第18話 トリオダンジョン攻略3(新居遥斗)

「あらら…ドローンは柳瀬くんの所かな…?」


 暗闇の中で音が木霊する。


「やっぱり別々に落とされちゃうか。」


 予想通り、とでも言うように呟くのはS級探索者である新居遥斗だ。


(ここの巣穴は見た感じA級…かな?)


 思案していても仕方が無いと悟り、歩を進める。


 コツ、コツと地面に音を響かせて歩く。


(…蟲が出てくる気配は無いかな。)


「アイテムボックス」


 そう遥斗が呟くと耳に着いている機械からモヤが出てくる。


(流石に補助をつけようかな。)


 モヤに手を突っ込み、ゴソゴソと何かを探す。

 手とともに出てきたのは杖だ。


 取り出した杖を軽く回し、手触りを確認するように握る。


(うん。買ってよかった。)


 微笑みを浮かべながら杖にマナを流す。


「マジックソナー」


 杖の先が光り、そこから同心円状の波が出る。


(ふーん。この先に蟲がいるのか。)


 杖をつきながら歩く。


「ギ…ギギ」


 その先で待つのは禍々しい魔力を纏う虹色のムカデ。

 ウネウネと胴をくねらせながら百数本もの足を小刻みに動かしている。


「蠱毒…ね。」


 ムカデの周りには食い散らかされた虫の死骸。

 このダンジョンの巣穴で待つのは全ての毒虫を食らい、勝ち残った。まさに猛者。いや、猛虫。


「ギギギ!」


 ムカデがいっそう甲高い声を上げると天井から二匹のムカデが落ちてくる。


「へえ、強い者に従うのは人間と変わらないんだ。」


 馬鹿にしたような声色で遥斗はそう言う。猫を被っていないからこその発言だろう。


「さて、じゃあもう終わらせていいかな。」


 杖を構え、蟲たちに向ける。



 ソーサラー。そのロールの恩恵は魔法の強化だ。

 通常の探索者では柳瀬のような特殊な場合を除き、所謂凡級コモンクラスまでの魔法のみ覚えることが可能だ。

 が、ソーサラーは杖を使うことで最大で上から二番目に位置する伝説級エピッククラスまでの魔法を行使可能だ。



 深紅に光る杖。伸び続ける遥斗の影が、その力量を表していた。


「ギギギ…!」


 先手必勝とでも言うかのように、這うように、ではなく飛びかかるムカデたち。


「…もう遅いかな。熱線ヒートウェーブ


 杖から放たれる眩い光はやがて一筋の線となり、ムカデたちに襲いかかる。


「「ギ…」」


 その光線によりムカデたちの半身は消し飛び、虚しく蠢くのみだった。


「…ギギ!」


 ただ一匹、運よく上半身を焼かれなかったムカデは下半身のみの仲間の元へ向かう。


「ギィ!」


 ムカデはその強靭な顎で、仲間を取り込む。

 ブチッブチッと抵抗するムカデを抑えながら噛みちぎり、食す。


「……!」


 その様子を見ていた遥斗は珍しく顔を引き攣らせる。

 それと同時に再度構える。


「…熱円ヒートサークル


 即座に魔法を発動する。

 円状にムカデは取り囲まれ、焼かれる。はずであった。


「ギギィ…」


 。半身を失ったはずのムカデは五体、いや百体満足で遥斗へ向かう。


「…これじゃあだめか。」


 納得したように頷く。


「…どうせ誰も見ていないんだ。やってもいいかな。」


 そう呟き、「アイテムボックス」と唱える。

 目の前に発生したモヤに杖を放り投げ、新たなものを取り出す。


 魔石と籠手であった。


「人語は理解できないだろうけど…一応教えてあげるよ。」


 ジリジリと這い寄るムカデに構わずそう言う。


「五年間…だったかな?僕は別のロールで戦ってきたんだ。」


 そう言いながら特徴的な紋章の入った菱形の魔石を握りつぶす。


 ─────────

 前回のロールを付与します




 武闘家ファイター

 ─────────


「ギギッ!?」


 突然雰囲気が変わった遥斗を前に、ムカデも気圧される。


「さて、三だ。三秒で終わらせようか。」


 そう言いながら遥斗は籠手を装着する。

 黒い装甲に白い布。シンプルなデザインであるが、その籠手はボロボロであった。


「三」


 ゆっくりと、腰を落とし、右拳と左足を前に出す。

 まるまる一秒を使い、その動作を行った。


 ムカデはその隙を見逃さず、遥斗の目の前まで迫っていた。


「二」


 ムカデが顎で噛み付こうと前に飛び出した時。既に遥斗の声はムカデの背後から聞こえる。


「炎拳」


 真っ直ぐ重力に従い、落ちるようにして振り下ろされた右腕は、炎を纏い、ムカデを貫いた。


「ギギィィィ!!」


 ムカデは叫びながら距離を取り回復しようとする。


 が、甘い。


「一」


 そのカウントと共に、ムカデの貫かれた穴から炎が吹き出し、全身は焦土と化した。

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