第17話 トリオダンジョン攻略2(蓮枯勇也)

「はーい、なんdのみんな!レンコンだよー!」


 テンションが若干可笑しい気もするが、視聴者にむけて挨拶をする。


 :ちゃんときてやったで

 :むしさんはよ


 催促のコメントが来ているので例のむしさんを映す。


「…」


 日本の足で立ち、人の顔をしている。が、腕が六本あり、何より背中に甲殻のようなものがある。

 それは人というにはあまりにも異形で、かといって虫というには人に近すぎる。

 そのモンスターが発するマナは殺意に満ち溢れていたが、決して襲ってはこない。

 ただ直立しながらこちらを見据えるのみだった。


 :やばい漏れた

 :やばい出ちゃった

 :古和井ィィィィィィィィ!


「…さすがに行くしかないか。」


 おれは深呼吸をして心を落ち着かせる。

 正直、ちょっと。いや結構怖い。少しパンツが濡れてる。


 それでも行動を起こさなければ何も変わらない。

 そう思い立ち、一歩踏み出す。と、おれの背後に炎の壁が現れ、逃げ道をふさぐ。


「は?」


 確かに逃げ道はふさがれた。そうなのだが


 :やばい逃げれねえぞこれ

 :いやでも相手も逃げれなくね?


 そうだ、あのモンスターの背後にも炎の壁がある。いや、おれ達を取り囲むようにして炎の壁が出現している。


『キサマガ…侵入者カ。』


 突然モンスターは喋りだす。


「は?」


 モンスターが喋った。鳴き声ではなく。人の言葉を。


 :あいつ今喋ったくね!?

 :も り あ が っ て ま い り ま し た


『ワレハ…コノシロノ番人。キサマヲ排除スル。』


 カタコトだがやはり喋っている。城の番人…この巣の主ってことか?


『先手ハクレテヤロウ』


 その安い挑発に、おれは乗ってやる。


「ハッ、いい度胸してんじゃねえかよ。つまりお前を倒せばおれはこの巣から出られるんだな?」

『………』


 おれはクローを構える。


「マナガード」


 クローと足をマナで覆い、強化する。

 腰を落とし、右足を下げ、左足に力を籠める。


 :お、クロー来た

 :初めてじゃね?レンコンがナイフ以外使うの

 :細かいようやけどレンコンがつかっとったのはダガーやで


 そのまま地面を蹴りだした。


「ッ!」


 全力で勢いをつけた右腕を振り上げ、クローを敵の顎に突き刺す。


 バキッ。そんな音と共にクローの刃は折れた。


『ナンダ…?ソレハ』


 傷一つついていない頭を動かしながらそう言う、目の前の敵。


『次ハコチラダ』


 そう言いながらモンスターは右腕を一本、おれの顔にめがけて振り払う。


「ヒュッ…」


『ホウ…今ノヲ避ケルカ』


 何とか体をのけぞらせ、躱す。が、ありえないほどの風圧と共に、炎の壁が揺らぐ。


『マダダ』


 残った二本の右腕を今度はおれの脇腹に入れこもうとする。


「ッ!ガ!」


 マナで覆ったクローで受け止めるが、衝撃は大きく伝わり、体がくの字に曲がる。


「ガハッ!」


 ゴロゴロと吹き飛ばされたおれはすぐに体制を立て直し、前を見る。


『オソイ』


 が、その声は背後から聞こえた。

 後ろをハッと振り返る。

 大きな衝撃の直後、炎の壁に打ち付けられていた。


「あッッづ」


 ジュウと肉を焼く音と共に、全身に炎が回る。


 :レンコンが…!

 :通報城通報城!

 :通報下通報下!

 :レンコンが直火焼きにされてまうぞ!?


