皇帝は、腹心の天才魔術師を孕ませたい

逢坂とこ/とおこ

序章


 その空間は、『死』の香りに満ちていた。

 強烈な腐臭と、天才魔術師のジャフィーをして押し潰されそうな心地になる、圧倒的な魔力。人間のゆうに三倍はありそうな体躯を震わせて、目覚めたばかりのその生物は、生を噛みしめるように咆哮した。

 きっと。

 自分はここで死ぬだろう、と、ジャフィーは思った。怖くはなかった。そのために来たのだ。


 これでいい。


 これでいいんだ、と、ジャフィーは──今まさに己を捕食せんとしている怪物の前で、微笑んだ。



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