ルフバー【父2】

「みー、とーちゃん」

「うん?」

ルフバーが、わしの服の裾をツンツンと引っ張りながら、俺を見上げていた。あーかわいい。


「みー、網で魚をとると、ぎょうさんとれんの!」

「網って、こいつか? こいつで捕まえられほど鈍臭い魚はおらへんで。今入っとる魚は、とーちゃんが突いてから放り込んだからたくさん入っとるだけやど」

船の網籠を持ち上げながら言うと、

「みー、バカにしてへん?」

と娘は耳をイカ耳にしながら低い声で唸った。


 いかん、スミカが言うとった、娘に口を聞いてもらえなくなる予兆のフレーズや。

「いやいやいや、そんなことあらへんで。とーちゃんアホやから、もうちょっと分かりやすう言うてんか?」

 しゃがみ込んで娘と目線の高さを合わせて、焦りながら頼み込んでみた。「目線の高さを合わせるのが大事」ってスミカが言うとった。


「みー、しょうがあらへんなー」

どこか得意げにかわいい耳をピンと立てて、娘は話しだした。はー、危機を脱したみたいや。家の娘かわいい。


「……ということなんやが、誰か手伝うてくれへんか?」

俺は、村の寄り合いでルフバーの話を伝えた。

「えっ? ど言うこと?」

「意味が分からんし?」

あんじょう寄り合いの参加者はざわざわしだした。

 そこに家のかーちゃんが、一言言い放った。かーちゃんかっこええ。

「ヤスで突けんでかい魚が、食べ放題ってことや!」

「「「「「!」」」」」


 ルフバーが作った1m四方ぐらいの網仕掛けの玩具を、100倍サイズで村の前の海に組み立てたった。

 漁の合間に皆で作業して三月掛かったんやけんど、木の浮も石の錨も藁のロープも、今まで使うとったもんをぎょうさん作るだけやったんで簡単やった。

 ただルフバーが作ったちゅうキラキラ光る糸から網を作るのは大変やった、と家のかーちゃんが言うとった。

 この糸が、ルフバーが色々引きちぎって試した成果なんやと、知らんけど。強くて柔らかい網を作るには、特別な糸と特別な処理がいるんやと、知らんけど。

 家のかわいい娘が言うんやから間違いあらへん。


 ルフバーが言うには、ヤスで突けんデッカイ魚は、海をぐるぐる回っとんやと。

 ほんで前に邪魔なもんがあると、沖に向かって避けるんやと。その方向に藁網で段々狭くなる通路を作って、行き止まりにでられへんようになる丈夫な網をしかけとくんやと。

 そういうふうにして、群れごと罠に掛けるのが、この網仕掛けなんやと、何言うとんのか全然分からんけど。

 うちの娘、どっかおかしないか?


 さっきから俺の隣で、ルフバーが耳を立てて目をキラキラさせながらヨダレを垂らしとる。ほんまに、これでええんやな?

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