「ッッあああああああああ!?」


 おれの身を焼き、焼き尽くさんと燃える炎に悶える。


『モガイテモ無駄ダ。ソノ炎ハキサマガ死ヌマデ消エハシナイ』


 暑い…熱い。息ができなくなってきた。

 苦しい、くるしい。

 いたい、あつい、さむい


 けど…楽しい。たたかいってさいこうだ


「ヒュー…ヒュー…」


 朦朧とする意識の中で、間もなく機能を停止する脳髄に焼き付いた一つの言葉。


不死縺?≠ 縺?≠ 縺ッ縺吶◆縺…?」


 その言葉を唱えるとともに、全身からマナがあふれ出る。否、ダンジョンから吸い取っている。風が吹き、周りの炎が揺らぐ。


 肺をナニカが満たす。不思議と苦しさは感じない。

 体中を巡る。血か、マナか、或いは…


 体中を焼き尽くした炎はいつの間にやら消えていた。


『…!?ナン…ダ?キサマ…ソレハ』


 先ほどまで余裕飄々といった様子であったモンスターは一変。額、と思しき場所から汗のような液体が垂れる。


 :は?なんか復活してね?

 :完治。問題ないみたいですね。

 :スキルか?


「…これが何かはわかんねえな。」


 おれは頭を掻きながらそう答える。


「さてと…第二ラウンドだ。」


 おれは目の前の敵を前に笑みが零れる。

 先ほどまで熱さに悶えていたというのに、我ながら早い変わり身だ。

 だが先ほどより何倍も体が軽い。いまなら、何でもできそうだと錯覚するほどには。


「かかってこいや、今度はおれが受けてやるよ。」


 クローを構えたおれは全身からマナを放出しながらそう言った。


 ♤♠♤


『…ズイブント、ナメラレタヨウダナ。』


 平静を装い、モンスターも構える。


『命ガ惜シクナイヨウダナ。』

『ナラバ…死ネ。』


 一瞬にして勇也に接近したモンスターは右腕三本すべてにマナを籠め、少年のみぞおちにめがけて拳をふるう。


 その瞬間、少年の体を覆っていたマナは全て腹部に集中する。


 ゴッと鈍い音がする。


『ナ…ニ…?』


 モンスターの右腕はへし折れていた。


 平静を保てなくなったモンスターは左腕でもう一度殴りかかる。


「さすがに二度目は見飽きる。」


 モンスターはマナで刃を作ったクローで腕を突き刺され、蹴りを入れられる。


『アリエナイ…』


 その場で踏ん張ったモンスターはそんなことをつぶやき、バックステップで勇也から距離を取る。


『…』


 少しの間、両者がにらみ合っていると、モンスターからマナがあふれ出し、両の腕が回復する。


(このまま削っててもジリ貧だな…)


 そうは考えつつも勇也は飛び出し、モンスターの顔をクローで突き刺す。


 :なんか死にかけたら毎回強くなるよね

 :どこの野菜人なんやろなあ…


「ッらあ!」


 勇也はモンスターを蹴り飛ばし、その勢いでクローを抜く。

 モンスターはそのまま吹き飛ばされる。

 炎の壁に衝突しようという時、モンスターは腕を地面に突き刺し、無理やり体を固定する。


『…アブナイ』


 勇也はそのつぶやきを聞き逃さなかった。


(なんであいつはわざわざ炎に当たるのを避けた?)


 思えば自身が死にかけた原因も壁に打ち付けられたからだ。と、勇也は回想する。


 腕を引き抜いたモンスターに急接近し、そのまま殴る。


『グウ…!?』


 とっさに腕でガードするが、押し出される。


「…そこだッ!」


 連弾を防御する際に腹部に隙ができる。そこを正確に蹴り、硬い外骨格にひびを入れて押し出す。


 ドンと背後の壁に当たる音が聞こえると、すぐにモンスターが燃え出す。


 :勝ったな風呂食ってくる

 :風呂食うな、入れ

 :なんか燃えてるとこ見るのってつらいよね


 自身に燃え移ることを懸念してか、勇也はすぐに後ろに下がる。


 暫くもがき続けるとモンスターは黒焦げになり、その体はパキンと割れた

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