激安通販スキルで異世界成り上がり〜底値で買って最強装備とハーレム生活〜
☆ほしい
第1話 テムっていうのは何だろう?円の代わりの通貨か?
俺は気づいたら、見知らぬ草原に立っていた。
上空には巨大な太陽が二つ。微妙に色が違うそれぞれの光源が、やけに眩しく感じる。
風景は確かに地球っぽく見えるが、どこか異なる雰囲気が漂っている。
「……ここは、いったいどこだ?」
立ち尽くして呟くと、ポケットにあったスマホの画面がチカチカと光った。
現代で手に入れたはずのそれが、異世界めいた場所でもきっちり動作しているあたり、どうにも現実感がない。
けれど、頬をつねれば確かに痛い。夢じゃないんだろう。
画面を見れば、そこには謎の通販サイトが表示されていた。
しかも説明文に【激安通販スキル】などと出ていて、見たこともないアイテムの一覧が並んでいる。
武器や防具、道具、回復薬、果てには生活用品まで。
しかも値段がやたら安い。
1テム、2テム、せいぜい10テム程度。
テムっていうのは何だろう?円の代わりの通貨か?そんな疑問が浮かぶ。
「もしかして、これが異世界での新たなチート能力ってわけか?」
試しに【木の棒:1テム】を買ってみようと思い、画面の「購入」ボタンらしきものをタップしてみた。
すると、空間がやや歪んだような気配がして、ボスッという音とともに足元に棒が転がった。
慌てて拾い上げると、確かに本物の木だ。質感も重さもリアル。
これなら武器にもなるかもしれない。でも木の棒では心許ないし、何より通貨の概念が分からない。
「これを買うためのテムってどこから出てきたんだ?俺はこっちの金なんて持ってないんだが……」
そんな疑問が渦巻くが、とりあえず少し移動しないと日が暮れる。
周囲を見渡すと、遠くに何か村っぽい建物の集落が見える。そこを目指して歩こう。それしかない。
ちょっと歩くだけでもやたら草が深いし、足元の地形が不安定だ。
さっさと舗装された道なりへ出たいと思いつつも、方向感覚すら怪しい。
とはいえ周囲に人影もないから、その集落が頼りだ。
「とにかく、行くか……」
俺は腹を空かせながら草原を進む。
時折風が吹き、草がざわざわと揺れる。その音は心地いいが、心細さは拭えない。
そう思いながら、スマホ画面をもう一度確認すると、「【保存食セット:3テム】」という商品が目に留まった。
「そういや、腹が減ったな……」
半信半疑で「購入」をタップすると、やっぱり空間が歪んで紙袋が落ちてきた。
中には干し肉や硬いパン、水筒入りの水が詰まっている。
こうやって買えるなら便利だけど……いつか請求が来るんだろうか?
そんな不安を抱えつつ、干し肉をかじっているうちに、ようやく集落の入り口らしき場所に到着した。
小さな柵があるだけの簡素な集落だが、数軒の家らしき建物が点在している。
そこで畑を耕していたおばあさん風の人に話を聞くと、なんとここから半日ほど歩いた先に大きな街があるらしい。
「半日か……このまま歩くしかないのかな」
とにかく日が暮れる前に街へ行きたい。宿を探して寝床を確保しなければ。
野宿なんて勘弁だ。そんな思いで再び歩き出す。
途中でスマホをいじり、「もっとマシな移動手段はないか?」と通販の画面を探すが、馬や馬車などは売っていないのか、あるいは高額すぎるのか検索に引っかからない。
「仕方ない。地道に歩くか……」
そうして、どうにか夕方くらいに城壁のようなものが見えてきた。
そこに門番がいて、ちらっと俺を見てから「旅の人か?入るならどうぞ」とあっさり通してくれる。
税金や証明書が必要かと身構えていたが、特に取られないのは助かる。
こうして俺は大きな街の石畳に足を踏み入れた。
「わあ……ファンタジーっぽいな」
露店や行商らしき人々が通りを行き交い、馬車がゴトゴトと音を立てている。
服装もどこか異世界感が漂う。
通貨はみな「テム」という硬貨を使っているらしい。
俺はそれを持っていないが、買い取ってもらえるものがあれば交換できるかもしれない。
「とりあえず宿を見つけよう……」
看板を見て「宿屋」の文字がある建物に入り、受付らしきおばさんに話しかける。「一泊いくらですか?」と尋ねると「5テムだよ。安い部屋なら3テムだけど飯は付かないわね」という返事。
なるほど、基準がよく分からんが、ともかくテムが必要だ。
「持ってないなら稼いで来な。うちはツケは受け付けないからね」
おばさんはそう言って冷たく笑う。
確かに俺はこの世界の金を1テムも持たない。
ならばどうするか。通販で仕入れた武器を売ればいいんじゃないか?
鉄の剣やら鉄の盾やらを売れば少しはテムが手に入るはず。
「……そうだ、転売ってやつだな」
そう決心して近くの武器屋に入った。
店内には粗末な作りの剣や槍が並んでいる。
店主はムスッとした中年男だったが、俺の持ってきた鉄の剣を見て口笛を吹いた。
「へえ、なかなか頑丈そうな作りだ。どこで手に入れたんだ?」
「旅先で拾った……みたいなもんです」
「まあいい、10テムで買い取るがどうだ?」
……10テム。通販での仕入れ価格は5テムだったから、利益は5テムか。
もちろんそれが実際の支払いになるかどうかは不明だが、とりあえずプラスなら何でもいい。
「分かりました。お願いします」
こうして初めてのテムを手に入れる。
10テムの硬貨は銀色で円形、中央に小さな穴があるデザインだ。
少し興奮した気分になる。
宿屋に戻り、早速5テムを支払い部屋を借りる。
食事は軽いパンとスープが付いてくるそうだ。
これで今夜は安全に眠れそうだ。
部屋に入り、ベッドに横になると、ずしっと身体に疲れが溜まっているのが分かる。
何せ半日歩いたわけだしな……。
「……うん、通販スキルを使いこなせば明日から簡単にテムを増やせそうだ。でもこの世界でどうやって生きていくか、他にも情報を集めなきゃな」
そんなことを考えながら、その日はぐっすり眠りについた。
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