第28話 道場破り
予想より長くなり、数回に分けて話したため、放課後になってしまったがまあいいだろう。これも青春ってやつだな。
「ふーん、そんなことがあったんだ。」
「へー、おれはお前のお姉さん好きの原因を知れたわ。」
「え、勇也君ってお姉さん好きなんだ。」
さらっと性癖をばらされたが、今のおれは寛大だ。許してやろう。
後で千本ノックだな。
「まさか君があの曽禰カ崎さんと知り合いどころか師弟関係だったとはね。」
「あの人そんなに有名なのか?」
「有名どころじゃないぞ、一般人に有名な探索者は?って聞いて真っ先に出るのがあの人だからな。」
全然知らなかった。ニュースって見たほうがいいな。
「じゃ、おれは帰るわ。久しぶりに道場寄っていきたいし。」
「おお、じゃあな。」
「また明日。」
久しぶりにあの日のことを話したため、妙に懐かしい気分になった。
そのせいもあってか、無性にあの道場に行きたくなった。
「元気してるかな。」
実に三年ぶりほど。が、しっかりと道のりは覚えていた。
「ハッ!」
「やぁ!」
古ぼけた道場の前まで来た。外からでもバシンバシンと殴り合う音が聞こえる。
記憶にあったものよりずっと綺麗になった扉をガラガラと開き、中に入る。
あの日のように全員の視線がこちらに集まる。
「勇也か!?」
あの日より若干老けた、三十も近くなったゴリマッチョさん、三竹健一さんがこちらにやって来た。
「ご無沙汰してます。蓮枯勇也です。」
「久しぶりだなー!パタリと来なくなったから心配したぞ!まあ元気そうで何よりだ!」
快活な笑顔を浮かべ、背中をバシバシと叩いてくる。若干痛いが、それすらも今は懐かしいと感じられる。
最初の頃はこれで骨がミシミシいってたなぁ…
「あ、そうそう。あとで秀志と話してやれよ、あいつ、お前がいなくなって一番ショック受けてたからな。」
秀志。あの時のメスガキだ。
まあメスじゃなかったんだけどさ。あれ以降おれは人を顔で判断せずに、服装とか仕草で判断するようにしてる。
「分かりました、久しぶりに練習参加させてもらっていいですか?」
「もちろんだ!むしろ大歓迎だ!秀志ならあそこの試合場で虚を見つめてるからさっさと行ってやれ。」
「分かりました。」
おれは三竹さんに言われた試合場まで足を運ぶ。
そこには正座をしながらひたすら壁を見つめる秀志がいた。
「………」
おれには気づいていないようだ。
「ふふふふ…」
おれはイイコトを思いついた。
「…………」
「ばあ!」
「ッ!?うわああああ!!!????」
背後からの大声で秀志はオーバーなリアクションで反応する。
相変わらず顔立ちは女性的だ。
「って…もしかして、勇也君っすか?」
「久しぶり、秀志。」
昔と変わらない~ッス口調で聞いてきた秀志に、おれはそう返した。
「~~ッ!ゆ゛う゛や゛く゛ん゛!」
目に大粒の涙を浮かべ、鼻水で顔を汚しながらおれに抱き着いてくる。
「ざびじがっだっずよぉぉ!!」
おれの制服を鼻水と涙でぐしょぐしょにしながら、秀志は泣き続ける。
「い゛き゛な゛り゛い゛な゛く゛な゛ら゛な゛い゛で゛よ゛ぉぉ!」
サラサラの黒髪を揺らし、おれの胸板に顔をこすりつける。
「あー、いなくなったのはゴメン。いきなり競争相手消えたらそりゃ悲しいよな。」
「うぅぅ…グズッ…」
おれは優しく秀志の頭を撫でる。昔からこうすると秀志は喜んだ。
「えへへ…二年八か月二週間と四時間ぶりのナデナデだぁ…!」
声は高く、透き通っている。まさに、鈴を鳴らしたような声。
顔は二重瞼のパッチリとした目に、バサバサのまつ毛、高い鼻。全体的に可愛らしい顔つきをしている。
背丈も百六十ないくらいで、完全に美少女である。が、ちゃんとついているし、恋愛対象も女性だ。
「…変わってないな、秀志は。」
「勇也君は変わったっすね…なんていうか、スゴくカッコよくなったっすよ!」
これでコイツが女だったら即落ちしていただろう。そう思うくらいには破壊力は高かった。
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