7話 突然の告白
「カワイイよな……眞藤」
陽介がそれを見ながら、私に言う
「でしょ、ほっとけないよね」
陽介も泪のあの小動物のような可愛さを理解出来るもんなんだ
陽介は中学生の時に、少し荒れていた
不良の一歩手前みたいな感じかな
でも去年の夏に今私達が通ってる弓備城高校に行きたいって言って、私も協力して一緒に勉強したんだ
「そう言えば陽介、図書館でお目当ての本は見つかったの?」
歩きだし、陽介に聞いてみる
陽介が
「まだ見つかってないけど、今は
成富陸奥護郎と言うのは、私達の学校の始まりでもある弓兵の鍛練に使っていた稽古場の主で、弓だけで城を守ったとかなんとか、妖怪を退治したっていう昔話があるくらい、この辺りじゃ有名な人物
「凄い人だよ、仕えるべき武将死んでも、その家に血を絶やさない為に戦い続けたんだ……誰かの為に……命をかけて」
「そうね、でも昔の家来ってそういうもんじゃないの?」
私は歴史に詳しくないので、よくはわからない
「あのさ、花屋敷」
「ん?」
「運命ってさ……やっぱりあるのかな」
「………どうだろうね」
陽介のお母さんは陽介を生んですぐに死んだと聞いてる
詳しくは聞いていないんだけど、誰かの為って、陽介と重ねてるのかな
陽介から運命と聞くと、陽介が不幸を背負っているかの様に感じてしまって、私は言葉を濁した
「あのさ……眞藤なんだけど」
「ん?泪??」
「うん………彼氏とか居るのか?」
なんだ、そっちの心配か
運命とか言うから、生き死にの話かと思ったじゃない
あっ中学校の先生と出来てたって噂を確かめたがってるのかな
私の知る限りでは、連絡もしてないし、未練があるような言葉は聞いたことは無い、勉強を教えるのがうまい良い先生とは聞いてるけど
「意外と年上が好みなのかもよー」
もし噂が知りたいんだったら、真相を確かめにくるはず
「そうなのか?部活の先輩とか??」
あれ?なんか反応が違うなぁ
「泪は何にも部活入ってないよ」
「じゃあ、いつ出会うんだよ。ナンパとかついていくタイプじゃないだろ?」
「ちょっと待って、陽介なにが知りたいの?」
「だから……彼氏が……」
「いないよ。泪に彼氏は、で?何が言いたいの?」
「眞藤、俺の事…なんか言ってたか!?」
「はぁ?」
それって
それって?
それって!!?
「泪に気があるって事??」
トクン
耳元で心臓が鳴る
「いや……うーん………」
トクン
また鳴った
「お前以外に相談……出来ないだろ」
そりゃそうね
幼馴染みで、大概の事は知ってる同士
小学校の頃、お互いに好きな人も知ってた
トクン
そうか、陽介は泪の事、気になってるんだ
トクン
あの小動物みたいな可愛さ、誰でも好きになっちゃうよね
トクン
私も泪の事、好きだもん
トクン
二人が付き合ったら、どうなるんだろ
トクン
私は……?
トクン
トクン
トクン
トクン
「仕方がないわね、柄じゃないけど幼馴染みの恋のキューピット役、引き受けようか?」
トクン
ねぇ、陽介
否定して
そういうんじゃないって
友達として、気になってるだけだって
トクン
バクン
バク
バクッ
バクッ
「お願い出来るか?正直、気になってる」
パチン
何かが破裂する音が、私の耳元で炸裂する
「うん、いいよ。でも私は泪の味方だからね」
「えっ」
「そりゃあ、そうでしょ 。幼馴染みで色々知ってるんだもん、親友を泣かせる訳にはいかないじゃない」
そう、泪が陽介を好きだとは限らないんだから
「わかったよ……約束だぞ」
「泪に気がなかったら諦めなさいよー」
「えっ!?手を貸してくれないのかよ」
「それは陽介の努力でしょ、私、陽介の男としての魅力って全然わからないもん」
「全然、キューピットじゃねーじゃん」
「まぁー任せなさい。二人の間は私が取り持ってやるって」
なんだろう
心からそう思っているはずなのに
私が焼きもちを焼く必要なんてないのに
なんでだろう
なんでだろう
さっきまであんなに楽しかったのに
小テストは頭の整理がつかなくても解ける簡単なテストだった
だからこそ、他の考えでの抑圧になりえない
ずっと頭の中で、迷路にでも迷ったようにグルグルと同じ考えが巡る
陽介が泪の事を好き?
なんでそれが気に入らないの?……私
泪はどう思ってるの?……陽介の事
私は……どうすればいいの?
