16話 呪いなんて

HRで中尾美里先生が、学校に隣接している裏山の弓備城跡にある兜塚公園の敷地内で不審者情報があったとか、そんな話をしている

中休みの騒動、そして尾崎や菖蒲がいない事には全然触れない

先生なんて、そんなもんなのかもしれない

義務教育でもないし、いちいち生徒の御機嫌伺うのもおかしいか

それに不審者どころか、俺は呪術で甲塚を殺そうとしている

先生に止められるわけないけどな


HRが終わると、千早が甲塚と何か話している

珍しいというか、異常な事だ

千早は中学の時、甲塚にイジメられてたんだぞ

なんで自分から甲塚に話しかけてんだ?

「あー葉子がどこに行ったか知らないか聞いてるみたいだよ」

剛志が教えてくれる

2時限目の中休みの時に、菖蒲と尾崎はどこかへ行ってしまった

まさかとは思うけど、菖蒲のやつ、尾崎と………

「3時限目休みに崇と話す前に、花屋敷さんにも聞いてみたんだよ」

「で?」

「菖蒲さんは保健室に行くって言ってたけど、葉子は知らないって」

「そうなんだ」

保健室に行ったんなら、眞藤に聞けばいいのに

「もちろん眞藤さんにHRの前に聞いてたよ。崇は何かに夢中だったから、眞藤さんと話そびれちゃったね」

「そうだな」

甲塚を呪う事に一生懸命で、眞藤と話す機会を失ってたなんて……

「で、菖蒲は保健室なんだろ?」

「先に戻ったらしいよ」

「なんだよアイツ、授業サボったんじゃんか」

「菖蒲さんは成績優秀だから、大丈夫でしょ」

甲塚は鞄も持たずに教室から出ていく

「ごめん、先に帰ってて」

そう言って千早も教室から出る

「じゃあ帰る?」

剛志はそう言うけど

「悪い、俺も用事があるから」

今日中に甲塚が死ぬ

それを確かめなきゃいけない

「えーーそうなの?じゃあ千早待ってようかな」

千早も鞄を置いていっている

「悪いな、剛志」

俺は鞄を持って急いで教室から出る




俺は屋上へ上がる階段に座って甲塚が来るのを待った

校舎は四階建て

俺がいるのは、四階と三階の間だ


長い

全然、甲塚はやってこない

それどころか、校舎にいる人間は殆んど居なくなってしまったのか、全然生徒が来なくなった


俺が甲塚を殺したいと思ったのは、事実だ

眞藤の事も絶対に一番思っている


けど、ジャッキーの呪いの話は、デマだったんだ

全然、甲塚は屋上にやってこない

「こんな呪術で人が殺せるわけねーよな」

屋上から事故に見せての落下

それをジャッキーに願った

そうすればアイツの死体は晒される

そして眞藤に優しくすれば


呪いがデマで良かったのかもしれない

ネットのデマ

簡単に人を呪い殺せるわけないか

信じてる方が、おかしいんだよ

「何やってんだ、お前。邪魔だろ」

声がして見上げる

そこに居るのは甲塚だ

「なんで、甲塚!!?」

「はぁ?関係ないだろ」

いや関係ある

「屋上?」

にいってしまうのか!?

「行っちゃいけない理由あんのか?」

「……いや」

甲塚は重い足取りで屋上に上がっていく

俺の鼓動が徐々に早くなっていく

まさか

本当に?

呪いなんてあるのか?

確かに呪った

呪ってしまった

でも本当に呪われるなんて思っていない

高校生にもなって、そんな非現実的な事と現実が区別つかないわけないだろ

呪いなんてない

だから起こるわけがないんだよ

甲塚が階段を昇る

俺は階段をまた一歩昇る

呪いを否定しながら、また一歩昇る

これはあいつの意思で、俺の呪術は関係ない

でもあいつはまた一歩屋上へと階段を昇る

だから俺も一歩昇る

確かめるんだ

確かめるんだ

俺の呪術が成功しているか

もし術が決まっていたら

「はははは……ざまぁみろ」

言葉が漏れてしまう


呪いなんてない

でもあいつが俺の呪術で死んでもいい

死んでくれるなら、呪いを信じてやる


だから……殺してみろ!!!


