雪の日に・・・

広之新

プロローグ

 今日はあの日と同じく雪が降っていた。春の始まりの時期としては珍しい。私たちは車を降り、その中を寒さに震えながら歩いていく。もう辺りに雪が積もってきている・・・。ついにこの日が来てしまった・・・。どんよりと曇った空がやりきれない気分をさらに重くしていた。


 やがてその家にたどり着いた。古ぼけた一軒屋で歴史を感じさせる。様々な家族の思い出が詰まっていることだろう。ここであの家族は長い期間過ごしたのだ。だがそれが今日終わる・・・。


 呼び鈴を押すと扉がガラガラと音を立てて開いた。中では初老の夫婦が私たちを待っていた。


「捜査1課の倉田です」


 倉田班長は警察手帳を示した。


「ご苦労様です。お待ちしていました。準備はできています」


 夫婦2人が頭を深く下げた。こざっぱりした服装をして、そばに小さなカバンが用意してある。玄関には靴がそろえられており、出かける準備はできている。2人が顔を上げると、私たちとは対照的に清々しい表情をしていた。そこにはもう迷いは感じられない。

 倉田班長は「はあっ」と息を吐くと、懐から書類を取り出して広げ、それを2人に見せた。


「保護者遺棄致死罪の容疑でお二人を逮捕します」

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