裏の顔を持つハイスペック陰キャくん〜裏の顔がバレて美女達に迫られる〜

翠牛乳

プロローグ

放課後、教室はいつもより賑やかだった。クラス1暗い陰キャの斎藤圭は自分の席に座り、机に広げたノートに目を落としながら、課題に集中していた。周囲の騒がしさが気になることもなく、彼の世界は静かで平穏なものだった。


しかし、そんな彼の耳に、ふと女子たちの声が飛び込んできた。


「ねぇ、あのKEIってモデルさ、めっちゃかっこよくない?」


「うん、すごいよね。カリスマ性もあってさ、カメラの前じゃメチャクチャオーラが出てて、前に見に行った時、私固まっちゃってたみたい。」


圭はその声を聞いても、特に反応することなくノートに視線を落とし続けた。しかし、話題が進むにつれて、何となく気になってきた。


「ほんと、モデルとして大人気だよね。私、雑誌で見たことあるけど、まじでカッコ良すぎた。SNSフォロワーも300万人以上いたと思うよ。」


「え、そうなんだ? でも、KEIって活動名以外は分からないよね?」


「うん、確か、活動名以公開されてないんだよ。けど、あの人、どう見ても見惚れちゃうよね。」


その声に圭は思わず耳を傾けてしまった。「モデル?KEI? それって…自分のことだよな?」と圭が考えていると


女子が、さらに話を続ける。


「でも、アスリートとしても有名らしいよね。」


「アスリート?」


「うん、特にバスケがすごいんだって。去年の全国大会でもKEIって名前で出ててすごかったじゃん、大会MVP受賞してたよ。」


「え、それ、ほんとにKEIのこと?」


「そうだよ。知らなかった?本人がSNSにアップしてるよ。」


その言葉に、圭は自分の耳を疑った。確かに、去年でバスケの全国大会でプレイした時は、大会MVPをとった。そのときは何も考えずに全力でプレイしてSNSにあげただけなのに、こんなふうに話題にされているとは思っていなかった。


「でもさ、アスリートとしても実力あるっていうのはほんとすごいよね。全国大会でも好成績を沢山残してるらしいし。」


「そうそう。ギャップがすごいよね。モデルではあんなに凛としてるに、競技になると別人みたいに熱血漢が感じられるよね。」


圭は心の中で冷や汗をかいた。「まさか、こんなにあのことが広まっているなんて…。」


周りの会話が続く中、圭は顔を上げずに机に目を落としながら、冷静を装っていた。普段は目立たないように過ごしている自分が、今こうして話題になっていることに、恥ずかしくてオロオロしていた。


「でもさ、さっき話してたKEIのこと、実際に雑誌に出てるんだよね? 最近もどこかで見たことがある気がする。」


「私も見たことある! なんか最近、あの人のプレイがかっこいいって話題になってるよね。」


「でも、活動名しか出してないから、ちょっと謎だよね。」


「本名も分からないままだし、確かに謎の人物だよね。でも、あの実力は本物だから。」


女子たちが話し続けている間、圭は恥ずかしさを感じながらも、その場から動くことはなかった。心の中では、こんな自分が裏の顔では今話題の活動名しか知られていないKEIだと絶対にバレないと信じて、ただ静かに課題を進めて平静を取り戻そうとしていた。



だが、これからちょっとしたミスで自分の正体がバレていくことを当の本人は知らなかった。

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