあるが、結構でかい。まさかコイツ……。


「俺、すごいもんを作っちまったんだ。人生変わるやつ」

 やっぱりそうなのか、反物質弾の情報は厳重に秘匿されていたはずだが……。俺の背中に冷たい汗が流れた。

「無敵の人……スーサイドボマー……」

「はぁ、何それ。まあ見てくれよ」

と言うと息子は立ち上がって浮遊荷台の布を取り去った。


 そこには白と黒のツートンカラーの直径3mほどの球体。赤道に怪しく波打つ銀色のリング、表面には、禍々しい模様。

「これ、一発試してみねぇか?」

 うわー、乗員20万人大虐殺だ! 緊急マニュアルでは「刺激せずに説得」だったな。だが俺は訓練でも実地でもやったことが無いんだ!


 俺が固まっていると、息子は、

「なんだ? 青い顔して、どっか悪いのか? ノリ悪いな」

と言いながら、怪しい模様の中心にある悪魔的な模様に手をかけた。

「ま、あっという間だから」

「やめろぉー!」

俺は大声で叫んだが、その後の記憶が無い。ひょっとして俺死んだ?

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