14話 呪いの人形
二時限目
日本史の小野沢が教室にはいるなり
「今日は授業をやめて少し夏休みのイベントを考えてみようと思う」
と話始める
「日直、号令はいいぞ。えーと我が校には地元では有名で、全国的にまったく知られてない成富陸奥護郎と所縁があるのは皆知ってるな」
教室のあちこちで、「まぁ」とか「全国では有名じゃないの?」とか声が聞こえる
「五十嵐の家のお寺「天双寺」と尾崎の家の「双弓神社」は古い歴史があって、成富陸奥護郎とも縁のある家……だよな、尾崎、五十嵐」
小野沢が話を振ると、尾崎は何も言わずにうなずき、千早は頭を掻いてる
「そして弓備城(くびじょう)、もちろん成富陸奥護郎の所縁の城だ。で夏休みは自由研究として、みんなに二人以上の班を組んでもらい街の歴史をまとめてもらおうと思う」
千早と剛志に付き合ってもらえば、すぐに終わりそうな課題だな
「例えば…」
弓備城と黒板に書く
「この街はこの漢字で「くびき」って読む、お城の名前は同じ漢字で「くびじょう」。これには伝説があるし、ちゃんとした歴史的な解釈もあるこれらを調べるとか、成富陸奥護郎が九州から弓備城に来た歴史なんてのも面白いと思うぞ」
教室内がざわつく
あれこれ皆話し合っている……けど、菖蒲だけは俺をチラチラと見ている
お前のお望みのエロ画像なんて俺の携帯には入ってないっつうの
呪いの人形、ジャッキー
さっき千早達と話したその人形の画像が俺の携帯の画像フォルダに保存されている
だから………見せることは出来ない
昨日の番組で紹介されてた内容はこうだ
長く子供が出来なかった夫婦に、待望の女の子が出来、夫婦は愛情という愛情をその娘に注いで暮らしていた
5歳の誕生日に買ってあげた人形、それを娘は「ジャッキー」と名付けて何処へ行くにせよ、何をするにせよ、いつも一緒だった
娘が11歳になった時、近所の20代後半の男に殺されてしまう
男はわいせつ目的で、娘を誘拐し抵抗されて……
犯人は発見された娘の遺体に付着していた体液のDNAが決め手となり逮捕されるも、死刑制度の無いその国では、犯人は最大の刑罰「終身刑」の判決が下される
俺にはもちろん子供はいないけど、再現ドラマの夫婦の演技もあって、夫婦の絶望と悲しみが痛いほどわかった
大切な大切な娘がこの世に居なくて、命を奪った……だけじゃない、もてあそんで、欲を満たした犯人がこの世に生きている
考えただけでも、ヘドが出る
母親は娘が遺体で帰ってきたその日から、娘の部屋にあるジャッキーに犯人への恨みを毎日、毎日聞かせ続ける
事件から10年目の娘の誕生日
ジャッキーは忽然と部屋からなくなってしまう
それからさらに10日後
獄中で犯人が謎の死を遂げる
自殺とされたが、自分で首をフォークで掻き斬ったとされているが、その切り口が鋭利でとてもフォークとは思えなかった
さらに10日後
娘の部屋からジャッキーが見つかる
なぜか犯人の血痕を口元につけて…………
ジャッキーの口元についていた血痕は、娘が殺害された犯行時についたと警察は判断したのだが、ジャッキーを毎日のように見ていた母親はそんな血痕無かったと主張した
ジャッキーが犯人を殺したと夫婦は信じた
それから月日が流れてジャッキーは人から人に譲り受けられる
そして持ち主がジャッキーに恨みを聞かせると、その相手が不信な死を遂げていく
呪いの人形と言われたジャッキーは、国の美術館に保存され、一般公開はされていない
………けど
昨日の番組では、そのジャッキーの実物が公開された
見た目は本当に普通の昔からある人形で、古くてくたびれた人形だったけど、オーラと言うか妖気と言うか………とてつもない闇を俺は感じた
ただ公開された映像はジャッキーの横顔で、正面からの画は、危険だとされて撮影できなったらしい
俺はもっと詳しく知りたくて、家のパソコンでジャッキーの事について調べた
ネットの世界では結構有名な話 、すぐに大型の掲示板サイトで見つけることが出来た
そこに書かれていた内容
"放送はジャッキーの横顔しか出来なくて、本当に正面からは見ちゃいけないらしい"
"映っていなかった側の顔はヤバイってよ"
"目がイッちゃてるらしいよ"
"目が飛び出てるらしいよ"
"目が無いらしいよ"
"目がエロいらしいよ"
"目が二重らしいよ"
"いい加減な事言うよ、見たこともないくせに"
"お前も見たことねーだろ"
"俺は見たマジヤバイw、ガクブルw"
"タヒねよ、知ったかぶりすんな"
"お前は知ってるのかよ、お前がタヒね"
その後にURLが貼られてて、最初は開かなかったけど、次の書き込みから……
"合成じゃないの?マジで正面の画像?"
