マレ【母4】

「うーーー、家の、娘が、すごいもの、作った」

いつもの岩の上で、婆様に話し掛けた。

「うーーー、何?」

婆様が、ダルそうにこちらを向いた。


 娘の作った『さけ』というものを取り出して、

「うーー、これ、飲むと、一瞬で、戦闘モード。しかも甘い」

「うーー、そんなことが、ちょっと、お寄越し……」

と言って婆様は、「さけ」を一口飲んだ。


 しばらく口をモゴモゴさせて味わった後、婆様はゴクリと飲み込んだ。

「うー、甘くて、美味しい」

言っている途中で、婆様は突然カッと目を見開き立ち上がった。

「本当だ。もう行けるよ。今日はヘビ野郎の退治だったね。ちょっくら先に行っとくよ」

と言うと、婆様は風のように駆け出した。


 娘から巻き上げた、もとい譲って貰った「さけ」は美味しくて、先日来チビチビ飲んでいたら、もう残り少ない。娘に作り方を聞いて、村で作ろう。


 私は十分に温まって血が巡りだしたことを感じると、立ち上がって言った。

「野郎ども、今日は蛇だよ。婆様を一人にするな! 行くぞ!」

「「「「「「「おー!」」」」」」」


 後日、家の娘は、村に『さけ』をもたらした『さけの賢者』という二つ名で呼ばれるようになった。

 そして我が部族は、『温まり要らず』と増々恐れられるようになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る