第16話キャパティの人生のメロディー

 主人をなくし無職となってしまったキャパティ。


 無職となれば、無性に無償でも誰かの役に立ち、自分というものを誰かに認めてもらいたくなるのが人という不思議な生き物。

 自己の存在を主張するために、犯罪やテロに走る者も少なからず存在してしまう。


 そんな中、キャパティはまず学会を変えてやろうと王立学術研究所に乗り込む。そして、あっさりと追い返される。


 ……この世界にも学会があったことを千の妄想力を持つ僕でも見抜けなかったわ。


 この時、なんで学会を変えてやろうと思ったのか彼女にもわからないそうだ。

 当人曰く、疲れていたのだと。

 疲労とは人の思考をとことんまで鈍くするものである。

 それで選ぶのが学会を変えることとか、キャパティは根が良い子なんだね。ゆっくり休めよ?


 変に国を変えてやろうと、反社会組織や王城などに乗り込んだりする悪い男に唆されたりしなくて良かったといえよう。振られたての女性が悪い男に引っかかる可能性が跳ね上がるものだからだ。心の隙間を狙われるのだ。

 なお、男はいつでも悪い女に引っかかるので弱っていなくても関係がない。


 しかし、九死に一生(?)を得たキャパティではあるが、今度こそ途方に暮れた。


 どうしたものかと思っていたところを貴族家と繋がりのあった冒険者たちに誘われて、半ばヤケになったのもあってダンジョンに潜ることにした。


 冒険者にも色んな種類がいる。

 派遣専門で街の工事や雑用をこなす者や薬草や採取を専門とする者、街への供給として動物やモンスターを狩る者。


 ようは派遣業である。


 しかしこの派遣業、へたな商工ギルドよりも力を持っている。それは伝説の地下世界冒険家であり、時の王トレミー・トレダッカの功績が大きい。


 一説によると、土族であったとされる彼は自身を地下世界冒険家から冒険者と名乗り、その立場と役割を明確にした。


 その彼の功績により、人々はダンジョンからの恵みの循環や冒険者がもたらす経済効果は社会にはなくてはならないものとなった。


 ましてや、その冒険者トレミー・トレダッカは王女と結婚し、一国の王にまで上り詰めた。上り詰めた後、王妃は騎士の1人に寝取られたけど、彼の功績は疑いようがない。功績と愛は別なのだ。


 なお、王国の礎を築いたトレミー・トレダッカが拳を振り上げ、泣き叫びながらダンジョンに消えた後、王妃を巡って内乱が発生しその王国は滅びた。


 栄枯盛衰のことわりである。


 あとついでに冒険者とか、英雄が王になると大体、王妃が若い騎士と不倫するのも歴史アルアルな気がするのも世のことわりである、と思う。


 なお、トレミーの最期の地は王国亡き後も大迷宮都市トレミーとして、一大観光地として栄えている。

 そんな歴史もありつつ冒険者というのは、一つの立派な職業である。


 まあ、そんな話はどうでもいい。


 キャパティが誘われたのは、主にダンジョン探索や貴族の手伝いを生業とする冒険者だったらしい。


 キャパティがなぜ1人こんな場所で死を待つことになっていたかといえば、ちょいと物語なんかでたまぁ〜に見かける冒険者仲間に裏切られた、とかではない。


 いっそ、そういう話の方がわかりやすいのだが違うそうだ。

 もしもそうならば、キャパティが復讐を果たす際には僕も後方師匠面ができていたはずだ、残念である。


 そもそも冒険者が仲間をホイホイ裏切っていたら、容易くその冒険者は破滅する。

 どんな仕事でも容易く裏切るヤツと仕事をしたいと思う人はただの1人もいない。


 命がかかっているならば尚更で、そんな物語のようなマネをするのは、かねが全てである犯罪者だけである……と言いたいのだが、現実にはそういうことも多い。


 特にブラック企業とかいう場所では上司が金や権力に魂売ったクズばかりで、そういうことはよくアルアルというのも世の理でもある。

哀しき世界である。


 金に踊らされおって、僕はそうならんぞ!

 あ、きんゲット。


 もっとも僕らがいまいる場所は地下世界であってダンジョンではない。ダンジョンよりもはるかに危険は少ない。


……だけど。


「このままなら地上に戻れなくて餓死しちゃうからねぇ〜」

「えええっ!?」


 早く帰りたいなぁー、帰ったらとりあえず強欲ババアに再会を喜ぶフリして飛びつこう。

 その後、絶対殴られるけど。男の子には負けると分かっていてもやらねばならぬ時がある。


「と、というか、坊ちゃんはどこから来たのですか!? そこから帰れば良いのでは……」


 僕は上の方を指差す。


「あっちから来たんだけど、あっちはあっちで岩盤が硬くてねぇー。ちょっとダイヤとかアダマンタイトとか探したりできない? 匂いとか嗅いで」


「私は犬ですか!? それができてたら出口へまっしぐらしてます!」

「そりゃそうかー」


 僕はたったいま掘った石の塊を上手に組み合わせ釜戸を作り、その中に岩石を放り込みコークスで熱を与える。


 おお、熱い。

 離れて穴掘りを続けよう。


「あの〜、何してるんですか?」

「釜戸作って鉄を錬成しているんだよー」

「……鉄って、そんなキャンプみたいに簡単に錬成できましたっけ?」


 さあ……? できるんだから仕方ない。

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