俺等付き合っとく?



「あはっ。吉田おもしろいね」


「笑いごとじゃねっつの」


「きゃはははっ」


この時、吉田の反応が面白くて、おかしくて、少し私は調子に乗り過ぎてしまったのかもしれない。


「マジやめろって」


「きゃはは」



ちょっとからかってやるつもりが、いつの間にかマットの上に私が倒れて、その上に吉田が……押し倒すような体勢になっているではないか。



「……」


「……」


ヤバい言葉が出てこない。この体勢と雰囲気ヤバくない?



「……中村?」


少しずつ、吉田の顔が近付く。

言葉が喉に詰まって出てこない。

どんどんと吉田の顔がアップになってく。


……うわっ。

ギュッと目をつむった時だった。


ガガ…ガチャ!!

と扉が開く音が響いた。



「中村ーいるか?」


現れたのは私に荷物運びを頼んだ張本人、体育の斎藤先生だ。



「……て、お前ら何やってんだ?」


「きゃぁぁぁっ」


「わわゎゎっ」


私と吉田はお互いに叫んで、慌てて離れた。



***



「全く、中村が5時間目の授業出てないって聞いて、もしやって思ってきてみれば……」


「すっ、すみません」


うわぁ。顔が沸騰しそう……はずかしいや。

吉田の方見れないよ。



「体育倉庫をラブホ代わりにすんじゃねぇぞ?」


「………」


違うけど返す言葉もありません。吉田もそうなのか何も言わなかった。




「すっかり日が暮れちまったな。授業も終わってるし……」


「……うん」


本当に今日は疲れた。



「みかちゃん。俺等つき合っとく?」


別れ際に吉田がヘラッと口を開いた。



「間に合ってます!」


「処女が間に合ってんのかよ」


吉田は馬鹿にしたように笑う。



「うるさい!」


本当にばかじゃないの?

たいして話した事ないのに。

たいして関わった事ないのに。


たまたま今日良い雰囲気になったからって、お手軽な感じにヘラヘラして"つき合おうか"なんてテキトーな事言っちゃってさ。


でもこの日は全く眠れなくて、夜の間ずっとドキドキしてた。

触れる事のなかった吉田の唇の柔かさを想像して……。


明日からあいつとどんな顔して会えばいいのか、考えながら──。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る