バードストライク
川詩夕
海辺の灯台
鳥は波の音を聞きながら眠りに就くところだった。
鳥が眠る体勢を取ろうと身体を捻った際、前方に
鳥の視線の先に人間が一人きりで海を眺め黄昏ている。
鳥は静かな眠りに誘われ、ゆっくりと身体を横たえて両目を閉じた。
鳥は夢の中で人間が
鳥の目に淡い月光が徐々に差し込み、夜の海辺の景色が果てしなく広がった。
鳥は身体を起こし灯台の入り口を見下ろした。
鳥は目を瞬き咄嗟に両翼を目一杯に広げた。
鳥は風に乗って月光を浴びる。
鳥の目に狂いはなく、人間の頬には後悔の涙が伝い落ちていた。
鳥の存在に気付いていない人間の鼓動は暗い海と共鳴している。
鳥と人間の距離が急激に狭まった運命の
鳥は風力原動機のブレードにバードストライクし首を
鳥の生命が尽きる音を人間は耳にした。
鳥の生温い血が飛び散り、千切れた首が人間の足元へと転がった。
鳥の目に映る人間の顔は
鳥の羽だけが夜空に舞っていた。
*
眼前に汚い海が広がっている。
波の音は雑音にしか聞こえない。
自殺の名所である灯台まで足を運んできた。
鍵が破壊されている錆び付いた扉を潜れば灯台の中へと容易に入る事ができた。
餓死した者、首を
血走った目を閉じると自然と涙が溢れて今すぐ死にたくなった。
理由も分からない不安が膨張し続けて胸が張り裂けそうになる。
胃液の逆流を感じたその刹那、死体の幻影と接吻を交わした気分に
ふらつく足取りで灯台を後にし、汚い海へと歩み寄る。
背後から不快な音が一度聞こえると、足元に鳥の首が転がっていた。
鳥の首は血の涙を流していた。
振り返ると、血が飛び散った風力原動機が高速で回転していた。
鳥は自らの意思で命を断ったのだろうか。
血に塗れた鳥の首を目の当たりにした事で気分が高揚した。
これが人間の首だったら、枯渇した心が満たされるに違いない。
明日は海辺の街へ出掛けよう。
すれ違いざまに目が合った人間を
夢を描きながら鳥の首を踏み潰した。
血に濡れた羽が風に揺れている。
バードストライク 川詩夕 @kawashiyu
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