"合成じゃねーよ、お前タヒねってジャッキーに頼んだからな"
"乙w 実物に言わねーと意味ねーだろ"
"正面なら画像でも可能 だから放送出来なかった"
"マジ画像なの?"
"本物ならヤバくね"
"つうか「タヒね」って言われていたアカ居なくなってね?"
"マジか"
"通報しました"
"画像削除依頼誰か頼む"
"貼り主削除しろ"
"保存しました これで俺は最強w"
"削除依頼した"
"乙"
ここまで読んで急いで俺はURLを開いた
興味で本当に興味でしかなかった
削除されるなら見たい
見ておきたいって
開いた画像には、確かに正面からとらえたジャッキーだった
でも横顔となんだ変わりはない
確かに映っていなかった目の辺りが黒くなっている程度で、なんで放送しなかったんだろうって思う程度
特別な変化はなかった
だから………千早と剛志にも見せようと思って、携帯でその画像を写真で撮って保存している
二人が知らない事で優越感に浸ろうと思ったんだけど……朝起きて………怖くなった
もし二人が悪ふざけで、呪いをやったらどうなる?
いや剛志は悪ふざけでやるかもしれないけど、千早は怒るかもしれない
こんな事で絶交なんてイヤだ
最高の友達、最高の仲間に出会えたのに、呪いなんて馬鹿げたものでなくしてしまうなんて
そう考えたら………怖くなった
この画像のせいで朝からの憂鬱
学校のせいにしたり、社会のせいにしてみたけど
考える事をやめても、考えないようにしても、ジャッキーのあの顔がずっと脳裏に焼き付いている
呪いなんてあるはずないのに、ジャッキーの画像は呪いがあると信じられるほど、深い闇を感じる事が出来る
「先生のオススメは、弓備城(くびじょう)跡の兜塚公園だな。ちょっとした心霊スポットになってて、夏休みまだ日の浅いカップルで行くならオススメだぞ」
心霊スポットってワードに引っ掛かり、急に小野沢の話が耳に入ってくる
「小野沢先生が不純異性交際をススメてどうするんですか?」
花屋敷が小野沢にツッコミをいれると、ドッと笑いが起こる
「花屋敷、先生は不純な異性交際は認めない………けど、何が不純かは経験しないと解らないだろ?」
「教師が言うことですか?」
呆れる花屋敷
すると俺のとなりで、椅子をひっくり返しながら菖蒲が立ち上がり
「わかった、花屋敷さん!私と行こうよ」
それを聞いて俺は自分の考えから逃げるように菖蒲にツッコミを入れる
「おい待て待て、それ不純同姓交際狙いだろ」
教室が笑いに包まれる中、菖蒲を席に座らせる
「夏蓮を奪っちゃだめですかね」
「いやいや、そういう問題じゃねーし」
「なら崇が相手をしてくれるんです?」
「なっ……からかうなよ」
「ふふふ」
菖蒲が本当に何を考えてるかわからない
確かにエロい身体だけど………俺は……
「起立!!」
俺の視線の先にいる女子の号令で授業が終わり、20分の中休みになる
「タカくん、さっきの課題どうする?」
「課題?」
頭の中でジャッキーの事しか考えられず、千早の話が入ってこない
「崇は私の色気に惑わされて小野沢先生の話を半分も聞いてなかったのです」
と隣で菖蒲がニヤつきながら話す
「余計なこと言うなよ」
「二人以上の班を作って街の歴史をまとめる自由研究だって」
「あぁーその話か、千早と剛志と組ませてもらっていい?」
「うん、タケくんにも言ってみるね」
「剛志は?」
「トイレじゃない?」
すると
「あのー私もいいですか?」
と菖蒲が甘えた声で言う
「いいけど、女子で組んだ方がいいんじゃないの?」
「うちのクラスは偶数人なんで、奇数人の班が出来ると余る人が出るじゃないですか……自慢じゃないですけど、女子の友達が居ないんで」
居ない理由はわかってる
こいつと仲が良いと同性愛に巻き込まれると思う女子はいっぱい居るだろう
そして仲が良い女子はそういう噂になっている
「じゃあ、私とどう?」
とそんな心配を一切していないのか、尾崎が菖蒲に話しかける
「いいんですか!!?」
といきなりハグして尾崎を見つめる菖蒲
二人は小声で何かを話して廊下に出ていく
「………なんかエロかったな」
「葉子にあんな趣味があったなんて」
千早も唖然と二人を見送る
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