異世界人、終末世界に転移する

焼き茄子アヒージョ

プロローグ

 荒廃した戦場を疾駆する。

 どこを見ても、倒壊寸前のビルや家々が建ち並んでいるこの戦場と化した街に一般人などは誰もいない。


 こうなってしまったのも、理由がある。


 ある日。突然世界各地から謎の石造りの門が出現し、その門から生命体が現れた。


 その名前はレイダー。

 一般的に2mの小型サイズから15〜6mの大型サイズまで様々なサイズで存在する人類とは全く違う異形の生命体。その総称だ。


 レイダーの目的など生態は一切謎に包まれているが、一つ分かっていることがある。


 人類を襲うことだ。


 今や南半球はレイダーに制圧され、人類の生存圏は北半球に撤退。加速度的に人類は滅亡の道を歩き始めた。


 だが、人類は未だ諦めずに戦うことを選択した。いつか来る平和を取り戻すために。



***


 20××年10月31日。

 

 昔はハロウィンと呼ばれるイベントが開催される日付に、人類たちは一つの作戦を決行していた。


 

『アテナ01より第402連隊全員に通達。10時方向に大隊規模のレイダーが侵攻中。小隊規模で迎撃にあたれ』

『セイバー01、了解しました』

『ハウンド01、了解』

『ブレイカー01、了解です』

『ドンナー01、了解!』


 ノイズにも似たように音質の悪い通信機からアテナ01より指揮が下される。


『なお、ウィード00はセイバー小隊へ合流し、敵を叩き潰せ。ユニットの換装タイミング等は一任する』

「了解!!」


 僕は跳躍してセイバー小隊に合流し、付近のレイダーに対してすぐさまライフルでの援護射撃を行う。


 前腕を振り下ろす攻撃を行おうとするレイダーには脚を撃って上体を崩し、狙いを外させ。

 誰かの撃ち漏らしのレイダーには頭部を狙って討伐する。


『ウィード00。成長しましたね、良い腕です。その調子で他の人がよそったご飯をを食い尽くしても大丈夫ですよ』

『相変わらずよく分からない表現するなぁ隊長は』

『セイバー02、そういうのは言わなくていいんですよ。隊長はアメリカンジョークを言いたいだけなんです』

『かぶれてるねぇ』

『はい、無駄口を叩かない。右、撃ち漏らしです』


 こんな会話をしながらでも攻撃の手を彼女たちは緩めない。その手並みは鮮やかで、呆気に取られていた。


 僕も負けじと帯刀していた剣を引き抜き、近づいてくるレイダーに一太刀を浴びせる。


 すぐさまライフルで他のレイダーに弾丸を打ち込む。

 ある程度地面にレイダーが果てたのを確認した後にリロードを行う。


『セイバー小隊ならびにウィード00。次は9時方向の集団を片付けます。おかわり自由です』

『了解』


 表情を引き締め、指示された方を向く。

 先程相対した集団より数が多く、厄介そうな雰囲気がある。大隊規模くらいだろうか。


 僕は少しだけ悩んだ後、「司令部、キャノンユニットに換装を申請」と通信を行う。

 このまま戦っていたら他部隊の弾丸の消耗率もある。僕が一網打尽でこの戦況を変える。


『キャノンユニット申請を許可。ユニットを射出します』

「了解」

『セイバー01、援護します』


 視界の端に映るレーダーマップに赤いマーカーが現れるので、僕はそのマーカー位置に向かう。


 ズシン、と音を立てて空から落下してきたコンテナに近づき、僕はロックを解除する。


 中には背負うような形で肩部から突き出す2門の大砲の装備、キャノンユニットが入っている。ついでに腕部に装着する大型ライフルも2丁入っていた。


「僕もだいぶこの世界に染まっちゃったな」


 苦笑いと共に背部装甲をパージし、キャノンユニットを装着する。


「これより砲撃を行います! 巻き込まれないようにしてください!」


 全員に聞こえるように通信を行い、大砲を発射する体勢になる。


 



 ───正直僕はこの世界にとって部外者だ。

 僕はこの世界の人間ではない。


 エネルギーのチャージを行いながら僕はこの世界に迷い込んでしまったあの日からの日々を思い出していた。

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