おいしいお魚
初めて北海道に来て、地元の居酒屋に入った時に、私は衝撃を受けた。
ほっけを頼んだのだが、まず大きさが段違いだ。
別の魚が来たのかと思った。
正直時価という値段の表記にビビってはいたし、実際払った額もそれなりの値段だったのだが、その値段に足る大きさだった。
これ一体何人分になるんだろう。
もうこのほっけだけでお腹がいっぱいだ。
これに地酒を合わせれば、もう最高だ。
湯気のたつ魚の身に箸を入れ、ほぐした身を口の中に入れる。
なんだこれは。
今まで食べたどのほっけにもない味がした。
魚にある独特の風味の脂が口に広がった。
こんなに脂を感じるほっけは初めてだ。
確かめるために、もう一度身を取り出して口に運ぶ。
またあの脂がじゅわりと染みだしてくる。
あぁ、うまい。うまい。
次々と口に運びたくなる。
でも、ちょっと待った。
私は隣にあるおちょこを取った。
一口日本酒を口に入れる。
魚の旨味がほんのり残る後味と、酒のふんわり香る風味が混ざり合い、何とも言えない味わいを作り出していた。
これこれ、これだよ。
地元の魚と酒が合わさった時の、この何とも言えない快感をともなう味だ。
あぁ、永遠にこれが続けばいいのに。
これを味わい続けたくて、手が止められない。
そうしてずっと口に運んでいると、あぁ、最後の一口だ。
それに気づくと、とても名残惜しくなる。
しばらく、最後の魚の身を見つめた。
香しい香りを未だに放ち、その身は輝いているように見えた。
名残惜しいが、良いものは素早く口に入れなければ風味が損なわれてしまう。
私はゆっくりと口に入れた。
そして、それを噛みしめる。
ひとしきり噛み、のどの奥に飲み込んだ。
まだ風味が残る中、日本酒を口に入れる。
魚の旨味と日本酒の旨味が混ざり合う。
その旨味も、自分の中へ流し込んでしまうと、もうそこには何もない。
だが、満足感が私には残っていた。
ちょうど良く食べ終えて、私は皿の前で手を合わせる。
そして、心の中で言葉を浮かべた。
――ごちそうさまでした。
店を出てホテルに向かいながら、私はあの味をずっと思い出していた。
そして、今もそれを思い出すのだ。
だから私は、北海道に来るたびに馴染みの店に入って、ほっけを注文する。
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