屋上の扉が閉まる

甲塚が外に出たんだ

ダメだ

緊張に耐えられない

俺が殺してしまったのかもしれない


喧嘩でナイフを使ったやつも

ボウガンで鳥を撃ったやつも

銃で人を撃ったやつも


まさか本当に死んでしまうなんて思っていなかったかもしれない


怖い

思わず階段を降りてしまう

「うわ!!?」

まるで俺を逃がさないように人にぶつかってしまう

驚きと不意打ちで尻餅をついてしまう

「すいません」

謝った声に聞き覚えがある

「ごめん、緑山君」

俺だと気づいたのか、俺の名前を呼ぶ

花屋敷だ

「いいよ、大丈夫だから……花屋敷がそんなに急いでるなんて珍しいな……何かあったのか」

俺は自分の行い、犯してしまった罪がバレてしまう

俺がここにいるって事を知られてしまった

けど、何でいるかを知られてはいけない

「あっ……うん…あの陽介見なかった?」

「えっ!?いや知らねー」

咄嗟に答えた

花屋敷なんで今、甲塚を探してるんだよ

「そう、ありがとう」

階段を上がろうとする花屋敷

今上がれば、甲塚が落下するのを見てしまうかもしれない

………止められちゃうかもしれない

「あ……あのさ」

花屋敷を呼び止める

「えっ?」

「いや……その……ちょっと」

俺の罪を知られてしまう

「ごめん、急いでるの、後でもいい?」

でも、まだ間に合うかもしれない

死んで欲しいくらい恨んでた

でも俺が殺人をしてしまう

殺してしまうって本気で覚悟があったか?

「あっ、うん……甲塚……」

「知ってるの?」

まだ俺が罪を背負う回避が出来るかもしれない

「いや、たぶんだけど……屋上だと思う」

「屋上ね、ありがとう」

言ってしまった、止めるか、止められないか

俺は………自分勝手だ

「ありがとう」

花屋敷はもう一度お礼を言って屋上へ駆け上がった

俺は逃げ出すように学校を出た

甲塚が落下して死んだのか

花屋敷が止めてくれたのか

どっちにしたって明日にはわかる

もし死んだのなら、帰ってすぐ家に連絡が来るだろう

俺は呪っただけ

恨んだだけ

アイツを突き落としてもないし

……俺は殺してない


突然、携帯が鳴る

携帯はいつも突然鳴るもんなんだけど、俺は楔打ち込まれたように衝撃をおぼえた

画面には"菖蒲"と書いてある

菖蒲と携帯の番号を交換したのは最近だ

なんだかんだで、仲良くしてる方だと思う

「もしもし?」

『あっ崇の携帯ですか?』

「そうだよ。知っててかけたんだろ」

『……そうですけど』

「何か用?」

『あぁ……えぇ………陽介が……死にました』

頭が真っ白になる、呪いで殺してしまったのか?

「えっ……なんで」

『わかりません……で、警察は殺人事件で捜査してます』

「殺人!?屋上から落ちたんだろ?」

『なんで……知ってるんですか?落ちたこと』

しまった余計な事を言った

刑事ドラマや探偵物でよく犯人がボロを出すけど、まさか自分がそうなるなんて

考えてるようで、考えが及んでないんだ

「……屋上に上がるの見たんだ」

嘘は言ってない、花屋敷と会ってるし、嘘はマズイ

『…そうですか。夏蓮も一緒に見ましたか?』

「別々だけど、屋上に花屋敷は行ったはずだぞ。俺は階段にいたんだ」

『夏蓮は屋上に居ましたけど、陽介は屋上には居ませんでした』

「まさか花屋敷が!?」

甲塚が屋上に出て、花屋敷が行くまでそんなに時間は経ってない

俺の呪いで、すぐに落ちたか

花屋敷が落としたか……

『可能性は無いとは言えませんけど、無理なんですよ』

「なんで!?」

『話しにくいんですけど、陽介の首が切り落とされていました。屋上に居た夏蓮には無理です』

「首が!!?」

ジャッキー!!??

『……陽介と夏蓮以外には見ていないんですね』

本当に呪いで?

「……見てない」

『……本当ですね』

呪いでジャッキーが!?

「……見てない」

ジャッキーが甲塚を殺して、首を切断した!?

『………大丈夫ですよ崇。呪いなんてありません。崇がどんなに呪っても、陽介の死には関係ありませんよ』

「えっ?」

パニックになる、呪いの事、なんで菖蒲が!?

『あの程度の呪いで、人が殺せるなら、世の中死体だらけです』

「俺が呪ったって!?」

なんで知ってる!!?

『だから大丈夫です。それと陽介の死は無関係です』

「お前、なんでそんな事!?」

何で知ってるんだ!!!?

『それジャッキーの人形はヤラセですから。もう一度聞きます。二人以外に屋上に上がった人は居ませんでしたか?』

「居ない、本当だ……本当に……本当に俺の……呪いとは関係なのか?」

本当に俺が殺したんじゃないのか!?

『はい。強いて言うなら、呪いではなくて、運命ですかね』

「…運命」

『だから警察にはちゃんと協力してくださいね。呪いの事まで言う必要ないですけど』

そう言って菖蒲は電話を切った


甲塚は死んだ

俺の呪いは関係ない?

じゃあ何で甲塚は死んだんだ


死んでくれたんだ?


パニックになり、現実か妄想かもわからない


でも自分勝手な俺は

望み通りの甲塚の死を


喜んでしまっていた


俺の呪いが

ジャッキーの呪いが


アイツを殺したんだ

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