37話 菖蒲綾女
2000年1月20日
タイムスリップしてアリスがまずやるべき事は、すでに研究者によってプログラムされていた
ピュロスを使ってネットでアリス・ディアスが2000年に存在している事を証明する作業を開始しなければならない
母親が日本人で、日系人のロバートの子であるアリスは、容姿は確かに日本人と言うか東洋系であるが、名前はそのままと言うわけにはいかない
「日本人っぽい名前じゃないとか」
辞書を検索する
アリスを有栖や有住と書いてもいいが、それだと苗字になってしまうようだ
アリスはまず弓備城の街を歩いてみる事にする
自分に似た東洋系の人ばかり居る街、そして本やネットで読み得た知識の建物を間近に見て、ここが今までいた世界とは違う世界である、タイムスリップした先である事を再認識する
郊外にある大きなお城、そしてその奥にある山と公園
麓にはこれから受験する高校
未来から来た自分が高校に入ってしまって、本来この学校に通うはずだった人は、どうなってしまうんだろうと考えるが、全ては未来の為だと、少し心を痛めながら校門の前を通る
それからしばらく歩くと、街のメインストリートに商店が建ち並んでいる中に、緑と色彩豊な花達が、まるでショーをしているかのように鮮やかに咲き誇っている
アリスは一瞬でその場所に目を奪われる
花屋のようだ
「flower mansion」
アリスが花の中にある看板を見つけると自然に声に出してその文字を読む
「素敵な発音ですね」
と中から店員であろう熟年の女性が、アリスに声をかける
「…あっ……ワタしわ……」
咄嗟の事で、日本語の発音が上手く出来ない
「あら、外国の方?」
「いえ……外国が、なががっかったので」
「ん?あぁー外国暮らしが長かったのね」
「はい」
ふと目に留まる美しい薄い青紫の花
「これは?」
「カンザキアヤメって言うの。冬に咲くアヤメは珍しいでしょ?あっアヤメって言うのは、アイリスの事ね」
「…アイリス」
自分の名前に響きがよく似た花
「私も…アヤメって言うです」
「そうなの?だから引かれたのかしら?一輪差し上げますよ」
「いま、お金、ないから」
「いいのよ、貰っていって」
女性からアイリスを受けとるアリスは、心が晴れるように明るくなって行くのだった
アリスは、漢字を調べて名前を
のちに
自分は今日から菖蒲綾女だ
新しい存在なんだ
未来を変える名前を手に入れたんだと
希望を持ち、進む事が出来た
最初は甲塚陽介が死んでしまうと分かっていても、事件後に犯人が捕まるのを待ち、動機を解明して2回目でそれを止める事を考えた
犯人は、花屋敷夏蓮だった
甲塚と友人の眞藤泪の仲を妬んでの犯行
泪の証言で、そんな事実は無く、夏蓮は妄想に取りつかれて、屋上から突き落とした
夏蓮は精神鑑定の為、入院という事になる
好きすぎて嫉妬が暴走する
綾女には、理解は出来なかったが、次は死なせないと、2度目に望んだ
2度目は、積極的に夏蓮と陽介の仲を取り持った
1度目の裁判で、泪は陽介と恋仲でない事を明言している
なら、夏蓮と陽介が上手くいけば、夏蓮は陽介を殺す事はないはず………だった
しかし今度は泪が、夏蓮と陽介を殺してしまった
理由は、夏蓮にあった
陽介と恋仲になった夏蓮は、泪を無下に扱ったからだ
全て上から目線で泪の意見を聞かず、泪はそれで、殺したいほど恨んでいた母親と重ねてしまい、犯行に及んだ
屋上で切りつけ、突き落とした
3度目
それまで屋上には高いフェンスは設けてなかった
だから綾女は、まず屋上のフェンスの設置を入学してすぐに学校に訴えた
それは受け入れられたのだが、その行動は夏蓮に綾女をライバル視させてしまう
でもこれで屋上から落下する事は無いはずだった
しかし陽介はまた屋上から落下し死亡した
犯人は捕まる事は無く、自殺と処理されるが、ある男の子が精神不安定になり病院に搬送される事になる
緑山崇
彼が陽介をジャッキーという人形で呪いをかけ、陽介は死んだんだという妄想にとり憑かれた
呪い、まさかそんな迷信が?
それから綾女は、ジャッキーの呪いについて懸命に調べても、直接陽介の死因に関係するものはなかった
絶対に別の要因があるはずだと、迷信でも都市伝説でも、何でもいいからと藁をもすがる思いで色んな物を試してみた
しかし甲塚陽介は、屋上から落下してしまうのだった
6度目
やる事だけが増えていく
フェンスの設置はやった方がいいだろう
でもその為に夏蓮に目をつけられる
どうしていいかわからないまま、陽介は死んでしまう
そんな時、剛志や千早の前世の話を聞いて、前世からの因縁のせいなのではないか…と考えてしまう
そんなに過去に行ってしまって、もし関係ないとなれば戻る事は不可能
最悪次のafter that 46年を向かえられないかもしれない
未来を変える事が出来ないかもしれない
悩んでいる中、葉子の話と九尾の伝説を聞き、それにかけてみようと行動を開始した
そして9度目 2000年7月20日
「何があったのか、教えてくれるかな」
綾女の頭を撫でながら、葉子はきく
「力になってみせるから」
すると綾女は、弱々しく答える
「もう、決まっている事なのかも、変える事なんて出来ないのかも」
もう9度目だ
不可能と思っても不思議じゃない
3年と4ヶ月
身体もだいぶ成長した
身長はそれほど伸びなかったが、高校生って偽るのも無理があるだろう
他の方法があるんだろうか
いや、直接陽介に死ぬなと言って、死んだ事もあった
もう無理なんだ
「何を言ってるの?」
「…だって」
「綾女さんが教えてくれた。運命とは………運命とは、自分の意思とは関係なくやってくる……逃れたくても、絶対に逃れる事は出来ない…変える事は、出来ないかもしれないし、出来るかもしれない……けどね」
葉子の言葉に、顔をあげる
「けど?」
「挑む意志は、自分で持つもの………それは自分次第だよ」
「……うん」
「諦める?」
「………諦めない」
「全部話してくれる?」
「………私は」
ゆっくりと綾女は今までの事を葉子に話始める
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