第2話

「……初耳だよ」


兄の長ーい話を推理した玲は、彼が結成したロックバンドが学校祭でライブを行う予定なのに、ボーカルである自分の声の調子が良くないぜ、という話をしていることがわかった。



「マジ、俺の声……ヤバいって」


眉間にしわ寄せ喉を押さえる兄に、妹はため息ついた。



「そう?いつも通りだと思うけど」



玲はそう冷たく言うと、苦しげに悶えている兄に背を机のパソコンの画面を覗き込んだ。



「ごめんね。今は生徒会の資料作成のほうが優先なのよ。これ、急ぎでさ」


「なあ?俺の声、絶対いつもの声と違うって」


「同じだよ」


「うるさいな。ハイトーンボイスが出ないんだよ……アー。アア?」


兄は喉を押さえ白目をむいて高音を振り絞っていた。



「……本番まで時間があるのでしょう?それまで耳鼻咽喉科に通うか。薬でうがいをするか、のど飴をなめるなりして、喉を静養するしかないと思うけど」


「お前は呆れるほど冷たい!お兄がこんなに落ち込んでいるのに!」


「慰めて欲しいなら、彼女の所にいけばいいでしょ」


「う?今、それを言うか……」


兄はベッドにバーンと倒れた。



「もしかして。振られたの?」



ベッドで上向きに寝ていた彼は、顔を腕で隠し、うんと頷いた。

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