12話 出会いと運命
「あのさ、千早」
「何?」
「お前、よく前世がどうのっていうじゃん。本当にそう思うか?」
「生まれ変わりの話?運命の話?」
「どう違うんだよ」
「えっとねうちの宗派じゃ、娑婆での縁が切れたら…あっこの世で死んだらって意味だけど、お浄土で生まれて仏になる、お浄土はキリスト教で言う天国になるのかな……だから先に亡くなってしまった人は、仏になって私達を導いて、見守ってくださってますよって」
あー千早スイッチが発動したよ
千早は普段はニコニコして、みんなを見守っている感じで主張はあんまりしないが、スイッチが入ると急に細かくなる
この説明も長くなるんだろうな……
「そもそもこの世を娑婆って言うんだけど、その意味は「苦しみに満ちた堪え忍ぶべき世界」、だから魂が生まれ変わる輪廻転生は、いい意味では無いんだよ」
「苦しみの世界にまた生まれるからか」
「人を恨んだり、未練があって死んだら、あの世に行けないって言うじゃない?」
「そうだな」
「僕はその浄土に生まれ変われず、輪廻転生も出来なかった人は幽霊になったり、妖怪になったりすると思ってて、その幽霊や妖怪が生まれ変わってまた人として娑婆に生まれて、娑婆での行いでお浄土に行けるようになるのかなって」
それを「うんうん」と声を出して納得する剛志
「じゃ前世とか運命とかってのは」
「それは宗教上の話じゃなくて、都市伝説かな」
「そんな都市伝説の話、俺知らないぞ」
「えっとね、カウンセリングで退行催眠術でトラウマを植え付けられた記憶を呼び起こして、原因を探って良い印象を持たせてトラウマを解消するって方法があるんだけど、全然違う記憶を持ってる人が居たんだって」
「違う記憶?」
「水を怖いトラウマを持ってた男の人なんだけど海の無い所に住んでるのに、海で溺れた記憶を持っててそれがトラウマで水が怖かったとか」
その話に剛志がのってくる
「生まれ変わる前の記憶なんじゃないかって」
「TVとか映画で見たのが強く印象に残ったとかじゃねーの!?」
剛志は千早に助けを求めるような視線をおくる、すると千早は説明を続ける
「その疑いもあったんだけど、別の男性の患者でも退行催眠で前世と思われる記憶に辿りついた事があって、また別の女性の患者も前世の記憶が出てきた時に、男性と同じ「時」を過ごしている記憶だったんだって」
「しかも記憶の中で恋人同士なんだよ」
「二人は別々にカウンセリングを受けている患者だったから、カウンセラーも出会わせたりはしていなかったんだけど、結局知らない所で出会っていて、結婚する時に報告を受けたんだって」
「へースゲーな」
といつの間にか学校の下駄箱
「気づかない?」
「何が?」
「前世で恋人同士だった、現世でも恋人になった」
「あー」
「前世の記憶を紐解いていくと、現世でも何らかの縁があるんだって」
「だから花屋敷と眞藤と甲塚は前世からの縁があるって言ったのか」
「そう言うこと」
階段を上がろうとすると、後ろからバタバタと音のわりに疾走感の無い女子が追い抜いていく
さっきから話題に出ている眞藤泪だ
今の眞藤と来る時に会った花屋敷が友達で、花屋敷と甲塚陽介っていうのが幼馴染み、そして眞藤は甲塚を好き………なんだ
もし千早の言う通り、前世でも縁があって、現世でも……縁があるなら
……俺は甲塚に敵わないのか
確かに剛志の言う通り、俺は眞藤に引かれてる
でもいいなって思うだけで、どうしたいとかないし、告白したいとかもない
ただただ気になっているだけだ
「ちなみに僕は前世の記憶があるんだよ」
剛志が威張るように、誇らしげに言う
「んなわけねーだろ。それに輪廻転生の話なら、お前お浄土に行けなかったって事だぜ?」
「でも現世にいる、って事はチャンスがもらえたって事でしょ」
「マジで剛志はポジティブの塊だな」
教室に入ると、テスト勉強する者、雑談する者、寝てる者、色々いる
前世で縁があるなら、こいつらとだって、さっき見たコンビニの店員だって縁があるって言うのか??