もし、二人が両思いだったら……
「起立!!」
泪の声にハッとして私は席を立つ
そうか、日直だもんね
一時限目が終わったんだ
「礼」
号令をする泪を見る
礼が終わると、ペタンと椅子に座り動かなくなる泪、あれは今朝と同じ妄想状態に突入している
泪の机にほおづえをついて向かい合う
ほら、やっぱり私に気づかない
「また妄想に入ってるの?授業終わったよ」
泪の目の焦点が私の目に合う
一瞬ハッとするけど、それを悟られないようにする泪
「うん、わかってるよ。ちゃんと号令したでしょー、ちょっと考え事……」
泪の考えてる事は解ってる
陽介の机の方を見ているから……
私は泪の事は、陽介よりも知っている
泪の考えも行動も読みやすい
陽介の事も、泪より知ってるんだから
だから……私……陽介の頼みをきいてあげなきゃいけない………のに
私の表情はどうなっているんだろ
出来るだけ笑顔でいつも通りの感じで話さないと
「朝の事は冗談じゃなかったみたいだね」
「どういう意味?」
「朝だけじゃなくて陽介を狙っているって事」
「また発情の話?」
「そうじゃなくってさ…」
あぁ……言わなきゃ……陽介の期待にこたえないと
「……好きなの?陽介のこと」
「………えっ」
泪は顔を真っ赤にして俯いて固まってしまう
本当は聞かなくてもわかってるよ
いつも泪が陽介を見る顔
今と一緒、気づいてないでしょうけど、いつに顔を真っ赤にしてる
私はその表情も好きだった
……だった?
やっぱり嫉妬してるんだ……私
もし泪が肯定しちゃったら、私はどうするんだろう
泪は答えに迷ってるのか答えない
ずっと固まったまま
早く答えなさいよ
イライラする
答えないってのも、肯定してるのと変わらないのよ
「………わかる?」
泪は俯いたままそう答えた
パチン
また破裂音がする
「なんであんなのがいいの?格好いい男子なら他にもいるのに、古くから知ってるせいか、どこに惹かれるかわかんないなぁ」
考えるより先に言葉が勝手に口から出てくる
それでも自分でも笑っちゃうくらい明るい声で、平静を装っている
「えー夏蓮、陽介くんと仲がいいじゃない。格好いいとか思った事ないの?」
泪は人の気も知らないで、明るく言う
「格好いいって」
絶句する
そして苦笑してしまう
「
「えっ??」
「簡単に言うと、好きな人を好きになりすぎて、その人に関わる物、家にとまってる烏すらも好きになっちゃうやつ」
「えっ?えっ???」
「泪のは、完全にそれだね。陽介に男の魅力があるとは思えないもん」
……言い訳
それは泪がそうなんじゃないね
私が屋烏之愛状態
泪の事、好きだったから陽介の事が……今までの感情ではいられなくなった?
あっそうじゃないも
陽介の好みの女の子だったから、私は泪を一目見たときから守らなければって思ったのかな
誰から……守るんだっけ
陽介から守りたかったのかな
それとも、陽介が泪を好きにならないように、私のそばに置いておきたかったのかな
「そんな事ないよ……陽介くん優しいし、カッコイイじゃない」
パチン
また破裂音
そんな事、知ってるよ
泪よりも知ってる
「ふーーー」
まず深呼吸、落ち着いて私
「そっか、泪もか」
また泪が固まってしまう
いちいち反応する泪………なんかイライラする
「朝、泪が走っていった後にね、陽介も言ってたんだよ。眞藤はカワイイよな、彼氏とかいるのかって」
「えーーーーー!!!!!!!!!!!!」
突然、今まで聴いた事がないくらいの大きな泪の声が教室響き渡る
「ちょっと、うるさいなぁ」
イライラ
耳を押さえたまま泪を制止させる
「いいいいいい、今、なんて言ったの!!?」
「だから、陽介も泪に気があるみたいだよ」
また固まってしまう
なんなの、なんで私、泪の事好きだったんだっけ
親友だと思ってたのに
なんで陽介を奪おうとするの?
幼馴染みを親友が奪うなんて、少女漫画じゃないんだから……
「私的には、親友と幼馴染みが付き合うってのもなかなか面白いけど、いっぺんに遊ぶ友達がいなくなるのもねぇ」
嘘と本心
面白くないし……友達を失うのも嫌
「えっえっ……あわわ」
「で、泪も陽介に気があるって事でいいんだよね」
再確認
「えっ、あ………………うん」
また下を向く泪
こっち真剣なんだよ
ちゃんと目を見なさいよ
あっそっか
別に二人の仲を取り持つ必要なんてないんだ
二人が、付き合うことがなければ私は一人じゃない
「なら、一肌脱ぐのが私の役目だね」
壊してあげる
「えっ?いいの??」
「もちろん」
陽介は私の物
「だって幼馴染みなのに」
分かってるなら、色目を使って陽介を見るんじゃない
「少女漫画の読みすぎ、陽介は私の友達でそれ以上の感情は無いって、男の子って意識もないくらい前に出会ってるんだよ」
「……うん」
でもね、泪が気づかせてくれたんだよ
私は、陽介が好きなんだって
「信じられない?」
「そんな事ないよ」
そうだよね、私の事、疑ったり泪はしないよね
今までいっぱい世話してあげたんだもん
「だったら、決まりね。まぁー陽介より泪の味方だから、何かあったら相談してね」
「まだ付き合ってないよう」
はっ?当たり前じゃない
でも大丈夫、全部無かった事にしてあげる
「あはは、時間の問題でしょ。出来るだけこれからは陽介も一緒に休み時間過ごして、二人が接近する機会をふやさないと」
はははは、ちゃんと陽介に嫌われるようにしてあげるからね
私は笑みを溢してしまう
「…ありがとう、夏蓮」
礼なんて、いらないよ
私達の会話が終わるのを、待っていたかのように二時限目の開始を告げるチャイムが鳴る
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