ハルトキ、思う

みかんの実

第1話 都会からの転校生





「はじめまして。瀬戸せとひびきです」



夏休み明けの始業式。

教室の黒板の前に転校生が1人立つ。




「よろしくお願いします」



高めの声。なまりのない都会らしいトーン。

眉をつりあげながら、不機嫌そうに小さく口を開く。




一重なのに丸く大きな瞳。やけに長いまつ毛。



半袖のシャツからは、白くて細い腕が伸びている。

染めているのか色素が薄いのか分からないけど、耳を隠すように長い茶色がかった髪の毛。



"女みてーな奴"。


そんな第一印象だった。



俺のクラスに転校生がやってきた。






そんな田舎町の転校生だ。噂になるのは早かった。




「ねぇ、どんな子なのっ!?」



すでにユカリの学校にも話がいっているのだから。




「いや、知らない」


「イケメンで可愛くて中性的なんでしょ?聞いたよー」



ベッドに転がる俺をのぞき込むのは、隣に住むイトコの高校生。隣といっても田んぼと畑で500メートルは離れているのだけど。

だいたい、イケメンで可愛くて中性的ってなんだよ。ごちゃごちゃ混ざり過ぎだろ。




「そぉかー?確かに女みてーだとは思ったけど」


「綺麗な顔立ちってこと?」


「あー、そうなのかもな(棒読み)」


「会ってみたーい!あはは!あんた今度さ連れてきてよ!」


「……」


「てゆーか、長屋門の竹林さんとこの親戚かなんかなんでしょ?」



そんなこと、知らねーよ。

俺は、ただ1日そいつと同じ教室にいただけなんだけど。







「あそこのおばちゃんの娘が戻ってきたとか」


俺が返事をしなくても、ユカリが言葉が止まらないのはいつものこと。


マジで、コイツの将来は世間話好きなおばさんになるのが目に見える。




「あ、でも名字が違うから離婚って訳じゃないのかなねー」


「……」


「マッサージしてあげるからマジで紹介してよ!!」


なんて、ユカリが俺の背中に跨がって耳元に口を近づけた。



美味しい体勢に思えるが、制服姿のままのスカートからは黒色のスパッツがしっかりと見える。



「あんた何、溜め息ついてんのよ!女子高生さまが揉んであげるって言ってんのに!!」


「……」


色気も恥じらいも何も無し、ガッカリ感が半端ない。



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