ハルトキ、思う
みかんの実
第1話 都会からの転校生
「はじめまして。
夏休み明けの始業式。
教室の黒板の前に転校生が1人立つ。
「よろしくお願いします」
高めの声。なまりのない都会らしいトーン。
眉をつりあげながら、不機嫌そうに小さく口を開く。
一重なのに丸く大きな瞳。やけに長いまつ毛。
半袖のシャツからは、白くて細い腕が伸びている。
染めているのか色素が薄いのか分からないけど、耳を隠すように長い茶色がかった髪の毛。
"女みてーな奴"。
そんな第一印象だった。
*
俺のクラスに転校生がやってきた。
*
そんな田舎町の転校生だ。噂になるのは早かった。
「ねぇ、どんな子なのっ!?」
すでにユカリの学校にも話がいっているのだから。
「いや、知らない」
「イケメンで可愛くて中性的なんでしょ?聞いたよー」
ベッドに転がる俺をのぞき込むのは、隣に住むイトコの高校生。隣といっても田んぼと畑で500メートルは離れているのだけど。
だいたい、イケメンで可愛くて中性的ってなんだよ。ごちゃごちゃ混ざり過ぎだろ。
「そぉかー?確かに女みてーだとは思ったけど」
「綺麗な顔立ちってこと?」
「あー、そうなのかもな(棒読み)」
「会ってみたーい!あはは!あんた今度さ連れてきてよ!」
「……」
「てゆーか、長屋門の竹林さんとこの親戚かなんかなんでしょ?」
そんなこと、知らねーよ。
俺は、ただ1日そいつと同じ教室にいただけなんだけど。
*
「あそこのおばちゃんの娘が戻ってきたとか」
俺が返事をしなくても、ユカリが言葉が止まらないのはいつものこと。
マジで、コイツの将来は世間話好きなおばさんになるのが目に見える。
「あ、でも名字が違うから離婚って訳じゃないのかなねー」
「……」
「マッサージしてあげるからマジで紹介してよ!!」
なんて、ユカリが俺の背中に跨がって耳元に口を近づけた。
美味しい体勢に思えるが、制服姿のままのスカートからは黒色のスパッツがしっかりと見える。
「あんた何、溜め息ついてんのよ!女子高生さまが揉んであげるって言ってんのに!!」
「……」
色気も恥じらいも何も無し、ガッカリ感が半端ない。
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