「ちょっと待ておかしいぞ」
俺は立ち止まる
「何が?」
千早と剛志がきょとんとした顔で俺をみる
「昨日見た、怪奇現象の特番で坊さんが徐霊してたろ!?見たか??」
「見たよ」
二人が答える
「成仏させるって言ってたぞ??って事は、霊はお浄土に行って仏になったんじゃねーのか!?あれだけ悪さしておいて、娑婆に生まれ変わらずに、浄土に行くのかよ」
「…………まぁ、教えってだけで本当に霊がいるかお浄土があるかは………ね。それにテレビはバラエティで真実じゃないし」
笑顔で千早が言う
おいおい仮にもお寺の息子が言うことじゃねーだろ
「そう言えば、昨日の番組で」
いや待て剛志、話題を変えるんじゃねー
「入り口で騒ぐなよ、邪魔だろ」
俺達の後ろから乱暴な声がする、甲塚陽介だ
道を開けると甲塚が入った後に、また蔑んだ目で俺を見て花屋敷が教室に入っていく
「テストあるのよ。余裕ねチームT」
皮肉を言って通りすぎる花屋敷
お前はどれだけ偉いつもりなんだよ
「そうだね。テスト勉強、復習くらいしとこ」
千早は花屋敷の言葉を受けて、自分の席に急ぐ
剛志も続く
俺は甲塚が苦手と言うか嫌いだ
同じ中学で、三年間同じクラスだった
あいつの粗暴の悪さは、よく知ってる
女子や先生の前では絶対に見せない力
昔で言う裏番みたいな存在で不良からも一目置かれていて、誰も甲塚には逆らわなかった
イジメに加担する事もあった
千早とは別のクラスで友達ではなかったんだけど、中学2年の頃まで甲塚の友達グループにイジメられていたのを俺は知っている
直接甲塚は手を出していなかったらしいけど、実際指揮していたのは甲塚だったに違いない
それが去年の夏から猛勉強して弓備城高校に入ってくるなんて
進学校だぞ、柄じゃないだろ甲塚
たぶん優しくて主張もしない周りに気を使う千早は、高校でも俺と剛志と一緒に居なかったらイジメられていたかもしれない
坊主というか剃ってる千早の頭は、幼稚な不良のイジメの格好の的だった
家がお寺だからって千早が髪を剃る必要なんて無いと思うけど、それを俺達がどうこう言うのもおかしい
入学式の時、その頭のせいでクスクスと笑われたり、陰口を言っていたクラスの数人
それも頭の悪そうでなんでこの学校を選んだかわからない、行けるから来たくらいの奴等が千早の頭を笑ってた
それでも千早はニコニコしていて、初日の放課後そのグループにちょっかいを出されそうになった時、あの大男の剛志が千早に声をかけて、救うような形で下校したのを後から聞いた
俺はその日、柔道部に入るために体育館の隣にある武道館に行っていて、その事は知らなかった
けど剛志も千早も目立つ存在だったし、先輩たちに「同じクラスに大男居るだろう」「柔道部に誘ってくれ」って言われて、次の日に剛志と話をする事になった
剛志の入部の条件は、千早も一緒に入部する事、運動に縁のなかった千早は一週間考えた末に入部を承諾して、俺達3人は柔道部に入部した
とはいえ、俺は小学校から柔道はやっているけど、うちの学校の柔道部は弱小
千早も剛志も経験は無いし、入部した一年は俺達だけだった
クラスでも一緒、部活も一緒、帰る時も一緒
ホモ扱いする奴もいるけど、俺は最高の友達に出会えたと思っている
だから菖蒲が俺達を「チームT」って言ったときは凄く納得して受け入れたんだ
「はーい、終了」
担任の中尾美里先生の終了の合図で、テスト用紙が後ろから集められ先生が教室を出た瞬間、剛志が俺の席に飛んでくる
「さっきの話だけどさ」
「えっテストの答え合わせじゃねーの」
「ううん、昨日の番組」
「あー心霊特番な」
「呪いの人形ってあったじゃない?崇はああいうの信じる?」
「信じるって言うか……」
俺は無意識にポケットの中にある携帯を握る
「さっき寺の息子が死後の世界を肯定しなかったんだぞ、信じられはしないだろ。まぁー面白いとは思うぜ」
「じゃあさ、千早の家に」
剛志が何かを言いかけた時、もう一人俺達の輪に入ろうとする人影が見える
千早だろうと視線を送ると、そこには千早のいとこの女子
「あっ」
剛志は尾崎を見ると、驚いて言葉を飲み込む
尾崎は千早と違って、なんだかみんなを監視するような視線でクラスを見ている事がたまにある
今もその目をしている
「なんだよ、尾崎」
黙って俺達を見る尾崎に声をかける
「別に………剣崎君」
「えっ何!?」
「うちの家に何があるって?」
尾崎は今までにないくらい、いや女子とは思えない迫力で剛志を見る
尾崎は150cmくらい大きい方じゃない
で180cmを越える剛志を圧倒する
なんか柔道の漫画でこういう感覚、見たことあるな
「いや、なんの話?ははは」
「まったく……ほら一時限目始まるよ」
尾崎はそう言って自分の席に戻る
それを見ていると席に戻る直前に千早に声をかけ、千早が何か謝っているように見える
「尾崎って見かけによらず、こえーよな」
俺は本心でつぶやく
「尾崎さんちは、代々千早の家のお寺を守ってるんだって、血が濃くならない程度に、なん世代かおきに五十嵐家と尾崎家は結婚するんだってよ」
「マジか、変わってるな」
チャイムがなる、それを聞いて剛志は席に戻る
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